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1789年、フランス革命、サン・キュロットと王党派の歌! [2016]

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7月4日は、アメリカ独立記念日ということで、アメリカ音楽史をざっくり遡ったのだけれど、続いて7月14日は、フランス革命記念日、パリ祭!となれば、今度はフランス革命にまつわる音楽を聴いてみようかなと... いや、フランス音楽史において、フランス革命は、黒歴史とさえ言える事態。ヨーロッパ中の巨匠を集めて、音楽の都として燦然と輝いていたパリだったが、蜘蛛の子を散らすように巨匠たちはいなくなり、その音楽シーンを支えて来たパトロンたち、富裕な貴族、高位聖職者たちは、国外追放されるか、ギロチンであの世に追放された。そして、長い歴史を誇った教会音楽は、革命政府の反教会政策により、壊滅... 18世紀の音楽大国は、その最後で、カタストロフに見舞われる。一方で、瓦解して新たに生まれる音楽も... 外国人の巨匠たちの、かしこまった音楽とは対極を成す、人々の間で歌い出された革命歌!それは、誰もが歌える新しい音楽!
ということで、フランスの歌の歴史をつぶさに探る異色の古楽アンサンブル、アルノー・マルゾラティ率いる、レ・リュネジアンによる、フランス革命期を彩った革命歌、それから、反革命歌も歌ってしまう、"FRANCE 1789"(Alpha/Alpha 810)を聴く。

1789年、7月14日、バスティーユ監獄襲撃に始まるフランス革命。当初は立憲革命であり、世界初の人権宣言も採択され、新しい時代を告げる、まさに輝かしきフランス革命!だったはずが、事は悪い方へ、悪い方へと転がり出し、戦争、内乱、虐殺... 自由、平等、博愛の精神は、あっさりと雲散、血みどろの権力闘争を経ての、独裁恐怖政治の大ギロチン大会!改めてフランス革命を振り返れば、それは混乱そのもの... その混乱の最中、18世紀、ヨーロッパ音楽界の頂、燦然と輝いていたパリの音楽シーンは、瞬く間に機能不全に陥り、花やかだったコンサートサロンは閉じられ、オルガンが華麗に鳴り響いていた教会は打ち壊され、フランスの音楽は、フランス史上、最も暗澹たる状況に... しかし、音楽がまったく無くなってしまったわけではなかった。いや、まったく新しいベクトルを持った音楽が、パリの街を、フランスの各地を彩った!それが、革命歌... 人々の不満を吸収し、どこからともなく湧き上がり、人々の間に浸透して行った革命歌は、かつてのパリの音楽シーンを彩った音楽とは一線を画す、聴く音楽ではなく、歌う音楽。音楽の素養の無い人にも、無理無く歌えるように、平易にできており、何よりキャッチー... また、そうした性質を利用し、文字を読むことのできない多くの人たちに、革命精神を伝える手段としても用いられた。いや、聖書を歌うグレゴリオ聖歌の焼き直しにも思える革命歌の存在は、なかなか興味深い。神に替わって理性(とは程遠かったのが実際だけれど... )が信仰の対象に指定されたフランス革命期、革命歌は、新たな時代の聖歌となったわけだ。とはいえ、聖歌のように慎ましくなどであり得ない!
"FRANCE 1789"の始まりは、「バスティーユ襲撃」で始まる。太鼓の元気なリズムに乗り、お囃子のようなフルートの音に導かれて、意気揚々とバスティーユへの道程を歌う。続く、「自分はほんとうに目覚めているのか」(track.2)では、一転、重々しく悲痛な表情を見せながらも、圧政の象徴、バスティーユはもう無いと... そして、「囚人たちの解放」(track.3)が続き、フランス革命の展開を丁寧に描き出す。で、そのひとつひとつのナンバーが、実に味わいのあるメロディーに彩られ、実に表情豊かに歌われるものだから、ちょっとした歌芝居を見るよう。単なる革命歌集に留まらず、ストーリーが浮かび上がって来る。そして、そのストーリーをより立体的なものにするのが、王党派の歌!「冬の讃歌」(track.4)、「聞きなさい、この暮らしも終わりだ」(track.13)などは、革命歌の粗暴なナンバーとは異なり、音楽的に整っており、アンシャン・レジームの優雅さが漂う。ルイ16世の死の様子を伝える「ルイ・カペーの死」(track.14)では、ア・カペラでポリフォニックに歌われ、まさに古風... しかし、その古風さに格調高さと荘重さがあり、印象的。一方、革命側も、革命讃歌で、革命を荘重に宣伝。ゴセックによる「至高なるものへの讃歌」(track.18)は、オルガンの伴奏で、雄弁なるナレーションに導かれてコーラスが歌い、革命歌のキャッチーさとは違う、厳かさに包まれ、新たな時代の聖歌の姿が窺える。
しかし、王党派の歌も含めて、盛りだくさんの"FRANCE 1789"。ルイ16世一家が亡命を試みたヴァレンヌ逃亡事件を歌う「王族だった家族のなりゆきと帰還」(track.8)は、ニュースそのものか?さらに、人権宣言(track.7)まで歌ってしまう。重要なところを強調しながら、語り掛けるように... 革命期における音楽は実用性も求められていたわけだ。一方で、体制を突く革命歌は、風刺が効いていて、ユーモラスなものも多く... 「ギロチンの歌」(track.12)では、やけに小気味良く、リズミカルに歌われ、そのギロチンを酷使して恐怖政治を布いたロベスピエール揶揄する「ロベスピエールの尻尾」(track.19)では、コントのネタか?ってくらいに戯画化してみせて... てか、これって、『くるみ割り人形』のディヴェルティスマンの最後、「ジゴーニュ小母さんと道化たち」の中間部のテーマじゃないか?!革命歌のその後の音楽への影響を垣間見る?そして、締めは、「ラ・マルセイエーズ」(track.21)!しかし、ただ歌うんじゃない、王党派による替え歌、マルセイエーズ反歌を一緒に歌ってしまうから凄い... お馴染みのメロディーを、勇壮に、景気良く歌い上げる一方で、巧みにアレンジ(クラヴサンがシャリシャリ鳴らされて、アンシャン・レジームの雰囲気を醸したり... )を変えて、反革命を革命歌にユーモラスに盛り込むという、何でもアリな感じ。いや、何でもアリなところにこそ、時代の真実があるのだろう。
という、"FRANCE 1789"を聴かせてくれた、アルノー・マルゾラティ+レ・リュネジアン。まるでおもちゃ箱をひっくり返したような音楽を繰り出しながら、そのひとつひとつのナンバーを、表情豊かに活き活きと歌い、奏で、何とも言えない味わいを引き出して来る!しかし、歌手陣の芸達者っぷりは、大したもの。革命歌ではチープに、王党派の音楽では様式感を以って丁寧に、革命派と、王党派の性格を卒なく際立たせて、フランス語の歌の中身は解らなくとも、当時の対立軸をそこはかとなしに響かせる器用さ。そうして、フランス革命を、バスティーユ襲撃から、人権宣言、ルイ16世の処刑、ロベスピエールの失脚まで、芝居仕立てで繰り広げ、その最後で、ここぞとばかりに、革命歌の代表、「ラ・マルセイエーズ」(反歌も織り交ぜて!)を歌い上げて、クライマックスを作る!フランス音楽史の特殊な一時期を見事に活写してみせながら、それらを何とも滑稽な歌芝居にまとめて異化効果をもたらすのか... どこかブレヒト劇を見るような感覚があって、刺激的。しかし、歴史とは、振り返ってみれば滑稽なものなのかもしれない。栄光の歴史も、悲劇の歴史も... 全ては人間の愚かしさに端を発するもの... "FRANCE 1789"に触れてみて、そんなことを思う。

FRANCE 1789 Révolte en musique d'un sans-culotte & d'un royaliste
Les Lunaisiens


作曲者不詳 : アンフィグリ/バスティーユ襲撃
作曲者不詳 : 自分はほんとうに目覚めているのか
作曲者不詳 : 囚人たちの解放
作曲者不詳 : 冬の讃歌
作曲者不詳 : 執政官は恩知らず
作曲者不詳 : 放埓の歌
作曲者不詳 : 人権宣言
作曲者不詳 : 王族だった家族のなりゆきと帰還
作曲者不詳 : 新しい歌
作曲者不詳 : フランス国民に対するルイ16世の不平と、その不平のパロディ
作曲者不詳 : 罰せられた裏切り
作曲者不詳 : ラ・ギヨティーヌ(ギロチンの歌)
作曲者不詳 : 聞きなさい、この暮らしも終わりだ
作曲者不詳 : ルイ・カペーの死
作曲者不詳 : デュシェーヌ親父のとてつもない怒り
作曲者不詳 : 愛国的アンフィグリ
モンドヴィル : 4リーヴル分のパンしかない
ゴセック : 至高なるものへの讃歌
作曲者不詳 : ロベスピエールの尻尾
自由万歳
リール : ラ・マルセイエーズ/マルセイエーズ反歌

アルノー・マルゾラティ/レ・リュネジアン

Alpha/Alpha 810




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