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「春」の情景を丁寧に歌い紡いで、ブリテン、春の交響曲。 [before 2005]

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桜が散ったら、寒くなった... 雪、降った... という、この春、何か調子が狂う。三寒四温とは言うけれど、ちょっと寒が戻り過ぎじゃない?けど、春の歩みは着実なようでして、ふらっと散歩に出ると、木々の芽吹きが何とも言えず初々しく。しとしとと続く、春の雨は、新たな生命を吹き込むのだなと。それにしても、新芽の緑の瑞々しさに目が奪われる!生まれたての葉緑体のピュアな色なのだろうか?薄緑に、黄緑に、まさに萌黄色の、まだ濃さを増さない緑の多彩さには、花をも凌ぐ輝きがあるような... いや、あらゆるものが真新しく生まれ変わる"春"って、やっぱり凄い。ということで、そんな春を活写する音楽、「春の歩み」から、春の交響曲へ!
ジョン・エリオット・ガーディナーの指揮、フィルハーモニア管弦楽団の演奏、モンテヴェルディ合唱団、ソールズベリー大聖堂少年少女聖歌隊のコーラス、アリソン・ハーグリー(ソプラノ)、キャサリン・ロビン(アルト)、ジョン・マーク・エインズリー(テノール)という、チーム・グレート・ブリテンによる、ブリテンの春の交響曲(Deutsche Grammophon/453 433-2)を聴く。

第二次大戦後、間もなく、1948年に作曲され、翌年に初演された春の交響曲(track.1-12)。戦後「前衛」が幕を開けようという頃... だけれど、どこ吹く風とマイペースを貫く、ブリテンらしい瑞々しくキャッチーな魅力に溢れた音楽が、春の様々な情景を描き出す。しかし、交響曲も来るところまで来たという印象を受ける。「歌」を引き込んだ第九(1824)が、交響曲の転機だったと考えるならば、この春の交響曲はその到達点かもしれない。もはや、ここで聴く交響曲は、オラトリオ!ただ、一貫する台本は無く、ルネサンス期の作者不詳の詩から、エドマンド・スペンサー(エリザベス1世の時代に活躍した... )、ジョン・ミルトン(かの『失楽園』の... 17世紀、イギリス共和国時代に活躍した... )、ウィリアム・ブレイク(18世紀から19世紀に掛けて、画家としても活躍したヴィジョナリー、象徴主義の先駆... )、W.H.オーデン(やがてイギリスを去り、アメリカに移住する20世紀を代表する詩人のひとり... )まで、英国文学の輝かしいカタログから春の詩を選び出し、ソロ、コーラスを巧みに用いて、特異な「歌」の交響曲が編まれる。そこには、いわゆる「交響曲」という形がまったく残っていない。
春よ、やさしい春よ(track.3)では、ソリストたちが鳥となり(鳴き声がまた見事!で、愛らしい... )、続く、馬車に乗る少年(track.4)では、こどもたちの合唱も繰り出して、口笛まで吹かせる。表現に対するブリテンの貪欲さが、「交響曲」の概念を極限まで押し広げ、広げて生まれる多彩さが、息衝く春の様々な表情となって、わっとひとつの音楽の中に飛び込んで来る。そうして春のヴィジョンがシンフォニックに織り成され、まさに春の交響曲となるのか、突拍子も無いようで、的を射るブリテンの妙... また、英語でキャッチーなメロディーを捉えると、どこかミュージカルの雰囲気が漂い、それが春の砕けた雰囲気にも共鳴して、ちょっと他には探せない、不思議な感触をもたらすのか。アカデミズムにこだわらない体裁が、突き抜けた瑞々しさを生み、何か、春を撮らえた映像のコラージュを見るよう。けして花々しいばかりでない、三寒四温もつぶさに見つめ、春の仄暗さ、肌寒さも響かせつつ、やがて、春の盛りをポリフォニックに歌い上げる、第4部、フィナーレ、ロンドンよ、お前にあげよう(track.12)へ... 春の豊かなイメージを丁寧に歌い紡いで、大いに魅了されてしまう。いや、戦後「前衛」のエリート主義に染まらずとも、際立った表現を成し得ていることが凄い。イギリス音楽の周縁性がもたらす魔法だなと...
そんな春の交響曲の後には、無伴奏合唱のための聖チェチーリア賛歌(track.13-15)と、5つの花の歌(track.16-20)が歌われる。で、これがまた瑞々しい!より「歌」がクローズアップされるア・カペラ作品は、ブリテンの音楽のメロディアスさ、ヴィヴィットさをさらに強調して、春の交響曲とはまた一味違うインパクトを放つ。そこには、U.K.ロック、U.K.ポップへとつながるだろうセンスを見出し、まさにブリテン... 保守性が強調される作曲家ではあるけれど、そのセンス、実はより現代的な気がする。場合によっては、戦後「前衛」の尖がった音楽の方が古臭く感じるような気もするから、おもしろい。21世紀となり、20世紀を冷静に俯瞰できるようになった、今、ブリテンの音楽は、時代感を超越する新鮮な魅力を発し始めているのかも。
さて、この新鮮なブリテン像を確信を以って繰り出すのが、チーム・グレート・ブリテン!イギリスを代表するピリオドの巨匠、ガーディナーを筆頭に、イギリスの面々(唯一、メッゾ・ソプラノのロビンがカナダ人... けど、英連邦の内ということで... )が結集してのブリテン作品、その歌声、演奏には、本場の自負が漲っている!表情に富み、力強く、それでいて、ガーディナーらしいクリアなアプローチから、内から光るような音楽が広がる。そして、印象に残るのは、主役とも言える、コーラス!モンテヴェルディ合唱団の揺ぎ無い存在感と、瑞々しい歌声は、まさに春そのもの。そこに色を添えるソールズベリー大聖堂少年少女聖歌隊の、こどもらしい明るさ!そう、春ってこんな感じ!という気分に充ち満ちている!

BRITTEN: SPRING SYMPHONY, etc.
PHILHARMONIA ORCHESTRA/JOHN ELIOT GARDINER, etc.


ブリテン : 春の交響曲 Op.44 *****
ブリテン : 聖チェチーリア賛歌 Op.27
ブリテン : 5つの春の歌 Op.47

アリソン・ハーグリー(ソプラノ) *
キャサリン・ロビン(アルト) *
ジョン・マーク・エインズリー(テノール) *
モンテヴェルディ合唱団
ソールズベリー大聖堂少年少女聖歌隊 *
ジョン・エリオット・ガーディナー/フィルハーモニア管弦楽団 *

Deutsche Grammophon/453 433-2





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