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テレマン、独奏フルートが奏でる夢幻、12のファンタジー... [before 2005]

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テレマン、没後250年ということで、テレマンをいろいろ聴いております、今月... いや、改めて、テレマンと向き合ってみると、思いの外、興味深い!もちろん、これまでも、テレマンは十分におもしろいと思って来たのだけれど、今一度、集中して聴いてみると、この作曲家の際だったセンスに魅了されるばかり!それは、とても感覚的なもので、バッハのイメージが強いドイツ・バロックからすると、異端にすら感じられるのかも... しかし、様々な表情を持つテレマンの音楽からは、当時のドイツの音楽の実態が活き活きと浮かび上がって来て、ワクワクさせられる。国民楽派を先取りするようなフォークロワからの影響や、ドラマティックなイタリア、お洒落なフランスをも意識して、極めてフレキシブルに音楽を展開できてしまうテレマン。まさに感覚的なればこその音楽... そんなテレマンと並べれば、バッハの音楽はロジカルの極み、ちょっと異様にすら感じられてしまう?
ということで、パリ四重奏曲集に続いての、有田正広のフラウト・トラヴェルソ、テレマンの無伴奏フルートのための12のファンタジー(DENON/COCO-6685)。いや、この"ファンタジー"というあたりが、さらにさらにテレマンの際だったセンスを解き放つ!

夜、笛を吹くと、幽霊が出る。なんて言うけれど、まんざらじゃないなと思った、テレマンの無伴奏フルートのための12のファンタジー... 1番、まるで鳥がさえずるように、即興的にフルートが歌い出すその始まりの、何と魔法的な雰囲気!まるで、解き放たれたように、自由に奏でられる冒頭のトッカータは、妖精が宙を舞うかのよう... いや、まさに"ファンタジー"だと思う。こんな音楽が、夜のしじまに響けば、きっとあやかしたちが集まって来るに違いない。そんなイメージを喚起させてしまう有田のフラウト・トラヴェルソ!美しく、儚げで、幻想的でありながら、見事なテクニックに裏付けられ、圧倒的な存在感を示す。このマエストロらしい端正さ、品の良さに惹き込まれながらも、ふわっと残る残響には、幽玄さが漂い、水墨画の世界に迷い込んだかのよう。いや、幽霊画だろうか?フルートという、極めて西洋的な楽器を用い、テレマンという、ドイツ・バロックの巨匠の音楽を吹きながら、足の無い日本の幽霊を出現させてしまう、そういう情緒を紡ぎ出す、有田のフラウト・トラヴェルソ... ヨーロッパの音楽ながら、東アジア的な陰翳が滲み出し、たった1本のフルートが奏でる音楽に、底が見えないような奥深さを生み出す。そして、その奥深い向こうの闇に吸い込まれそうになる。美しさを研ぎ澄ませて見せる闇... 魔笛とでも言おうか、楚々と美しさを見せながら、笛のスピリチュアルな性質を雄弁に引き出して、この世のものとは思えない佇まいを創り出す。何か、凄味すら感じさせる、全12曲のファンタジー。魅入られるように一気に聴いてしまった。
テレマンの音楽というのは、カエルが鳴いたり、カラスが鳴いたり、その他、いろいろ、ギミックなところが多い。それは、聴き手への溢れんばかりのサービス精神というのか、バッハじゃあり得ないようなことを、嬉々として繰り出して来る。だから、テレマンの音楽はいつも楽しい!のだけれど、無伴奏フルートのための12のファンタジーは、そういう楽しさが、まったく入り込める隙が無い。無伴奏のフルートという、逃げ場の無いところに、12曲もの幻想曲を織り成してしまうという、テレマンの無謀!ヴァイオリンのように重音が出せるわけでなく、とにかく、ひとつの旋律線を、延々と吹き続けることになるわけで... 普通なら、もたないように思う。が、もたせてしまう。それどころか、際限を知らない"ファンタジー"が次々に登場!で、12曲、ひとつとして似たようなものは無く、自由を極めて、様々なフルート独奏の在り様を切り出して来る。テレマンの、より感覚的な感性が炸裂する、無伴奏フルートのための12のファンタジー... そこには、ロジカルなバッハでは到達し得ない境地が広がり、それはまた、近代音楽に通じるスリリングさを放ち、場合によっては、バロックの音楽であることを忘れてしまう瞬間も... しかし、そうあることが、ちょっとギミックにも思えたり... 音楽の究極を提示しながら、その究極に仕掛けがありそう?なんて思わせるのが、テレマンらしさか... 美しい"ファンタジー"は、テレマンのイリュージョンなのかもしれない。
という、無伴奏フルートのための12のファンタジーは、1720年代に作曲されただろうと考えられている。で、1720年代というのは、バッハの無伴奏チェロ組曲や、無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータが作曲された頃でもあって... そんな風にドイツ・バロックを俯瞰してみると、ちょっと慄いてしまう。華やかなばかりがバロックではなく、ストイックさを極めた先に、恐ろしく深く、広い音楽世界が見出されていたわけだ。この感覚、どこか、あの世とつながっていそうな、ある種の交霊術のような、そういう不思議さを感じずにはいられない。夜、笛を吹くと、幽霊が出る。笛ばかりでなく、ドイツ・バロックには、何か、スピリチュアルなパワーがありそう?いや、音楽とは、本来、そういうものだったのかもしれない。

テレマン : 無伴奏フルートのための12のファンタジー●有田正広

テレマン : 無伴奏フルートのための12のファンタジー

有田正広(フラウト・トラヴェルソ)

DENON/COCO-6685




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