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作曲家で指揮者。というスタイル... [2006]

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近頃、気になるのが、作曲家で指揮者というスタイル。
かつては、作曲家=指揮者であったわけだが、次第に分業化されていった作曲家と指揮者という職業。けれども、ここにきて、何となく、かつての形がリヴァイヴァルしてきているような... で、そんな大御所が、ピエール・ブーレーズなのだけれど、今では、著名指揮者が、実は作曲家でもあった... とか、作曲家が、自作のみならず指揮台にも積極的に立っている... とか、いろいろなパターンがあって。それぞれにスタンスは違うのだろうけれど、こうした気運、大いに歓迎したところ。20世紀、「指揮者」の存在は、少し大きくなり過ぎたのかもしれない。が、そういう「指揮者」のイメージは、一時代を築いた伝説のマエストロたちの死とともに崩れ始め、今では、よりフレキシブルで、よりニュートラルな人物が、指揮台に立ち、オーケストラと向き合い、対話することで、新たな音楽が紡ぎ出されているのか... そうした中で、作曲家による指揮というのが、また独特な感覚をもたらしているように感じる。それは、指揮をするというより、改めて作曲されてゆくような、不思議な真新しさを見出すことがある。作曲家の指揮と、専業指揮者の指揮、この聴き応えの違いは、ライヴにしろ、ディスクにしろ、いつも、興味深い。
さて、そんな作曲家で指揮者のひとり... ハンガリー出身の気鋭の作曲家、ペーテル・エトヴェシュの指揮による、ストラヴィンスキー... ユース・オーケストラ、ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニーを指揮してのバレエ『春の祭典』と、首席客演指揮者を務めているイェーテボリ交響楽団とのオペラ『マヴラ』を収録した興味深いアルバム(BMC/BMC CD 118)を聴く。

何となく、エトヴェシュという名前が視野に入ってくることが多くなっているような気がして... 作曲家というだけでなく、指揮者としても... そうしたところに、『春の祭典』(track.1-14)。まさに、試金石的だ。で、指揮者、エトヴェシュは、どんなものだろう?と、ちょっと、興味本位で手に取ってみたのだけれど... 不思議?20世紀、モダニズムの結晶とも言えるこの作品のカッコ良さからは、少し距離を取る演奏なのか。派手にバーバリスティックに鳴らすでもなく、モダニスティックなあたりを鋭利に展開するでもない、少し掴みどころに困る『春の祭典』。いや、『春の祭典』だからといって、下手に気負うことのない、さっくりとした仕上がり?これまで聴いた『春の祭典』とは、一味違う、近代音楽のエポックメイキング、伝説の作品としてではなく、作品に描き込められた情緒?のようなものをそっとすくい上げ、何気にポップで、ミステリアス。エトヴェシュの作曲家としての視点が、スコアを読み込むというより、改めて作曲し直すような、奇妙な感触を得るようで、不思議...
でもって、ユース・オーケストラ、ユンゲ・ドイチェ・フィルの演奏。「ユース」となると、若さ漲るハイ・テンションで、熱っぽい演奏になるのかな?などと、勝手に予想(期待も)してみるも、仕上がったサウンドは、青臭くも無く(そんな青春の1ページも、ユースの魅力なのだが... )、もちろん熟練のサウンドでもない。想像していた位置に、存在しない不思議なサウンド。ちょっと、異次元なイメージ?いや、現代っ子なイメージなのか?パワフルなところはパワフルだし、迫力に欠けることなど、一切ないのだけれど、明らかに何かが違う。不思議な感覚。
エトヴェシュに率いられたユース・パワーは、プロよりも丁寧... 近頃のユース・オーケストラは、どこも、驚くほどクウォリティが高い。しっかりと練習を重ねてきたその演奏は、プロよりも密度が高かったりする。何より、擦れていない。積み重ねられた伝統、経験、そして熟練が尊ばれるクラシックなわけだが、若いってのも、すばらしい!?プロでは行き着けない場所で、祭典を繰り広げてしまうエトヴェシュ+ユンゲ・ドイチェ・フィル。作品の内側に入り込んで、複雑に行きかう音の数々を交通整理し、全ての渋滞を解消し得た『春の祭典』。これまでは、渋滞(こそ)が魅力だったようにも思うのだが、エトヴェシュの魔法のような交通整理で、高機能ユース・オーケストラが奏でた祭典は、ポップで、ミステリアスさが匂い立ち、奇妙にも近代主義の外に置かれて、象徴主義や印象主義の作品を聴くような、絵画的?文学的?な色合いを見せるのか... その意外な可能性に触れ、驚かされる。
さて、バレエ『春の祭典』の後で、極めて貴重なストラヴィンスキーのオペラ『マヴラ』(track.15)を聴くことができるのが、このアルバムのもうひとつの楽しみ!とにかく、ストラヴィンスキーの劇場作品で、この作品だけが未体験。ライヴなどはあり得なく、CDだってそうない... となれば、駄作だろうが何だろうが、一度は聴いてみたかった。のだけれど... えっ?!こんなにも、おもしろい?『エディプス』に比べればソフトで、『放蕩息子の成り行き』に比べれば、ロシアのフォークロワをベースに、ポジティヴな大衆性を出し、B級感が絶妙にいい味を醸し出す。『狐』、『兵士の物語』あたりとのカップリングで、もっとリリースされていていいオペラじゃない?
それにしても、『春の祭典』からは一転の、ユル・ポップな20世紀ブッファ... あっさりと空気を切り替えてくるエトヴェシュの柔軟性に驚かされる。硬派なのか?軟派なのか?器用であることは間違いないとは思うのだけれど、エトヴェシュの一筋縄ではない音楽性に、俄然、興味が湧く。

EÖTVÖS CONDUCTS STRAVINSKY LE SACRE DU PRINTEMPS, MAVRA

ストラヴィンスキー : バレエ 『春の祭典』

ペーテル・エトヴェシュ/ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー

ストラヴィンスキー : オペラ 『マヴラ』

パラーシャ : マリア・フォントシュ(ソプラノ)
母さん : リュドミラ・シェムチュク(メッゾ・ソプラノ)
お隣さん : リリ・パーシキヴィ(メッゾ・ソプラノ)
騎兵 : ヴァレリー・ゼルキン(テノール)

ペーテル・エトヴェシュ/イェーテボリ交響楽団

Budapest Music Center/BMC CD 118




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