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フリードリヒ大王の時代の幕開けを告げるオペラ、 [before 2005]

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18世紀のオペラというと、とにかくナポリ楽派!スター・カストラートと華麗なる音楽でヨーロッパを征服。その一方で、パリを沸かせたフランス・オペラも、18世紀のオペラに様々な刺激を与え、興味深い展開を生む。で、ドイツなのだけれど... まだまだローカルだった音楽環境が、かえって実験的な場を生み出す機会も与えたか?モーツァルトも影響を受けた、マンハイムのオペラなどは、19世紀のドイツ・オペラの萌芽とも言えそうな作品を生み出していて、もっと注目されてもいいのかもしれない。そして、もうひとつ、独特の個性を育んだベルリンのオペラもまた、興味深いものがある。フリードリヒ大王が君臨したベルリン... 自らフルートを奏で、作曲もこなした大王は、その音楽的素養の高さから、他の王侯とは違うスタンスで音楽に向き合い、より積極的に音楽に関与したことで、モードに流されないベルリンのオペラの独特なテイストを形成することになる。
ということで、マンハイムに続いて、ベルリン!ルネ・ヤーコプスの指揮、コンチェルト・ケルンの演奏、ジャネット・ウィリアムズ(ソプラノ)、イリス・ヴェルミリオン(メッゾ・ソプラノ)によるタイトルロールで、グラウンのオペラ『クレオパトラとチェーザレ』(harmonia mundi FRANCE/HMC 901561)。日本でもお馴染みのあのベルリン国立歌劇場の柿落とし飾った作品を聴く。

18世紀、フリードリヒ大王(在位 : 1740-86)ほど、音楽の素養の高かった王様はいなかったんじゃないだろうか?それは、ベルリンの音楽シーンにとって、大きな意味を持つ。先王、フリードリヒ・ヴィルヘルム1世、兵隊王の軍国主義により抹消されたベルリンの音楽文化を復活させたフリードリヒ大王。その音楽への深い理解が、現在の、ベルリン・フィルやベルリン・シュターツオーパーが華々しく活動する音楽都市、ベルリンの礎を築いたことになる。一方で、音楽に詳しいからこそ、その趣味性が反映された音楽に支配されるという閉塞感も生んだ18世紀のベルリン... カール・フィリップ・エマヌエル・バッハは、そこに息苦しさを感じ、ハンブルクへと脱出(1768)している。しかし、この閉塞性が、18世紀のベルリンに独特な個性を生み出す。ナポリ楽派が席巻し、フランス趣味が広がる18世紀のドイツの多くの宮廷とは一線を画し、流行に左右されることなく、フリードリヒ大王の趣味性が貫かれたベルリンの音楽は、音楽史上、まったく希有な存在感を示しているように思う。
さて、大王の趣味はどう育まれたか?その鍵となる人物が、大王の楽長、カール・ハインリヒ・グラウン(1704-59)。大王より8つ年上のグラウンは、ドイツ・バロックの首都とも言えるドレスデンの聖歌隊で歌い、本場、イタリア・バロックの橋頭堡(大バッハもリスペクトした、ヴェネツィア楽派の巨匠、ロッティらが訪れ、華麗なるイタリア・オペラを繰り広げる!)とも言える場所で学んだ作曲家。ドレスデンでイタリアの最新の音楽に触れた後には、ドイツ・オペラの先駆的な試みを続けたブラウンシュヴァイクのオペラハウスで仕事(最初はテノール歌手としての契約だったが、間もなく作曲に進出、副楽長となる... )をし、本場イタリアとドイツ・ローカルの良い部分を吸収し、絶妙にニュートラルな音楽を形作って行く。そんなグラウンが大王に仕えることになるのは、大王がまだ王太子だった頃、1735年。大王と年の近いグラウンは、大王と感覚的に近いものがあったのだろう。そして、グラウンのニュートラルなスタイルが、若き大王を感化したか... やがて、グラウンが大王の趣味を方向付けし、大王の趣味がベルリンの音楽シーンとなる。その第一歩とも言える作品が、ここで聴く『クレオパトラとチェーザレ』...
1740年、プロイセン王に即位したフリードリヒ大王が最初に取り掛かったのがオペラハウスの建設だった。その柿落としのために書かれたのが、イタリア・オペラ、『クレオパトラとチェーザレ』(1742)。まさに、ベルリンの音楽シーンの復活宣言とも言うべき作品。だからか、オペラ全体から並々ならぬものを感じ... とにかく、序曲に始まって、ひとつひとつのナンバーが一曲入魂、丁寧にしっかりと作曲されていて、見事!その音楽は、基本的にバロックに留まっているものの、バロック的なケレン味で派手に盛り上げるようなことはせず、グラウンならではのニュートラルさで以って、徹底した上質さを生み出し、ドラマティックさよりも美しさを際立たせる。こういう方向性が、やがてベルリンのギャラント様式の発展へとつながるのだろう。となると、ドラマとしてはユルい?いや、けしてそんなことはなくて、思いの外、重唱を用い、オペラ改革を予感させるところも... 1幕、3場のクレオパトラのアリア(disc.1, track.14)では、ここで?というところで転調してみせて、多感主義も感じさせるのか... 2幕のフィナーレ(disc.2, track.21)は、モーツァルトのオペラの幕切れのシーンを思わせるキャストたちの複雑なやり取りとアンサンブルが繰り広げられ、なかなか... ベルリンもイタリア・オペラが上演できるようになりました!という自負と、その先を見据えての新しさも散りばめられ、驚くほど充実したオペラを生み出している。
そんなグラウンのオペラを聴かせてくれた、マエストロ、ヤーコプス。ウーン、さすが... 3枚組の長丁場も、弛緩するところがなく、ベルリンの新しい時代の到来を、活き活きと、瑞々しく音にできていて、聴き入るばかり。そんなヤーコプスに応えるコンチェルト・ケルンの演奏が、また息衝いていて、ひとつひとつの楽器が存在感を見せ、それらがスパイスとなって、グラウンの音楽をより魅力的に引き立てる!そんな演奏に乗って、鮮やかにひとつひとつのナンバーを歌い上げる歌手たちがまた粒揃い!クレオパトラを歌うウィリアムズ(ソプラノ)、チェーザレを歌うヴェルミリオン(メッゾ・ソプラノ)はもちろん、全ての歌手が輝いていて、見事!なればこそ、グラウンの一曲入魂がビンビン感じられ、ますます魅了される!

GRAUN ・ CLEOPATRA & CESARE
CONCERTO KÖLN ・ RENÉ JACOBS

カール・ハインリヒ・グラウン : オペラ 『クレオパトラとチェーザレ』

クレオパトラ : ジャネット・ウィリアムズ(ソプラノ)
チェーザレ : イリス・ヴェルミリオン(メッゾ・ソプラノ)
コルネリア : リン・ドウソン(ソプラノ)
セスト : マリア・クリスティーナ・キール(ソプラノ)
トロメオ : ロバート・ギャンビル(テノール)
アキッラ : クラウス・ハーガー(バリトン)
アルサーチェ : ラルフ・ポプキン(テノール)
レントゥーロ : ジェフリー・フランシス(テノール)
RIAS室内合唱団

ルネ・ヤーコプス/コンチェルト・ケルン

harmonia mundi FRANCE/HMC 901561




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