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デューク・エリントン、A列車で行こう。 [before 2005]

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8月も、あっと言う間に下旬、夏休みも、そろそろ終わりが見えて来ました。さて、当blogは、クラシックを夏休み。いや、ガーシュウィンを聴いた勢いで、ジャズを聴いてみようかなと... とは言うものの、ジャズの世界は、クラシックとまた違って、ディープ。少し冷静になって考えれば、けして片手間で踏み込むべきではない領域。これは身の丈を越えた夏休みの宿題になってしまうのでは?と、軽く慄きながらも、その魅力には勝てなかった... 取り上げちゃいます、デューク・エリントン!てか、もう少し大きな視野で捉えれば、クラシックに欠かせないジャズでもあって... 1920年代、ジャズ・エイジ、いろいろ影響を受けています、クラシック!ならば、クラシックからジャズを見つめたなら、どんな感じになるだろう?ふとそんなことを思い、宿題に向き合ってみる。
ということで、サイモン・ラトルの指揮、バーミンガム市交響楽団の演奏、レナ・ホーンのヴォーカルもありつつの、デューク・エリントンの作品集、"CLASSIC ELLINGTON"(EMI/5 57014 2)。ウーン、改めてデューク・エリントンと向き合うと、興味深い。

始まりは、「A列車で行こう」!まさに、デューク・エリントン!ジャズを代表するスタンダードにして、エリントン楽団の看板ナンバー、いや、定番中の定番だけれど、いつ聴いてもワクワクさせられる... ところで、A列車とは?ニューヨークの地下鉄で、快速運転の路線とのこと... で、A列車が行く先には、ジャズのメッカ、ハーレムがあって、ハーレムに快速で急ごう!と歌うのが「A列車で行こう」(1939)。ウーン、このワクワクは、ジャズを待ち切れない当時の人々の気分そのものなのかも... トンネルの向こうにはジャズのワンダーランドが輝いていて... 俄然、地下鉄が魔法の乗り物に思えてしまう。で、ここで聴く、ヘンダーソンによるアレンジが、バーミンガム市響のスタイリッシュさを絶妙に活かして、なかなか興味深い。当時のA列車はまだ蒸気機関車により牽引されていたらしいのだけれど、その蒸気機関車がリズミカルにピストンを動かす様をクールに表現する序奏に惹き付けられる。それは、ジョン・アダムスのショート・ライド・イン・ア・ファスト・マシーン(1986)のようなスタイリッシュさもあって、蒸気機関車でありながら、フューチャリスティック。このあたりが、現代のシンフォニック・オーケストラによるデューク・エリントンなのだろう... そんな序奏の後で、お馴染みのメロディーが、魅惑的に流れ出す!それもまた、快速が快走して行くようにスタイリッシュで、カッコいい!で、そのカッコよさに、ワクワクさせられる。
というA列車が着いた先に、古き良きハーレムが幻影のように立ち現れる「ユーアー・ザ・ワン」(track.2)。エリントン楽団も専属バンドとして活躍したハーレムのナイト・クラブ、コットン・クラブでも歌っていた、ジャズ・シンガーにして女優、レナ・ホーン(1917-2010)が歌うのだけれど、渋くも、チャーミングな彼女の歌声(1999年の録音当時、82歳?!なんて粋な歌声... )に触れると、タイム・スリップしてしまったような気分に... バーミンガム市響も、シンフォニックさを抑えて、当時のバンドの雰囲気を醸し出し、ヴィンテージ感を紡ぎ出す。続く、ムーディーで、ロマンティックでもあるスロー・ナンバー、「ソフィスティケイティッド・レディ」(track.3)では、バーミンガム市響のオーケストラとしての豊潤さが、"デューク(公爵)"と呼ばれたエリントンの優雅さを強調し、まるでフランス・オペラの間奏曲のように響かせるからおもしろい。いや、こうしたあたりに、デューク・エリントンの音楽の幅を思い知らされる。また、ひとつ年上で、親しかったガーシュウィン(1898-1937)のスタンスに通じる、ジャズに留まらない新しい音楽を生み出そうという姿勢も感じられ、単にジャズの大家というだけではない作曲家、エリントンを再認識させられる。いや、あえてクラシックから見つめるデューク・エリントンというのも、アリなのかも...
1943年、カーネギー・ホールで初演されたスウィング・シンフォニー「ブラック・ブラウン・アンド・ベージュ」、1楽章の中間パート、「カム・サンデー」(track.9)から聴こえて来るのは、ドヴォルザークを思わせる国民楽派的なトーン。"シンフォニー"を謳うだけに、よりクラシカルな印象で、フォークロワに根差した国民楽派が放つ郷愁と、アメリカ南部の"ブルー"な気分を共鳴させて、不思議な感覚を紡ぎ出す。が、この不思議さに、初演当時のジャズ界、クラシック界は、批判的だったらしい。クラシックはクラシック、ジャズはジャズ、どちらのジャンルも交わらないのがアメリカの流儀、スウィングにしてシンフォニーというのは、ある意味、掟破りだったのだろう。一方で、スウィング・シンフォニーが目指したものは、単なる融合ではなかったように思う。「カム・サンデー」の不思議さには、ジャズとクラシックに共通する部分を抽出し、より繊細にして根源的な音楽像を求めるような態度が窺える。それは、ガーシュウィンとも一味違い、クラシックとジャズの対話だったような気がする。
ラトル、バーミンガム市響による"CLASSIC ELLINGTON"は、その対話をすくい上げる。ジャズとして正しいか、クラシックとして正しいかではなく、デューク・エリントンの音楽に対するピュアな態度を掘り起こすのが、このアルバムなのかもしれない。だから、良い意味でクラシックでもなくジャズでもない不思議さが強調され、そこから思い掛けない軽やかさが生まれる。例えば、A列車なら、地下鉄というよりリニアモーターカーのようなイメージ。デューク・エリントンという存在を宙に浮かせて、スーっと前進させてしまうような、スムーズな演奏が繰り広げる。で、それを可能とするラトルのニュートラルな音楽性と、近現代音楽を得意とするバーミンガム市響の明晰さ... そうして紡ぎ出されるデューク・エリントンは、とても現代的と言えるのかもしれない。それはまた、デューク・エリントンが夢見た音楽像とも言えるのかもしれない。

DUKE ELLINGTON ― CLASSIC ELLINGTON
RATTLE

Take The "A" Train
You're The One *
Sophisticated Lady
Harlem
Isfahan
Ad Lib On Nippon
That Doo-Wah Thing
Something To Live For *
Come Sunday
Solitude In Transblucency
Maybe *
Things Ain't What They Used To Be

レナ・ホーン(ヴォーカル) *
サイモン・ラトル/バーミンガム市交響楽団

EMI/5 57014 2




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コメント 2

MaS

こんにちは。
エリントンってビッグバンドの人でもありましたけど、
Queen Suite(URL参照)を始めとした組曲シリーズなどは
クラシック側の人間が聞いても相通じるものを感じます。
何より、理屈抜きにきれいな音楽でもありますし……

by MaS (2017-08-27 08:11) 

carrelage_phonique

コメント、ありがとうございます!

改めてエリントンを聴いてみて、漠然とあったイメージ、典型的なイメージが裏切られ、凄く新鮮な思いをしております。
いや、ホント、きれいでした。

早速、組曲シリーズ、チェックします。
by carrelage_phonique (2017-08-27 14:09) 

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