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薔薇十字団に、課題に、気まぐれと... サティという宇宙。 [before 2005]

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サティの人生を見つめると、同時代の作曲家とは次元の違うグダグダ感が、かえって興味深かったりする。コンセルヴァトワールを卒業して(サティは授業に退屈して、中退... )、ローマ賞に四苦八苦して(ローマ賞とは程遠い酒場でシャンソンの伴奏... )、劇場でキャリアを積み(オカルティックな薔薇十字団に参加し、その聖歌隊長を務める... )、やがて母校で教え(教える側の年齢になってから、改めてスコラ・カントルムで学び直す... )、大家となる(サブカル路線から、コクトーによりメインストリームに引っ張り出され、楽壇を騒がす!)。という、王道などあり得ないサティの人生。それを物語る、あの飄々とした音楽があって、王道に捉われなかったからこそ、伝統の束縛をすり抜けて、驚くべき先進性へと至った事実。音楽史におけるサティという存在は、実はただならない。異端児、変わり者、という安易なイメージでは捉え切れないスケール感があるような気がする。
そんなサティを、丸々、捉えてしまう、壮大なる5枚組!聴き切れるのか?と心配になりつつも、意外と聴けてしまう... フランスを代表するピアニストのひとり、ジャン・イヴ・ティボーデによる、サティのピアノ作品全集(DECCA/473 620-2)を聴く。

さすがは、ティボーデ。クリアなタッチに、さり気ないウィットを乗せて... 現代的な感覚と、ティボーデならではのラグジュアリー感が、時にヘンテコなサティを、ヘンテコに留めない。一音一音から、丁寧にポエジーをすくい上げて生まれる、やわらかな空気感は、そのまま空気になってしまいそうな、何とも言えぬ心地良さを漂わせる。それでいて、時折、はっとさせられるような、クラシック離れしたサティのセンスを、卒なく際立たせる。サティのシンプルな音楽が、ナチュラルに、より豊かに、繰り広げられて、そのシンプルさに籠められた間に、宇宙を見出すようなところも... いや、名曲集ではなく、全曲集なればこその感覚かもしれない。そこには、全曲を捉えてこそ、初めて感じられるサティのスケール感というものが間違いなくあって、エキセントリックなタイトルや、有名所に囚われずに、全てを捉えて浮かび上がるサティの真実が、何だか壮大(もちろん、ティボーデなので、お洒落感は失わず... )。で、そうしたあたりを特に感じるのが、薔薇十字団のために書いた音楽の数々...
サティのピアノ作品を全て網羅するこの5枚組には、初期作品(disc.1, track.1-6)に始まって、カフェ・コンセール(19世紀後半からパリで人気を博した、ちょっとしたショウやコンサートを楽しめるカフェ... )とミュージック・ホールのための音楽(disc.2, track.26-33)、スコラ・カントルムでの課題(disc.3, track.1-28)、こども用(disc.3, track.29-43)、劇伴用(disc.5)などのカテゴリーが設けられ、サティの全容を解り易く展開。ま、気まぐれ(disc.4)というのもあるのだけれど... これもまた、サティを象徴するカテゴリーか... そうした中で、最も興味深いのが、薔薇十字団のために書かれた音楽(disc.2, track.4-25)。普段、あまり省みられることの無いサティのオカルトへの心酔。象徴主義の時代、オカルト・ブームが背景にあったとはいえ、何とも怪しげ。一方で、そういう怪しげな世界のための音楽に触れることができるというのは、なかなか刺激的。で、いつものサティのイメージからは外れる神妙なサウンドが新鮮。音楽のシンプルさはサティそのものであっても、音と音の間が創り出す広がりに、ただならなさが漂い、思い掛けない深淵に出くわして、ちょっと慄きすら覚えてしまう。薔薇十字団云々はさて置き、そこに響くサウンドには、サティが思い描く宇宙が見えるようで、惹き込まれる。
もうひとつ興味深いのが、スコラ・カントルムでの課題(disc.3, track.1-28)。てか、課題?!いや、習作というならわかるのだけれど... コンセルヴァトワールを中退していたサティは、1904年、38歳となってからスコラ・カントルムに入学し、音楽を学び直す(今度はきちんと卒業を果たす!)。で、そこでの課題というから、おもしろい。習作と言えるほど、音楽に対してウブでもなく、とはいえ、学生として課題をこなさなくてはいけない制約があり、実に奇妙な創作がそこに生まれることに... そんな、課題、パッサカーユ(disc.3, track.1)や、12の小コラール(disc.3, track.15-26)など、課題らしいタイトルがまず目に留まり、その音楽も課題らしく、ちょっぴり気難しく対位法を繰り出して、バッハ風なところがあったり、サティらしからぬ雰囲気が新鮮。いや、どこか人を食ったような学生風に、実はギャグなのでは?と思えなくもなく... 薔薇十字団のために書かれた音楽(disc.2, track.4-25)もそうだけれど、真面目なサティには、狐に抓まれた思いもして、何だか楽しい。
それにしても、5枚組。ユルめなサティを聴き続けると飽きてしまうのでは?なんても思うのだけれど、サティの人生を巧みに追うティボーデ、その丁寧なカテゴライズが活きて、普段のイメージでは測れない、サティ・ワールドの広がりに惹き込まれてしまう。もちろん、ジムノペディ(disc.1, track.4-6)や、グノシエンヌ(disc.1, track.7-13)も魅力的... ティボーデによる瑞々しいタッチが捉えるサティの名曲の数々は、適度なポエジーが絶妙で、改めて魅了されずにいられない。

Satie: The Complete Piano Music
Jean-Yves Thibaudet


サティ : ピアノ作品全集ということで、曲名は省略します。書き切れない!

ジャン・イヴ・ティボーデ(ピアノ)

DECCA/473 620-2




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