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クラシック、ディヴァージョンズ、ブリテン... [2008]

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ピアノ、弦楽四重奏と弦楽オーケストラのための「若きアポロ」、ピアノ協奏曲、左手ピアノとオーケストラのためのディヴァージョンズ... ブリテンがピアノのために書いた協奏曲、ないし協奏的作品が、この3作品。けして、よく取り上げられる作品とは言い難いのだけれど、録音に関しては無くはない?ただ、どれもアルバムのカップリング曲的な位置付けなのか、地味。しかし、どの作品も魅力的なものばかりで... ブリテンらしく、モダニズムが尖がるようなことはなく、伝統を踏まえ、それを現代(ブリテンが生きた時代としての... )に、如何にして瑞々しく響かせるかがセンス良く追及されていて、素敵なのだけれど... メインで扱われることがないもどかしさ...
というところに、注目のリリース!イラン・ヴォルコフ率いる、BBCスコティッシュ交響楽団の演奏、イギリスの俊英、スティーヴン・オズボーンのピアノで、ブリテンによるピアノとオーケストラのための3作品をまとめたアルバム(hyperion/CDA 67625)を聴く。

ブリテンの音楽というのは、どこか垢抜けた雰囲気がある。そういう言い方がベストかどうか悩むところでもあるのだけれど、クラシックにしては、独特なライトさがあるような... かと言って、ライト・ミュージック的なものになるわけでなく、20世紀の音楽ならではのヘヴィーな感覚もしっかりある。が、そのヘヴィーさには、アカデミックな気分よりも、より感覚的なものが強く押し出され、トータルで、現代的なセンスにとてもフィットするように思える。そうしたところに、ルネサンスからビートルズに至る、耳に心地良いキャッチーさ、イギリスの音楽DNAを意識させられる。で、そうしたものが特に聴けるのが、ピアノとオーケストラのための作品のように感じる。2曲目、ブリテン、26歳の作品、「若きアポロ」(track.6)の、ヴィヴィットなセンスは、完全にクラシックっぽさを凌駕している。ピアノと弦楽四重奏という組み合わせは奇抜だが、ピアノのキラキラとしたサウンドと、弦楽四重奏の鮮烈さが生み出すハーモニーは、まさに「若き... 」勢いと、フレッシュさではち切れんばかり。それが、弦楽オーケストラで補強され、より力強さを増すと、ロックにでも接近していくような求心力が生まれて、カッコ良過ぎ!
一転、3曲目のディヴァージョンズ(track.7-19)は、しっとりとした風合を見せ... 第1次大戦で右手を失ったピアニスト、パウル・ヴィトゲンシュタインの委嘱による、左手のための作品なのだけれど、左手だけで奏でられるピアノは、当然、メロディーよりも和音に重心が置かれ、ヴィルトゥオージティ溢れる伝統的なコンチェルトの在り方とは一線を画す音楽が紡がれてゆく。それは、ピアノのトーンそのものがクローズアップされる音楽というのか、印象主義をより印象的に展開して、美しい色を楽しむ... で、フランスの印象主義が油彩なら、イギリスの印象主義は水彩とでも言おうか、より繊細で瑞々しさを放っていて、それは、どこか、ニュー・エイジっぽい?そんなセンスをも漂わせ、ステレオタイプなピアノ・コンチェルトでは味わえない、クールな響きに惹き込まれる。ヴィトゲンシュタインが、残された左手のために作品を委嘱した作曲家は、錚々たる面々... また、それぞれに個性的な作品が生み出され、ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲に至っては、傑作であるわけだが、当のヴィトゲンシュタインは、ブリテンのディヴァージョンズが最も優れていた... と語っていたらしい。なかなか興味深いコメント... いや、ラヴェルに隠れて、ブリテンの瑞々しさが、あまり認知されていないのは極めて残念なこと。
そこから、1曲目に戻るのだけれど、ピアノ協奏曲(track.1-4)。1938年の作品というから、時代は完全にモダニズムの中にあったわけだが、そういう潮流に乗らないのがブリテン流... というより、イギリス特有の、ドーバー海峡越しに聴こえる大陸の先鋭的な音楽への懐疑的な姿勢とでも言うのか、我が道をゆく屈託の無い音楽は、かえって時代を突き抜けていて... 海の向こうでは、いくらでも尖がったピアノ協奏曲はあっただろう。いや、ピアノ協奏曲というもの自体が、もう古いスタイルとなっていたか... それでも、どこ吹く風と、響かせたい音楽を響かせる。このブレない姿勢が独特の輝きを今にもたらしているからおもしろい。映画音楽を思わせるヴィヴィットさ、ダイナミックさ、キャッチーさに包まれて、ロマンティックで、軽快で、粋で、表情に富んだピアノ協奏曲を繰り広げる。そうした中、興味深いのが、改訂以前の初版における3楽章(track.5)が取り上げられること... その幾分、保守的な在り様に、ブリテンも時代の潮流というものを意識していたことを垣間見る。
そんな、ブリテンのピアノとオーケストラのための3作品を、"メイン"で取り上げたオズホーン!そこには、揺ぎ無い共感があるのだろう... 力強さを兼ね備えたクリアなタッチは雄弁で、1曲目、ピアノ協奏曲(track.1-4)から冴え渡る。1楽章の快活な気分をしっかり捉え、オーケストラと絶妙なやり取りを聴かせれば、リズミックに音楽は爆ぜる。となれば、ブリテンの音楽は輝くばかり。古き良き時代を懐古するゴージャスさに、時折、漂う、チープ感... さらにはシニカルな気分も入り混じり、いい意味でドラァグ。そうした、作品の旨味の部分を、ヴィヴィットに膨らませて、見得を切るかのよう。一転、「若きアポロ」(track.6)では、アンサンブル、オーケストラ、一丸となって、爽快に疾走していくのが心地良く。ディヴァージョンズ(track.7)では、その瑞々しさを波紋のように広げてみせて、ヴォルコフ+BBCスコティッシュ響のすばらしい演奏も相俟って、ブリテン・サウンドの、時代を先取るようなクールなセンスを強くアピールして来る。

BRITTEN  PIANO CONCERTO ・ DIVERSIONS ・ YOUNG APOLLO STEVEN OSBORNE ・ BBC SCOTTISH SYMPHONY ORCHESTRA / ILAN VOLKOV

ブリテン : ピアノ協奏曲 ニ長調 Op.13 〔1945年版〕
ブリテン : ピアノ協奏曲 ニ長調 Op.13 〔原典版〕 より 第3楽章 レチタティーヴォ と アリア
ブリテン : ヤング・アポロ Op.16 〔ピアノ、弦楽四重奏と弦楽オーケストラのための〕
ブリテン : ディヴァージョンズ Op.21 〔左手ピアノとオーケストラのための〕

スティーヴン・オズボーン(ピアノ)
イラン・ヴォルコフ/BBCスコティッシュ交響楽団

hyperion/CDA 67625




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