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ストラヴィンスキー、擬古典主義の扉を開く、プルチネッラ。 [before 2005]

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5月が終わりますね。さて、クラシックにおける"イタリア"に注目して来たこの春。いろいろ巡って来ました。『アイーダ』に始まって、『ノルマ』に、ロンドンのイタリア人に、ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ初期バロックの試行錯誤、ヴェネツィア楽派、そして、ナポリ楽派... 随分と聴いたけれど、まだまだ尽きないイタリア。その全体像を把握するのは容易ではないことを思い知らされる。で、何なのだろう、この広がり?!イタリアの音楽史には、フランスやドイツとは違うスケールを感じてしまう。一方で、その広がりが、クラシックではあまり顧みられていない?改めて、"イタリア"に注目してみて、クラシックにおけるイタリアの存在感の軽さが、とても不思議... しかし、若干のイタリア疲れ?ということで、ここでちょっとブレイク。ストラヴィンスキーのバレエを聴いてみる。
とはいえ、それは、前回、聴いた、ペルゴレージをフィーチャーしたバレエで... エサ・ペッカ・サロネンの指揮、ロンドン・シンフォニエッタの演奏、イヴォンヌ・ケニー(ソプラノ)、ジョン・アレー(テノール)、ジョン・トムリンソン(バス)の歌で、ストラヴィンスキーの擬古典主義、ナポリの遠い記憶が香りを放つ魅惑的なバレエ『プルチネッラ』(SONY CLASSICAL/SK 45965)を聴く。

第1次大戦が終わった翌年、1919年、ディアギレフは主催するバレエ・リュスの新しい演目のため、大戦中、自ら収集していたペルゴレージの手稿譜など、まだ世に出ていなかったバロック期の譜面をストラヴィンスキーに託し、オーケストレーションを依頼する。ストラヴィンスキーは、オーケストレーションというよりも、ペルゴレージを素材に、まったく新しい作品を創造する。そうして誕生したのが、バレエ『プルチネッラ』(track.1-16)。コメディア・デラルテをモチーフに、そのストック・キャラクター、プルチネッラを主役とした、歌を含むバレエは、室内オーケストラによる軽妙な音楽を繰り広げ... センセーションを巻き起こした『春の祭典』(1913)の記憶はまだそう遠いものではなかったはずだけれど、ストラヴィンスキーは新たな音楽の扉をこのバレエで開く。ロマン主義を脱する方便としての懐古趣味... モダニズムとしての擬古典主義... マシーン・エイジの軽快な気分が、19世紀の重苦しさを追い払い、モダニスティックかつ、かつての音楽の朗らかさを巧みに引き立てる!
ペルゴレージだけでは生み出し得ない豊かな響きと、思いの外、ペルゴレージの時代へと近付き、ふんわりとした色彩を放つストラヴィンスキーのサウンド。過去とストラヴィンスキーがしなやかに共鳴し響くサウンドの何て魅惑的なこと!が、ディアギレフは、ストラヴィンスキーの再創造をペルゴレージの音楽を冒涜と捉え、不満だったらしい。が、ディアギレフの念頭にあったオーケストレーションというのは、ハープ付きの大オーケストラによるもので、ピリオド・アプローチが当たり前となった今からすると、そっちの方がよっぽど冒涜的に感じられる。そこに来ての、ペルゴレージの時代を思わせる規模、室内オーケストラを用いたストラヴィンスキーの再創造は、ペルゴレージの音楽の素の魅力を活かし切り、見事に18世紀の気分を蘇らせている。そうして、マシーンの振り付け、ピカソの美術による1920年の初演は大成功!以後、『プルチネッラ』は、バレエ・リュスの人気レパートリーとなる。いや、わかる!作曲から一世紀を経た今でも、その音楽は、思いの外、新鮮で、魅惑的。
そんな『プルチネッラ』(track.1-16)を、さらに活き活きと繰り出す、サロネン、ロンドン・シンフォニエッタ。近現代のスペシャリスト、サロネンらしい明晰さに、近現代専門アンサンブル、ロンドン・シンフォニエッタのエッジの利いたサウンドは、軽く、明るく、モダニズムの時代を強調しながら、バロックを脱しつつあったナポリ楽派の朗らかさを器用に引き込んで、ペルゴレージの時代をもヴィヴィットに響かせる!ストラヴィンスキーのモダニズムを触媒にして、より18世紀に迫り得ている興味深さ... どことなしにピリオド・アプローチを思わせる雰囲気があって、おもしろい。そこに、表情豊かな歌手たち、ケニー(ソプラノ)、アレー(テノール)、トムリンソン(バス)の3人が加わり、ペルゴレージのインテルメッゾを思わせる明朗さが広がり... 明朗なのだけれど、どこか切なげでもあって、楽しいはずなのに、胸に迫る... この甘辛感!ロココを思わせるのか?近代では割り切れない多面的な情感を拾い上げて、見事。いや、ストラヴィンスキーの音楽で、こんなにも心動かされるとは...
さて、このアルバム、『プルチネッラ』の後には、「ラグタイム」(track.17)、『狐』(track.18-29)、八重奏曲(track.30-32)が取り上げられるのだけれど、これがまた魅力的。『プルチネッラ』によって開かれた、ストラヴィンスキーの擬古典主義の時代の諸相(「ラグタイム」は、『プルチネッラ』の少し前になる... )を、ヴァラエティ豊かに捉え、どの作品も『プルチネッラ』同様、小さな規模から軽やかな音楽を展開し、活きの良い表情で楽しませる。それをまた、楽しげに奏でるサロネン、ロンドン・シンフォニエッタ。それぞれの作品の個性を、表情豊かに際立たせ... 飄々とした「ラグタイム」(track.17)に、歌手陣もいい味を醸しまくる『狐』(track.18-29)のチープさ、取り澄ましてどこかユーモラスな八重奏曲(track.30-32)と、サロネンの引き出しの多さを見せつけられるよう。しかし、ストラヴィンスキー、何て楽しいんだ!

STRAVINSKY: PULCINELLA/RAGTIME/RENARD/OCTET

ストラヴィンスキー : バレエ 『プルチネッラ』 ***
ストラヴィンスキー : 11の楽器のための 「ラグタイム」
ストラヴィンスキー : 歌と踊りによる道化芝居 『狐』 ****
ストラヴィンスキー : 八重奏曲 〔管楽器のための〕

イヴォンヌ・ケニー(ソプラノ) *
ジョン・アレー(テノール) *
ナイジェル・ロブソン(テノール) *
デイヴィッド・ウィルソン・ジョンソン(バリトン) *
ジョン・トムリンソン(バス) *
エサ・ペッカ・サロネン/ロンドン・シンフォニエッタ

SONY CLASSICAL/SK 45965




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パンセ

いつも楽しく拝読しています。

「プルチネッラ」の原曲は、現在はペルゴレージではなくドメニコ・ガッロ(Domenico Gallo、1730〜1768?)の作品ということが分かっています。
CPOから、Parnassi Musiciという団体が録音しています。
もしお持ちでなければ、ぜひお勧めいたします。
by パンセ (2016-05-31 21:05) 

carrelage_phonique

パンセさん、コメント、ありがとうございます。

そうそう、原曲の問題、悩ましいですよね。サロネン盤の解説によると、原曲の出典は全て明かされているとのこと... ですが、どれが誰のかを言及する資料を見たことがなくて... いや、凄く気になる!ガッロもそうですが、ヴァッセナール伯とか、モンツァとか、いろいろ...

そして、ガッロ、聴いてみたいです。で、cpoですか、さすがcpo!いや、それこそcpoとかで、『プルチネッラ』の原曲集とか出して欲しい!一度、原曲と付き合わせて、聴いてみたいです。



by carrelage_phonique (2016-05-31 23:59) 

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