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ルトスワフスキ、管弦楽のための協奏曲。 [2016]

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さて、今年、日本とポーランドは、国交樹立100周年を迎えました。というわけで、モニューシュコショパンと、ポーランドの作曲家を聴いて来て... いや、正直に申しますと、先ほど知りました、100周年(小声... )。いやいや、100周年云々に関わらず、実に興味深い、ポーランドの音楽!ポロネーズやマズルカなど、豊かな民俗音楽の伝統(バロック期、かのテレマンも魅了されていた!)があって... そうした伝統をベースに、地道な展開を見せた、19世紀、ポーランドにおける国民楽派... その顔、モニューシュコのオペラと向き合ってみれば、他の東欧の音楽とは一味違う緻密さが感じられ、そのあたりに、次なる時代、20世紀、近現代音楽において、多くの異才を輩出したポテンシャルを見出せるような気がする。チェコやロシアに比べると、いささか地味な印象も否めないけれど、いやいやいや、見つめれば見つめるほどヴァラエティに富み、おもしろいんです!
そんなポーランドの20世紀に注目... ポーランドの俊英、クシシュトフ・ウルバンスキの指揮、彼が首席客演指揮者を務めるNDR交響楽団の演奏で、戦後、ポーランド楽派の草分け、ルトスワフスキの管弦楽のための協奏曲(Alpha/Alpha 232)を聴く。

前々回、聴いた、モニューシュコの代表作、オペラ『幽霊屋敷』(1865)は、当時の宗主国、ロシアから上演禁止を喰らうほど、ポーランドを丁寧に描く内容で、典型的な国民楽派のオペラだった。が、その音楽に関しては、安易な民俗風に塗りつぶされるでもなく、同時代、先端にあった西欧のオペラの作法にしっかり倣い、特にフランス・オペラからの影響を受けて、ナンバー・オペラを脱するような緻密さすらあり、実は、国民楽派という枠組みを越えた力作... ポーランドの音楽には、そうしたクウォリティの高さを端々で感じることができる。派手ではないけれど、しっかりと練られているのがポーランドの音楽... こういう音楽性を生んだ背景には何があるのだろう?日本人にとってポーランドというと、やっぱり、ショパンであって、ロシアの支配に音楽で抵抗を試みる、英雄ポロネーズや、革命のエチュード... そんなショパンをナチス占領下で弾いて、映画にもなったシュピルマンに象徴される悲劇性が、ポーランドのイメージとして定着しているように思う。けれど、ポーランドの歴史は、必ずしも悲劇ばかりではない。それどころか、ヤギェウォ朝(1386-1572)の時代には、バルト海から黒海、さらにアドリア海に至る、東欧版ミニEUとすら呼べるような超巨大連邦を形成し、ヤギェウォ朝が断絶すれば、議会が政治を主導、国王を選挙で選ぶという、随分と先進的な体制を創り上げていたりと、なかなかおもしろい歴史を持つ。そして、何より、天動説を覆したコペルニクス(1473-1543)の存在!こういう視点を持った人物を生み出したポーランドの物事を見据える感性とでも言おうか、あるいは合理的な考え方が、その音楽にも見出せる気がする。
そして、それが、炸裂したのが、20世紀!ナチスの侵攻を受け、さらには、ソヴィエトの影響下に置かれるなど、国家としては不遇の時代が続くも、1953年、スターリンが世を去り、東側世界に"雪融け"が訪れると、西側の前衛にいち早く呼応した、ポーランド楽派と呼ばれる作曲家たちを世に送り出す。東側世界に在って、異例とも言える斬新な彼らの音楽は、イデオロギーの壁を越え、現代音楽の世界に独特な存在感を見せた。その草分けとも言える存在が、ルトスワフスキ(1913-94)。で、ここで聴く、管弦楽のための協奏曲(track.1-3)は、1954年に初演された作品。まさに"雪融け"直後にあたる作品だけれど、作曲されたのは"雪融け"前夜。ということで、ポーランド楽派の核心世代のような尖がった音楽を展開することはなく、ポーランドの民謡を素材としながら、カプリッチョ、アリオーソ、パッサカリアなど、古典的な形を用い、精緻なモダニズムを織り成しつつ、センスを感じさせる音楽を展開。というあたり、よくバルトークの管弦楽のための協奏曲(1944)と類似性が指摘されるわけだけれど、そう、まさに!しかし、今、改めてその音楽と向き合ってみれば、ハンガリーのバルトークとはまた異なるテイストがしっかりと窺える。ポーランドのルトスワフスキ... そのポーランドとしての音楽性... シマノフスキ(1882-1937)を思い出させる独特な仄暗さが広がり、どこかダークな夢幻の世界に包まれるよう。モダニスティックなのだけれど、リリカルでもあって... 特に2楽章(track.2)では、「夜の奇想曲とアリオーソ」と題され、象徴主義を思わせるミステリアスさを纏い、魅惑的... こういう雰囲気の作り方、ハンガリーには無いセンス...
という、管弦楽のための協奏曲に続いて取り上げられるのが、"雪融け"以前、1950年の作品、小組曲(track.4-7)。より明確に民俗音楽を素材とし、より素朴に、よりキャッチーな音楽を紡ぎ出し、スターリンの目の光る時代の音楽... 「社会主義リアリズム」という名の検閲に応え得る作品... なのだけれど、1曲目、フジャルカ(track4)では、ストラヴィンスキーを思わせるようなバーバリスティックな表情が顔を覗かせ、安易に体制に靡かないようなところも?一転、2曲目、フラ・ポルカ(track.5)は、バルトークかと見紛う音楽... 活きのいい民俗調で、少しワイルドに盛り上げる!で、このワイルドさも、スターリン体制の抑圧的な空気には馴染まない?表立っての反逆ではない、センス良く体制と距離を取るようでもあり... このあたりに、モダニスト、ルトスワフスキの気骨を見出せるのか... で、最後は、1992年に完成された、4番の交響曲(track.8)。それは、共産党支配が倒れて3年目の作品。そして、初演は、何と、サロネンが率いたロサンジェルス・フィル!いや、"雪融け"なんて言葉は、もはや隔世の感あり... そういう自由が手に入って、ルトスワフスキはどんな作風に至ったか?当然、"雪融け"前後の作品よりも自由が感じられる一方で、いい具合に戦後"前衛"の難解さを脱していて、思い掛けなく魅惑的!かつてのダークさを、より色彩的に繰り広げ、新印象主義、新象徴主義なんて言ってみたくなるようなテイスト... いや、20世紀にして、詩情を漂わせるルトスワフスキの音楽は、ある種、ダンディズムだ。
という、ルトスワフスキを聴かせてくれる、ウルバンスキ、NDR響。まず、ポーランド発、期待の若きマエストロの、思いの外、艶っぽい音楽作りに興味を覚える。若手指揮者ならではというか、アリガチ?な、明晰さが生むフレッシュさとは一味違う、しっとりとした仕上がりが印象的。もちろん、明晰であることも事実... けれど、ただ明晰で終わらすことのないウルバンスキ。スパっと明晰に捌いて、できたスペースに、何かもうひとつフレーバーを籠めて来る妙。こういう器用さが、さらなる世代のマエストロ?いや、そこに、ポーランドのDNAを見た気がする。若いけど、ダンディ?なればこそ、ルトスワフスキのダンディズムが映えて、いい具合に雰囲気で聴く者を包んでくれる。だから、モダンでも、より味わうことができる。そんなウルバンスキに共鳴するNDR響... ドイツのオーケストラが漂わせる仄暗さが、音楽に籠められた詩情を引き立てつつ、NRD響ならではのクリアさが、ルトスワフスキの音楽の響きの多彩さを丁寧にすくい上げ、シャープかつお洒落。なればこそ、ルトスワフスキが、これまでになく魅惑的に響いて、惹き込まれる。そして、ルトスワフスキ、ポーランド、ダンディズム... このアルバムには、ひとつ解題があるように思えて来る。いや、興味深い。

LUTOSŁAWSKI NDR Symphony Orchestra Krzysztof Urbański

ルトスワフスキ : 管弦楽のための協奏曲
ルトスワフスキ : 小組曲
ルトスワフスキ : 交響曲 第4番

クシシュトフ・ウルバンスキ/NDR交響楽団

Alpha/Alpha 232



そうそう、ポーランドって、ヨーロッパ切っての親日国なのですよね。
でね、近頃、しみじみ思うのですよ、近くのストーカーより、遠くの想い人...
ちなみに、当blogは、親ポ、ポ流を、高らかに宣言しちゃいます!




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