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流浪の選帝侯のヴァイオリニスト、ダッラーバコのインターナショナル。 [before 2005]

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普段、当たり前のように「コンチェルト」という言葉を使っているけれど、コンチェルトの始まりに遡ると、その姿、今とはまったく異なるものでして、びっくりする。というコンチェルトが生まれたのは、教会... つまり、教会音楽だったコンチェルト!器楽の伴奏を伴って、聖歌隊が歌っておりました。で、この器楽による"伴奏"という概念の形成が「コンチェルト」の端緒となる。それは、バロックの曙が遠くに見え始めた頃、16世紀後半... ルネサンス・ポリフォニーでも楽器は用いられていたが、声部の一部を声に代わって奏でるもの。歌と演奏は並列(ぶっちゃけ、器楽による穴埋め的なイメージ?)。そこに、前面に立つ側と、伴奏に回る側という役割を持たせたのがコンチェルト。やがて、声楽と器楽という組合せばかりでなく、器楽と器楽という組合せも登場し、我々が知る「コンチェルト」への第一歩が記される... という歌われないコンチェルトも教会で盛んに演奏され、17世紀、教会ソナタのように、教会コンチェルトとして、発展を遂げて行く(って、もんの凄く掻い摘んでお伝えしております!)。
そうして、18世紀に入り、我々が知る「コンチェルト」誕生前夜の教会コンチェルトに注目!ヴェルナー・エールハルトが率いていた頃の切っ先鋭いコンチェルト・ケルンによる、教会コンチェルトを含むダッラーバコの協奏曲集(TELDEC/3984-22166-2)を聴く。

まずは、1712年に出版された『12の教会コンチェルト集』、Op.2から、1番(track.1-4)。いや、まさに教会コンチェルトの作法に則って、神妙に始められる1楽章、ラルゴ。通奏低音により、一歩、一歩、踏みしめるように刻まれるリズムが、教会の雰囲気そのもの。続く、2楽章、アレグロ(track.2)は、ガッシリと対位法を用いて、教会音楽の伝統の重みをひしひしと感じさせつつ、イタリア的な鮮烈さにも彩られて、ドラマティック!一転、3楽章、アンダンテ(track.3)は、教会の重みから、幾分、解放されて、ちょっぴりセンチメンタル。そのあたり、間もなくフランスからヨーロッパへと漂い出す、ロココの気分が滲むのか?そして、終楽章、アレグロ・アッサイ(track.4)は、バロックらしい力強い音楽が繰り出されて、惹き込まれるのだけれど、その力強さに、やっぱりセンチメンタルが過って、多感主義を予感... 教会コンチェルトの型をしっかり踏襲しながら、教会の厳めしさを揺るがすような、ポスト・バロックの時代(ギャラント様式、多感主義... )の情感が芽生えるダッラーバコ(1675-1742)の音楽... そこに籠められた、ひとつのイメージでは捉え切れない不思議な多彩さが気になる。同世代の作曲家からは窺えない多彩... いや、ダッラーバコが仕事をした場所を丁寧に追えば、納得させられる。
ダッラーバコは、イタリア、ヴェローナ(当時はヴェネツィア共和国... )で生まれている。後にボローニャ、サン・ペトローニオ大聖堂の楽長(=ボローニャ楽派のトップ!)となるトレッリ(1658-1709)に学び、その後、フランス好みだったモデナの宮廷(フランスの宰相、マザランの姪が公妃となっていた... )で仕事をし、さらに、スペイン継承戦争(1701-14)に翻弄され、オランダ、フランスと、各地で亡命生活を余儀なくされたバイエルン選帝侯、マクシミリアン2世エマヌエルに仕えたことで、ヨーロッパ各地のセンスにも触れた(1715年、選帝侯がミュンヒェンに帰還すると、ダッラーバコも、以後、ミュンヒェンを拠点とする... )。そうした経験が、ダッラーバコの音楽には絶妙に活きている。イタリアならではのバロックっぽさがあり、フランス風の芳しさ、ドイツ的な実直さもあって、興味深い国際様式を形成するのか?で、そういう多彩さが、よく絡み合って、巧みにひとつの美しい織物を編み上げていて、同世代の作曲家たちのコンチェルトを思い起こすと、ダッラーバコの音楽は、よりシンフォニックに感じられる。またそうあることで、教会コンチェルトならではの格調を見せながら、教会に留まらない表情も表れ、よりスケールの大きな音楽へと至るのか... いや、なかなか興味深い、ダッラーバコという存在...
さて、『12の教会コンチェルト集』、Op.2から、1番、4番、5番、7番の4曲が取り上げられた後で、1730年に出版された『複数の楽器のための6つの協奏曲』、Op.5から、3番、5番、6番の3曲と、1735年に出版された『複数の楽器のための12の協奏曲』、Op.6から、5番と11番の2曲が取り上げられる。でもって、ミュンヒェンに腰を落ち着けてからの、ダッラーバコ芸術は、深まっている!教会コンチェルトは、良い意味で何者でもない形に至っていたのに対し、複数の楽器のための協奏曲(つまり合奏協奏曲... )は、よりコンチェルトとしての性格が明確にされていて、求心力を増す。6つの協奏曲、3番の1楽章(track.15)なんて、冒頭から力強く、劇的で、ちょっとヴィヴァルディ(1678-1741)ちっく... かと思うと、5番の1楽章(track.20)は、クープラン(1668-1733)のような明朗さを見せて、おもしろい!そして、ダンサブルな6番(track.24-28)がカッコ良過ぎ!続く、12の協奏曲は、より色濃くポスト・バロックの時代を感じられ、前古典派のように軽やかにリズムを刻み、緩叙楽章、アリア(track.30, 33)では、ナポリ楽派のオペラのようにリリカルに歌う。ダッラーバコの多彩さは、それぞれのカラーがより明確に示されて、カラフル!そうなって、ますますおもしろいダッラーバコ。
そんな協奏曲集を聴かせてくれる、コンチェルト・ケルン。エールハルト時代の録音ということで、まず耳を捉えるのは、エッジの効いた演奏。鋭いノン・ヴィヴラートで、スパっと切って行く気持ち良さたるや!で、凄いのは、切って、タイトになったところで、密度を上げて来て、より有機的な音楽を編み上げてしまう魔法... 惹き込まれる。一方で、ダッラーバコの多彩さにも丁寧に反応し、それぞれのコンチェルト、楽章が持つ雰囲気も大切に奏で、魅了されずにいられない。しかし、腕利き揃いのアンサンブルが繰り出す合奏協奏曲は、さすがの一言。緻密に織り込んで行くような教会コンチェルト(track.1-14)に対し、ソロがめくるめく踊り出す複数の楽器の協奏曲(track.15-34)。一糸乱れぬアンサンブルの妙と、ひとりひとりの技術の高さと、改めてコンチェルト・ケルンの凄さに感じ入る。また、そんな快演があって、おもしろさが際立つダッラーバコの音楽。我々が知る「コンチェルト」の誕生前夜の、まさに過渡期ながら... いや、なればこその多彩さがおもしろさに昇華されて、そのあたりを卒なく響かせるコンチェルト・ケルン、ウーン、クールです。

EVARISTO FELICE DALL'ABACO: CONCERTI
CONCERTO KÖLN

ダッラーバコ : 4声の教会コンチェルト 第1番 ニ短調 〔『12の教会コンチェルト』 Op.2 から〕
ダッラーバコ : 4声の教会コンチェルト 第4番 イ短調 〔『12の教会コンチェルト』 Op.2 から〕
ダッラーバコ : 4声の教会コンチェルト 第5番 ト短調 〔『12の教会コンチェルト』 Op.2 から〕
ダッラーバコ : 4声の教会コンチェルト 第7番 ハ長調 〔『12の教会コンチェルト』 Op.2 から〕
ダッラーバコ : 複数の楽器のための協奏曲 第3番 ホ短調 〔『6つの複数の楽器のための協奏曲』 Op.5 から〕
ダッラーバコ : 複数の楽器のための協奏曲 第5番 ハ長調 〔『6つの複数の楽器のための協奏曲』 Op.5 から〕
ダッラーバコ : 複数の楽器のための協奏曲 第6番 ニ長調 〔『6つの複数の楽器のための協奏曲』 Op.5 から〕
ダッラーバコ : 複数の楽器のための協奏曲 第5番 ト長調 〔『12の複数の楽器のための協奏曲』 Op.6 から〕
ダッラーバコ : 複数の楽器のための協奏曲 第11番 ホ長調 〔『12の複数の楽器のための協奏曲』 Op.6 から〕

コンチェルト・ケルン

TELDEC/3984-22166-2




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