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ブルックナー、8番の交響曲、オルガン版。 [before 2005]

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田舎のオルガニストを務めていた父、村の教会のオルガンが音楽への入口となり、修道院のパイプ・オルガンに育てられたブルックナー... 希代のシンフォニストは、オルガニストでもあったこと、何となく忘れがちなのかもしれない。ま、交響曲のインパクトがあまりに強過ぎるからなのだろうけれど... しかし、そのインパクトの源泉にあるのが、パイプ・オルガンのように感じる。ゴシック期に教会へと導入されて以来、揺ぎ無く教会に鎮座し、独特な地位を築いて来たパイプ・オルガンの、時代を超越する響き、泰然とした古風な在り方が、ブルックナーの交響曲には深く刻まれているように感じる。そうして、他のシンフォニストたちとは違うインパクトを生むのかなと... そもそも、他のシンフォニストたちと音楽の捉え方が違うのかもしれない。ふと、そんなことを考える。
ということで、オルガニスト、ブルックナーから、シンフォニスト、ブルックナーを紐解く、なかなか興味深い1枚... スイスのオルガンの巨匠、ライオネル・ロッグがアレンジし、自らで弾いた、ブルックナーの8番の交響曲のオルガン版(BIS/BIS-CD-946)を聴く。

まず驚かされるのは、最初の一音の違和感の無さ!パイプ・オルガンから流れ出す、1楽章の出だし、あの不穏なテーマの、あまりのナチュラルさには、戸惑いすら覚えてしまう。うっかりすると、オーケストラでないことに気付き損ねそうなくらい... オーケストラから距離を感じさせないパイプ・オルガンの響きに、この楽器の規模の大きさと多彩さを思い知らされる。また、裏を返せば、ブルックナーが、如何にオーケストラを用いて、パイプ・オルガンを鳴らしていたかに気付かされる。いや、まさに、他のシンフォニストたちとは違う音楽の捉え方が明確になって、ブルックナーの交響曲の特異さが腑に落ちる。パイプ・オルガンならではのスケールの大きさと、スケールが大きいからこそ小回りの利かない不器用さというのか、時として無機質に思えるようなところ... 音楽を奏でるというよりは、サウンド・マシーンとして音響を放つような、パイプ・オルガンの粗暴さが、オーケストラという、本来、万能であるはずのフィールドで繰り出されると、あのインパクトが生まれるのだなと... それを、改めてパイプ・オルガンに還元してしまった、ロッグ。その素直なアレンジもあって、オルガン版でも、まったく魅力を失わない8番の交響曲... まるでオルガン版の方がオリジナルのように聴こえてしまうかのよう。この感覚が、おもしろい!
でもって、パイプ・オルガンの響きが、ドンピシャではまるのが、2楽章、スケルツォ(track.2)。少し野卑で、シンプルな音形がめくるめく繰り出されるあたり、パイプ・オルガンの特性が見事に活かされて、オーケストラで聴く以上にワクワクさせられるのかも... パイプ・オルガンのスペイシーさが、宇宙を思わせるようなイメージを喚起して、SFっぽい?そういうSFっぽさを前にすると、この音楽が、19世紀、ロマン主義の時代の作品だとはちょっと考え難い。そして、3楽章、アダージョ(track.3)。静謐さを湛えた壮麗な音楽は、パイプ・オルガンの響きで聴くと、まるで厳かなミサに参列しているような心地がして来る。いや、交響曲であることを忘れてしまいそう... それにしても、最後の盛り上がりの輝かしさたるや!天上から光が降り注ぐかのよう... オーケストラでも十分にヘヴンリーなのだけれど、パイプ・オルガンだとより雰囲気が醸し出されるのかもしれない。そこから、それまでの穏やかさを斬り裂いて、攻撃的なテーマが飛び出し、物々しい音楽が始められる終楽章(track.4)。オーケストラで聴くと、いつもビクっとさせられるのだけれど、パイプ・オルガンだと、思いの外、スムーズなのが、新鮮!
という具合に、様々な発見をもたらしてくれるロッグのパイプ・オルガン... それはとても刺激的な体験なのだけれど、何とも言えない安心感も広がって、不思議。交響曲をパイプ・オルガンで弾くなんて、突飛なはずが、至極当たり前のように響かせる揺ぎ無さには、さすが巨匠といった観あり。そして、その巨匠然とした演奏は、下手にオーケストラと張り合おうなんてせず、淡々と交響曲の響きをパイプ・オルガンに落とし込み、落ち着きを以って繰り出し、滋味すら漂わせてしまう。すると、聴く者の魂を容赦無く洗い出すような、絶対音楽を極めての峻厳なサウンドに、温もりが生まれ、オーケストラで聴くよりも、どこか居心地の良さを覚えてしまうからおもしろい。もちろん、オーケストラが持つ切れ味の鋭さは薄れてしまうし、残響の多いパイプ・オルガンでは、全体の透明度は少し悪くなる。それでも、パイプ・オルガンと真摯に向き合い、交響曲をたったひとりで受け止める、ロッグの懐の大きさに感じ入る。で、フィナーレの壮麗さは、圧巻!

Bruckner: Symphony No. 8 Transcribed for Organ by Rogg

ブルックナー : 交響曲 第8番 ハ短調 〔1890年稿、ロッグのアレンジによるオルガン版〕

ライオネル・ロッグ(パイプ・オルガン)

BIS/BIS-CD-946




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