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没後250年、フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ。 [2011]

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さて、11月、最後のupとなりました。いやはや、2018年も、残すとこひと月ですよ。こんな年、早く終わっちまえ!なんても思いましたが、やっぱり感慨もあるのかなと... という中で、今年、メモリアルを迎える作曲家たちを、駆け込みで追っております、今月後半... それにしても、追い付かないくらいに多い、メモリアルを迎えた作曲家たち。でもって、興味深い作曲家ばかりで... いや、マニアックな作曲家ほど、おもしろかった!没後400年、カッチーニ(1551-1618)に、没後100年のボーイト(1842-1918)、リリ・ブーランジェ(1893-1918)、没後50年のリャトシンスキー(1895-1968)、生誕100年のツィンマーマン(1918-70)などなど、思いの外、刺激的な2018年だったなと振り返ってみる。のだけれど、まだまだおりまして... ということで、没後200年のコジェルフから、半世紀を遡って、没後250年、フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ!フィレンツェに生まれ、ヴェネツィア、ドレスデン、ロンドンと、18世紀を代表する音楽都市を虜にしたヴァイオリンのヴィルトゥオーゾに注目...
ピリオドの名手たちが集まったアンサンブル、リリアルテの演奏、リュディガー・ロッターのヴァイオリンと、ドロテー・オベリンガーのリコーダーを軸に、フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニと、その師で、叔父、アントニオ・ヴェラチーニのソナタを取り上げるアルバム、"The Enigmatic Art Of Antonio And Francesco Maria Veracini"(OEHMS CLASSICS/OC 720)を聴く。

フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ(1690-1768)。
ヴェラチーニ家は、フィレンツェのヴァイオリニストの一家... なのだけれど、フランチェスコ・マリアの父は、音楽に関心を示さず、薬剤師となって、商人として成功していたのだとか... そんな家に生まれたフランチェスコ・マリアは、叔父、アントニオ(1659-1733)の下でヴァイオリンを学び、早くから才能を開花、叔父とともにフィレンツェで活躍。そして、1711年、21歳の時にフィレンツェから巣立ち、ヨーロッパ切っての音楽都市、ヴェネツィアへ!その年のサン・マルコ大聖堂のクリスマスのミサでは、ソリストとして華麗な演奏を披露したというから、すでにヴィルトゥオーゾとして第一級だったのだろう。そんなフランチェスコ・マリアの演奏に触れて、後に悪魔のトリルを書くイタリア・バロックを代表するヴァイオリニストのひとり、タルティーニ(1692-1770)は、自らの技術の未熟さを思い知らされ、アンコーナに引き籠り、練習に明け暮れたという逸話を残している。それほどの腕を持って、やがてヨーロッパ各地へ、活躍の場を広げて行く、フランチェスコ・マリア... 1714年には、ヨーロッパ最大の音楽マーケットに急成長していたロンドンへとツアーに出て、1717年には、ドイツ・バロックの一大拠点、ドレスデンへ!破格の待遇で宮廷に迎えられるも、その厚遇っぷりが他の音楽家たちとの軋轢を生み、やがて3階の窓から飛び下りるという奇妙な事故(以後、片足が不自由だったとのこと... )を引き起こし、1723年、故郷へと帰る。フィレンツェでは教会を中心に活動、オラトリオやミサを作曲し、充実した音楽活動を送っていた。が、1733年、再びロンドンへ!音楽学者、バーニー曰く、「今日、ヴェラチーニのヴァイオリン・ソロのないコンサートはひとつもない... 」と言わしめるほどの人気を集め、さらにヘンデルのライヴァル、貴族オペラの作曲家としても活動、オペラはもちろん、様々な作品をロンドンの音楽シーンに提供している。その後、1745年、フィレンツェへと帰り、以後、フィレンツェの教会の楽長を歴任し、トスカーナ大公の宮廷でも演奏しつつ、1768年、78歳で大往生。
というフランチェスコ・マリアと、叔父、アントニオのソナタを6曲取り上げる、リリアルテ。"The Enigmatic Art... "と謳っているだけに、謎めいた構成で、より魅惑的にヴェラチーニの音楽世界へと惹き込むよう... その始まりは、1716年、フランチェスコ・マリアが自らをドレスデンの宮廷に売り込むために書いた、ヴァイオリン、あるいはフルートと通奏低音のための第9ソナタから、カンタービレ... リュートを伴奏に、ヴァイオリンが静かに、切なげに歌う、美しい音楽は、どこか古雅で、バロックであることを忘れさせるような素朴な魅力がある。というカンタービレを前奏曲に、1744年、ロンドンで書かれた5番のアカデミック・ソナタ(track.2-4)が始まるのだけれど、ウーン、バロックも末期となり、ヴァイオリンが滴るようにメロディーを響かせて、ドキりとさせられる。何より、通奏低音の充実が、分厚いサウンドを織り成し、バロックのスケール感を越えて行くようで、興味深い。そんなドスの効いた音楽の後に、時代を遡って、叔父、アントニオによる1692年の3声のソナタ、1番(track.5-8)に触れると、その教科書的な有り様に、また驚かされる。コレッリが確立したトリオ・ソナタをしっかりと踏襲し、ヴァイオリンとリコーダーが対置され、通奏低音とともに実直に対位法が紡がれて行く... その生真面目さに、何か呪文めいた感覚を見出せて、より音楽的なフランチェスコ・マリアとは好対照。そして、再び、1744年のロンドン... 12番のアカデミック・ソナタ(track.14-17)の始まりは、叔父、アントニオ張りの対位法を繰り出すも、何とも言えない艶に彩られ、対位法に表情が生まれ魅惑的。"The Enigmatic Art... "の謎とは、時代を、世代を行き来して生まれる眩惑感だろうか?眩惑されて、ヴァイオリンという楽器に、何か魔性のようなものを感じてしまう。
コレッリ(1653-1713)世代にあたる叔父、アントニオ(1659-1733)、ヴィヴァルディ(1678-1741)より一回り年下となるフランチェスコ・マリア(1690-1768)。同じバロックではあっても、2人の間には、明らかな世代の違いが聴き取れる。けれど、それぞれのソナタを聴いてみて感じられるのは、世代を越えて通底するヴェラチーニ家の音楽性... それは、フィレンツェという都市が育むものだったかなと... コレッリのロジカルさ、端正さとはまた違う、雅やかな雰囲気、ヴィヴァルディの激情とは違う、手堅い音楽運び... ある意味、誰よりも無理の無い音楽を紡ぎ出し、ある種の聴き易さを生み出すのが、ヴェラチーニ家の音楽性だろうか?そうしたフィレンツェ流をベースに、ヴェネツィア、ドレスデン、ロンドンを体験して完成されるフランチェスコ・マリアの国際様式。コレッリのロジカルさ、ヴィヴァルディのドラマティックも程好く引き込んで、より豊かな音楽が響き出すあたりは、ドイツに生まれ、イタリアで修業し、ロンドンで大家となったヘンデルの音楽に通じるように感じる。で、同時代のコンポーザー・ヴァイオリニストとは一味違うスケール感を見出し、そのスケールの大きさに、魔性も浮かぶのか... タルティーニが狼狽し、ドレスデンの宮廷が破格の契約金を払い、ロンドンっ子たちが熱狂した理由が、何となくわかった気がする。そして、没後250年のメモリアル、改めて、その音楽に、魅了されるばかり...
さて、ヴェラチーニ家の叔父、甥の音楽を、豊かに響かせるリリアルテ面々... で、何と言ってもロッターのヴァイオリン!下手に超絶技巧を前面に押し出すようなことはしないヴェラチーニ家の音楽を、じっくりと響かせて、ヴァイオリンの確かな音色を存分に味あわせてくれるその演奏もまた、スケールが大きい!派手さではない、存在感で、地に足の着いた音楽を奏でて、叔父、甥、それぞれの性格を詳らかにし、バロックの深化をそこはかとなしに提示して来る妙。いや、叔父、アントニオのソナタには音楽の深淵を見出し、甥、フランチェスコ・マリアのソナタにはバロック精神の真髄を味あわせてくれる。一方で、オベリンガーの可憐なリコーダーも印象深く... 叔父、アントニオの3声のソナタ(track.5-8)での鮮やかな発音!ヴァイオリン・ソナタをリコーダーで奏でれば(track18-22)、ヴァイオリンの表情の深みを巧みに笛で表現し、聴き入るばかり。そして、このヴァイオリンとリコーダーのコントラストが、"The Enigmatic Art... "の謎をより赴きあるものとするのか... ヴェラチーニ家の音楽を、より深く、時に壮大にも描き出して、惹き込まれてしまう。

The Enigmatic Art Of Antonio And Francesco Maria Veracini

フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ : カンタービレ 〔ヴァイオリン、あるいはフルートと通奏低音のための 第9 ソナタ から〕 *
フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ : アカデミック・ソナタ 第5番 ト短調 Op.2-5 *
アントニオ・ヴェラチーニ : 3声のソナタ 第1番 ト短調 Op.1-1 **
アントニオ・ヴェラチーニ : 室内ソナタ 第3番 ト短調 Op.2-3 *
フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ : アカデミック・ソナタ 第12番 ニ短調 Op.2-5 *
フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ : ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト短調 Op.1-1 〔リコーダー版〕 *
フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ : ヴァイオリン、あるいはフルートと通奏低音のための 第9 ソナタ *

リリアルテ
リュディガー・ロッター(ヴァイオリン) *
アクセル・ヴォルフ(リュート)
クリスティン・フォン・デア・ゴルツ(チェロ)
オルガ・ワッツ(チェンバロ/ポジティフ・オルガン)

ドロテー・オベリンガー(リコーダー) *

OEHMS CLASSICS/OC 720




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