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バロック、インスブルック音楽紳士録、パンドルフィのソナタ集。 [2013]

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バロック期、イタリアの教会は、音楽センターだった!と言われても、ちょっとイメージし難いかもしれない。けれど、対抗宗教改革によって、なりふり構わず?音楽の力(は、今以上にインパクトがあったのかも... )を以ってして、人々を囲い込もうとした教会の方針が、結果、教会を音楽センター化させることに... さらにモノディーの発明(本来は極めて世俗的なものだったけれど、聖書をより力強く伝えるには最高の新技術!)が重なり、楽器の進化(パイプ・オルガンはもちろん、何と言っても一番は、ヴァイオリンの完成と、それに伴う弦楽合奏の充実!)も重なり、音楽センターは、ますます輝き、それによって、音楽もまたさらに進化を遂げて行く。で、おもしろいのは、ミサやオラトリオといった、典礼や聖書を歌うものばかりでなく、直接的にはキリスト教と関係の無い、器楽曲も充実していたこと!ということで、かつて教会を彩った器楽曲、教会ソナタに注目してみる。
グナール・レツボールのバロック・ヴァイオリンと、彼が率いるピリオド・アンサンブル、アルス・アンティクァ・オーストリアの演奏で、イタリア・バロックのヴァイオリニスト、パンドルフィの『教会と室内のためのソナタ集』、Op.3(ARCANA/A 369)を聴く。

『教会と室内のためのソナタ集』、ん?むかしむかし、バロック期には、教会ソナタと、室内ソナタがありまして... というのが、まず、おもしろいところ。教会ソナタは、その名の通り、教会で演奏するためのソナタで、つまり、教会に来た人たちは誰でも聴ける音楽。一方、室内ソナタは、その名の通り、室内で演奏されるソナタで、つまり、プライヴェートな空間(宮廷とか... )で音楽を聴けることのできる人たちのための音楽だった。で、それぞれの場所に相応しい風情があって、教会ソナタならば、ミサの合間に演奏されるだけに、グレゴリオ聖歌を素材にしたりして、神秘的だったりとか、厳かだったりとか、それっぽさがそこはかとなしにあって... 対する室内ソナタは、もちろん世俗的。ダンスのリズムなんかに彩られて、より砕けた仕上がりに... で、舞踏組曲的な性格からか、より多くの楽章で構成されていた室内ソナタ。一方の教会ソナタは、緩急緩急の4楽章ないし、3楽章構成。我々にとって馴染みのあるソナタの形に近いのかも... というのが、「ソナタ」なるものが登場した頃、17世紀の話し... いや、この"教会"と"室内"という分け方に、当時の音楽シーンの様子が浮かび上がるようで興味深い。市民の誰もが集う開かれた音楽センターがあり、高位聖職者たち、王侯、有力貴族、大商人たちのサロンがあり、この幅と広がりが、「ソナタ」など、その後のクラシックのベースとなる形式を形作り育んで行ったわけだ。
さて、ここで聴くパンドルフィ(1624-87)の『教会と室内のためのソナタ集』、Op.3は、パンドルフィが仕えていた前方オーストリア大公、フェルディナント・カール(ハプスブルク家の一員で、元スウェーデン女王、クリスティーナを歓待したことで知られる... )の宮廷(楽長は、ローマでカリッシミに学んだチェスティ!)のあったインスブルック(アルプス以北で、最も充実したイタリア・バロックを展開!)にて、1660年に出版された、全6曲のヴァイオリン・ソナタからなる曲集(同時に、『教会と室内のためのソナタ集』、Op.4も出版され、合わせて1ダースだった... )。で、この曲集を特徴付けるのが、全6曲、それぞれ擬人化されているところ!科学、歴史、さらに音楽に通じ、パンドルフィが大いにインスパイアされていた知識人で修道僧、ベネデット・ステッラに準える1番、「ラ・ステッラ」(track.1-4)。パンドルフィの上司、楽長、チェスティを描く2番、「ラ・チェスタ」(track.5-8)。当時、多くの才能ある音楽家を輩出したメラーニ家出身のヴァイオリニスト、アントニオ・メラーニを描く3番、「ラ・メラーナ」(track.9-13)。そして、パンドルフィの同僚たち、インスブルックの宮廷オルガニストで、聖歌隊長、アントニオ・カステッリを描く4番、「ラ・カステッラ」(track.14-16)。宮廷歌手のカストラートたち、クレメンテ・アントニイ、ジュリオ・ポンペオ・サッバティーニを描く、5番、「ラ・クレメンテ」(track.17-22)と、6番、「ラ・サッバティーナ」(track.23-28)。で、修道士と楽長と聖歌隊長が教会ソナタで、ヴァイオリニストと歌手たちが室内ソナタとなるのか...
オルガンの啓示的なフレーズに導かれ、ヴァイオリンがエコーを奏で、どこかスピリチュアルな1番、「ラ・ステッラ」(track.1-4)。厳かで、より深みを感じさせつつ、最後、ヴァイオリンの即興的なパッセージで圧倒される2番、「ラ・チェスタ」(track.5-8)。オルガンの温かな演奏に包まれる中、ヴァイオリンが穏やかなメロディーを歌い、何となしにヘヴンリーな4番、「ラ・カステッラ」(track.14-16)。という、教会ソナタ、3曲。通奏低音にオルガンが用いられ、そのあたりに教会らしさが表れる一方で、時にゾクっと来るようなエモーショナルさ、ヴィヴィットな響きで以って、この世ならざるものを醸し出すところも... 対抗宗教改革の時代の教会音楽というものを意識させられつつ、その音楽の力に魅入られるよう。一転、室内ソナタ、3曲。通奏低音はチェンバロが担い、軽やかかつキラキラとしたサウンドが宮廷っぽい。それでいて、キャッチー!また、ヴァイオリニストを描く4番、「ラ・カステッラ」(track.14-16)では、超絶技巧が、ひと際、映えて、惹き込まれる。で、おもしろいのが、2人の歌手たち... 5番、「ラ・クレメンテ」(track.17-22)は、教会ソナタのようにエモーショナルで、バロックそのもの激情型。対する6番、「ラ・サッバティーナ」(track.23-28)は、何とも朗らか!レッジェーロだったんだ... いや、巧みに音符で描かれる6つの肖像は、それぞれに表情が活きていて、そのヴァリエイションがおもしろい!
という、『教会と室内のためのソナタ集』、Op.3を聴かせてくれるレツボール+アルス・アンティクァ・オーストリア。何と言ってもレツボールのバロック・ヴァイオリン!切れ味は鋭く、それでいて、表情に富み... 超絶技巧で以って鮮烈さを響かせるのはもちろん、何気ないメロディーをスーっと奏でて行く、気負わない佇まいに聴き入ってしまう。その音色には、17世紀、ヴァイオリンという楽器の黎明の時代の、ある種の自由さというか、無邪気さが、素直に表れていて、そのピュアな感触が心を擽る。そして、レツボールの演奏を、さり気なく引き立てる、アルス・アンティクァ・オーストリアによる通奏低音... 特に印象に残るのが、コラシオーネ、ギター、アーチリュートの撥弦楽器のクリアかつやさしい響き!ヴァイオリンの後ろに控えて、穏やかに佇んでいるものの、その音色は本当に美しくて... そこに、ヴィオローネ、オルガン、あるいはチェンバロが加わって、巧みに綾なし、"教会"と"室内"の、それぞれの旨味を引き出しつつ、全6曲、より表情に溢れたものとしている。いや、描き出されるひとりひとりの性格を、卒なく引き立てる演奏の妙、この曲集のおもしろさは間違いなく押し上げられている。それにしても、ある人物を音楽で描いてしまうというギミック、まさにバロック...

GIOVANNI ANTONIO PANDOLFI MEALLI - SONATE À VIOLINO SOLO. OPERA TERZA
ARS ANTIQUA AUSTRIA ・ GUNAR LETZBOR


パンドルフィ・メアッリ : 『教会と室内のためのソナタ集』 Op.3

グナール・レツボール(ヴァイオリン)

アルス・アンティクァ・オーストリア
ヤン・クリゴフスキー(ヴィオローネ)
ダニエル・オマン(コラシオーネ)
ピエール・ピツル(ギター)
フーベルト・ホフマン(アーチリュート)
ノルベルト・ツァイルベルガー(オルガン/チェンバロ)

ARCANA/A 369




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