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トロンボーン、アコーディオンで、サティ、増幅実験。 [2008]

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19世紀末、ロマン主義の、その先へと踏み出そうとする時代、近代音楽の萌芽が形成される中で、我が道をゆき、独特な音楽世界を築いたサティ... 20世紀、近代音楽の時代が到来しても、飄々と近代音楽をかわすようなところがあって、またそうすることで、思い掛けない先進性に至り、近代主義へのカウンターにも成り得たから、サティという存在は、おもしろい。で、そうして生まれた音楽は、その後の音楽に様々な影響を及ぼすことになる。まず、何と言ってもフランス6人組の存在があって、"ゲンダイオンガク"の異才、ケージもまたサティから影響を受けていて... さらには、クラシックの枠組みを越え、様々に広がりを見せたサティの精神=エスプリ。
ということで、サティの生誕150年のメモリアル、バレエピアノと聴いて来て、サティの影響を受け、サティから派生した興味深い音楽も聴いてみようかなと... スーパー・トロンボニストにして、作曲家でもある、マイク・スヴォボダが、時空を越えてサティと異色のコラヴォレーション?現代からのサティの翻案、"phonométrie"(WERGO/WER 6806)を聴く。

トロンボーンという楽器は、どこかユーモラスな印象がある。スライドが、びよーんと伸び縮みするあたり、何か生き物っぽい?一方で、そのサウンドは、スライドが象徴するように、縦横無尽でもあり、オーケストラを後ろから勇壮に盛り立てるばかりでない、様々な表情を紡ぎ出して、ただならない。が、そういうトロンボーンという楽器の特性は、なかなかスポットが当たり難いのも事実。だからだろうか、ソロとして活躍するトロンボーン奏者は、どこかひねたイメージを受ける?驚くべきテクニックを駆使して、ちょっとマニアックに、個性的な音楽を紡ぎ出す曲者が多いような... もちろん、レパートリーの問題も大きいだろうけれど... そうした部の悪さも含めて、普段、あまり注目されないトロンボーンという楽器に改めて焦点を合わせれば、ちょっと怪しげで、危険な臭いを漂わせ、魅惑的... というトロンボーンで、サティを鳴らしてみたら?というアルバム、"phonométrie"。
トロンボーンのマエストロにして、作曲家でもあるスヴォボダが、アコーディオンの鬼才、フッソングを招き、メッゾ・ソプラノのクリューガーのヴォーカルで織り成す、不思議な世界。それは、サティの『スポーツと気晴らし』が核となっているのだけれど、それだけには留まらず... 序曲と20曲からなるピアノのための小曲集、『スポーツと気晴らし』には、それぞれのナンバーに、サティによるユーモラスなコメントが寄せられていて、そこに目を付けたスヴォボダ... 20のスポーツと気晴らしについてのコメントに音楽を付けてしまい、『20のフランスの歌』として、『スポーツと気晴らし』に挿み込み、まるでサティとの対話を試みるかのよう。それでいて、オリジナルのピアノを、トロンボーンはもちろん、アコーディオンに、バレル・オルガン、さらにはトイ・ピアノ、メロディカまで用いるキテレツなアレンジで繰り広げるスヴォボダ... 一見、かわいい音色が並ぶようで、その「かわいい」に、グロテスクさも籠められるところがあり、飄々とした『スポーツと気晴らし』の表情が毒づいて聴こえて来るところも... いや、世紀末、オカルトに心酔したサティの仄暗さが引き込まれるようでもあり、どこか謎めき、時に呪術的?とはいえ、それは、コックリさん的スケール感... ダークで、チープ、何とも摩訶不思議なるスヴォボダ・ワールドに変換される。
さて、『スポーツと気晴らし』/『20のフランスの歌』は、前半の10セット(track.1-20)と、後半の10セット(track.36-54)に分けられ、その間に、やはりスヴォボダによってアレンジされたサティの歌曲集『潜水人形』(track.22-26)、最後から2番目の思想(track.27-29)、3つの恋愛詩(track.30)が取り上げられ、これがまた絶妙にいい味を醸す。そして、その前後には、バレル・オルガンによるスタディ、1番、「スピード」(track.21)と、トロンボーンとアコーディオンによる5つのカノン・スタディ(track.31-35)という、スヴォボダの作品が置かれ、いい具合にスパイスを効かせる。スヴォボダのトロンボーン奏者としての響きへの鋭敏な感性が、特殊な楽器の個性を鮮やかに引き出していて、その鮮やかさでもって、飄々と、人を食ったサティ的なる世界を鳴らし切り、おもしろい!で、それが、サティの音楽に共鳴し、聴く者を異次元へと誘うのか... いや、これこそがサティ・ワールドの到達点に思えて来る。ダークで、チープで、ユルめに、ポップ!サティの精神=エスプリを見事に増幅し、際立たせたのが、スヴォボダによるアルバム、"phonométrie"と言えるのかもしれない。
で、それを生み出した、スヴォボダのテクニックが、やっぱり凄い!特殊奏法も取り入れての、自由自在さ... それを支えるフッソングのアコーディオンも、また水際立っていて... 時に、スっ惚けて、気だるく、かと思えばキレまくっていて、恐るべきテクニックと、遊びと... キテレツも、この2人に掛かると、とんでもないものに仕上がって来る。そんな曲者2人を相手に、ヴォーカルのクリューガーも、摩訶不思議な世界を器用に歌い、絶妙に不思議ちゃんになり切って、色を添える。で、このヘンテコを極めた豊かな風景が、たった3人で描かれていることに驚かされる。サティも含め、強い個性が結集し、再創造される音楽というのは、普段のクラシックでは考えられないような、極めて魅惑的な存在感を放つ。

Erik Satie | Mike Svoboda Phonométrie

サティ+スヴォボダ : 『スポーツと気晴らし』/『20のフランスの歌』
スヴォボダ : スタディ No.1 「スピード」
サティ : 潜水人形
サティ : 最後から2番目の思想
サティ : 3つの恋愛詩
スヴォボダ : 5つのカノン・スタディ
サティ : グノシエンヌ 第1番

マイク・スヴォボダ(トロンボーン/メロディカ)
シュテッフェン・フッソング(アコーディオン/トイ・ピアノ/メロディカ)
アンネ・メイ・クリューガー(ヴォーカル/バレル・オルガン/トイ・ピアノ/メロディカ)

WERGO/WER 6806




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