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1713年、ロンドン。順風満帆、若きヘンデルのオペラ、『テーゼオ』。 [before 2005]

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1763年の次は、1713年... 今から、300年前...
16世紀、ルネサンス末期、モノディの発明と、それを切っ掛けとしたオペラの誕生に始まるバロックの音楽が、17世紀、じっくりと成長し、やがて華麗な花を咲き誇らせる!18世紀に突入してからの"バロック"は、音楽史上、かつてないほどの華やかな瞬間を迎えようとしていた。そんな、バロックの爛熟期の始まりの頃、1713年。お馴染みのバロックの巨匠たちが、当時の音楽シーンに、その存在感を見せ始める。28歳となるバッハ(1685-1750)は、ヴァイマルの宮廷でオルガニストをしながら堅実な家庭(1707年にマリア・バルバラと結婚、1710年にヴィルヘルム・フリーデマンが生まれる... )を築き、同い年のヘンデル(1685-1759)は、ロンドンで人気オペラ作曲家として活躍し始め、オペラの都、ヴェネツィアで教師をしていたヴィヴァルディは、35歳にして、とうとうオペラの世界へと足を踏み入れる。一方、前回、取り上げたラモー(1683-1764)は、30歳... 父が務めていたディジョンの大聖堂のオルガニストの職を引き継ぐも、パリで名声を得るのはまだ先の話し。
ということで、一歩先んじて成功していた、ヘンデルの1713年をキャッチ・アップ!マルク・ミンコフスキ率いる、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの演奏で、ロンドン、ヘイマーケットのクイーンズ劇場で初演された、ヘンデルのオペラ『テーゼオ』(ERATO/2292-45806-2)を聴く。

凄い人というのは、下積みなんてものは必要ない... のか?で、その凄い人、ヘンデル。1713年、ロンドン、『テーゼオ』の初演に至るまでのキャリアの、見事なまでの登りっぷりに驚かされる!1703年、18歳で、北ドイツ、最大の音楽都市、ハンブルクへと出て、ゲンゼマルクト劇場(1678年開場、ヴェネツィアに続いての、ヨーロッパで2番目の公開のオペラハウスを持った都市、ハンブルクのオペラの中心... )のヴァイオリン奏者として仕事を始め、さらに通奏低音のチェンバロ奏者となり、実地でオペラを吸収。1705年、20歳を迎える少し前に、劇場を取り仕切る、首席作曲家、カイザー(1674-1739)に抜擢され、『アルミーラ』を作曲。早速、成功してしまう。で、ハンブルクの外でも忙しくしていたカイザーの留守居役を務め、さらに3つのオペラを作曲する。が、カイザーが帰って来ると、当然ながら活躍の場は減ってしまう。ならばと、キャリア・アップを狙い、1706年、イタリア遊学へ。ヘンデルは、音楽の先進地域、イタリアでも瞬く間に注目の存在に。ドイツへの帰国の際には、当時、ヨーロッパ最大のオペラ都市、ヴェネツィアに立ちより、『アグリッピーナ』(1709)を作曲。またしても大成功させる。これにより、ヘンデルの名声はヨーロッパ中に知れ渡ることとなり、1710年、25歳にして、ハノーファー選帝侯の宮廷楽長に就任。するものの、そのまま国際音楽都市、ロンドンへと渡り、1711年、『リナルド』を作曲して、大成功!ハノーファーでの職務をほっぽり出し、ロンドンに拠点を置いて、1713年、『テーゼオ』を初演するに至る。
何だか、呆れるくらいに順風満帆。けど、『テーゼオ』の美しい音楽を聴けば、納得。リュリのために書かれたキノーによる台本の、イタリア語訳を用いて作曲されたオペラということで、フランス・オペラの雰囲気も漂わせつつ、本場イタリア仕込みの音楽を巧みに繰り広げ... この、フランスとイタリアのバランスが、絶妙。またそうしたあたりが、『テーゼオ』に、ひとつのスタイルに囚われない、ニュートラルな魅力を与えていて、イタリアの鮮烈さに、フランスの秀麗さが重なり、より魅惑的。そして、その魅惑的なあたりに、やがて確立される「ヘンデル」というスタイルが見えるよう。また、イタリアの商業オペラとは違う、文学志向の強いフランスの宮廷オペラの台本が見せる展開は、型通りではなく。それによって、印象的にレチタティーヴォ・アッコンパニャートが挿まれ、より濃密にシーンを描き出し、二重唱も多く、よりドラマに推進力を与えていて、さらには、コーラスがドラマに迫力を添える。そこに、ヘンデルがローマで聴かせたような、激しく、鮮やかなアリアが物語を盛り上げ... 特に、メデアが歌うアリアは、バロックならではの魔女キャラを際立たせる力強さがあり、5幕、冒頭の、嫉妬に狂って歌うアリア(disc.2, track.24)などは、グルックの疾風怒濤を思わせるところが興味深く、何より圧倒的。ドラマを重視するフランスの台本が、イタリア流の熱っぽい音楽によってより活かされ、その音楽の熱っぽさも、フランスの台本があってこそより息衝くおもしろさ!若きドイツ人の作曲家が、ロンドンの音楽ファンを熱狂させた、フランス・オペラの台本で、イタリア・オペラを上演するという無国籍感... このボーダーレスな感覚が、今にも通じるようで、クール!
という『テーゼオ』を、創意溢れる演奏で、よりヴィジュアライズして、楽しませてくれる、ミンコフスキ+レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル。まず、序曲のすぐ後で、進軍の太鼓を背景に鳴らしながらのレチタティーヴォ(disc.1, track.2)は、戦場の緊迫感を醸し、ミンコフスキらしいケレンを効かせる。そこに、力強く表情豊かな音楽を繰り出すレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの見事な演奏!自信に充ちた一音一音のパワフルさは、若きヘンデルの才気溢れる音楽をスパークさせて、バロックならではのスペクタクル(戦争と恋と魔法の!)を、現代人の耳にもすっかり楽しませてくれる。で、忘れてならないのが、粒揃いの歌手たち!1992年の録音ということで、90年代を彩ったピリオド系の歌手たちとなるわけだが、バロック・オペラの上演が本格化した頃とはいえ、どの歌手も今に劣らない見事な歌を披露していて。メデアを歌うジョーンズ(メッゾ・ソプラノ)の美しくも迫力のある歌声、テーゼオを歌うジェイムズ(メッゾ・ソプラノ)の英雄らしいポジティヴな歌声、エジェオを歌うレイギン(カウンターテナー)の鮮やかに決まるコロラトゥーラなど、みなすばらしく、聴き入ってしまう。

HANDEL
TESEO
MARC MINKOWSKI

ヘンデル : オペラ 『テーゼオ』

テーゼオ : エイリアン・ジェイムズ(メッゾ・ソプラノ)
メデア : デッラ・ジョーンズ(メッゾ・ソプラノ)
アジレア : ジュリア・グッディング(ソプラノ)
エジェオ : デレク・リー・レイギン(カウンターテナー)
クリツィア : カトリーヌ・ナポリ(ソプラノ)
アルカーネ : ジェフリー・ガル(カウンターテナー)

マルク・ミンコフスキ/レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル

ERATO/2292-45806-2




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