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ヘンデル、リッカルド・プリモ。 [2008]

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1685年、バッハと同じ年に生まれたヘンデル。3歳になったモーツァルトがチェンバロを弾き始める1759年、74歳で大往生を遂げる。という風に、音楽史からヘンデルの74年の人生を捉えると、もの凄く長く感じられる。で、長い分、山あり谷ありでして... 痛快に感じられるほど、自ら道を切り拓いて行ったハンブルク時代(1703-06)、イタリア時代(1706-10)。その勢いそのままに乗り込んだ大都会、ロンドン!だったが、やがて強力なライヴァルたちが現れて、熾烈な競争から心身ともに疲労困憊、倒れてしまうロンドン時代... しかし、再び立ち上がるヘンデル!新たな道を切り拓き、ヨーロッパを代表する巨匠として輝く晩年。自らが作曲したオペラのようにドラマティックなその人生... いろいろありながらも、盛期バロックから古典主義が準備される頃まで、第一線を生き抜いたその音楽人生は、ただならない。改めてその姿を見つめると、バッハとは違う重みを感じる。
さて、前回、ヘンデルにとっても輝かしかった、1727年、ジョージ2世の戴冠式の音楽を聴いたので、その一ヶ月後に初演された、オペラを取り上げてみる... ポール・グッドウィンの指揮、バーゼル室内管弦楽団の演奏、ローレンス・ザッゾ(カウンターテナー)のタイトル・ロールで、オペラ『リッカルド・プリモ』(deutsche harmonia mundi/88697-17421-2)を聴く。

ジョージ2世の戴冠式があった1727年のオペラ『リッカルド・プリモ』。で、このリッカルド・プリモなのだけれど、第3回十字軍(1189-92)に参加したイギリスの英雄、プランタジネット朝、第2代、イングランド王、リチャード1世(在位 : 1189-99)、獅子心王のこと... まるで、新国王の即位に合わせて作曲されたようだけれど、実際は、前国王、ジョージ1世が健在だった頃に完成。すぐにでも初演される予定が、ヘンデルがヘッド・ハンティングして来たプリマたちが舞台上で一騒動起こし、シーズンが打ち切りになり、次のシーズンに持ち越しとなる。そこに、ハノーファーへ出張中(ハノーファー選帝侯としての執務のため... )だったジョージ1世(在位 : 1714-27)の急逝がロンドンに伝えられ、ジョージ2世(在位 : 1727-60)が新国王に即位。ヘンデルは、『リッカルド・プリモ』の愛国的要素を強調し、大幅改稿。ジョージ2世に献呈し、戴冠式の一ヶ月後に行われた初演は、祝賀ムードに乗って、成功するも、祝賀ムードに助けられてのことだったよう... ヘンデルがロンドン・デビューを果たしてから16年、その間、本場イタリアからスターを呼び、次から次へとイタリア・オペラを提供して来たものの、ロンドンっ子たちは、そろそろイタリア・オペラに飽きていた?翌、1728年には、英語によるバラッド・オペラ、『ベガーズ・オペラ』が初演され、一大ブームに... いや、『リッカルド・プリモ』の物語の展開を見つめれば、イタリア・オペラに限界を感じなくもない。リチャード1世という英雄を登場させながら、スケールの小さい横恋慕によるゴタゴタが、くどくどと続き... ロンドンに限らず、イタリア・オペラは、その台本に限界を迎えつつあったか?だからこそ、格調高い台本を書いたメタスタージオは、やがて作曲家以上に影響力を持ち、グルックはオペラ改革に乗り出したのだろう。
しかし、『リッカルド・プリモ』の音楽は、間違いなく充実している!その充実には、新たな時代を予感させる瞬間もあって、おおっ?!となる。というのが、オペラの始まり... 序曲の後の嵐の音楽、その中で歌われる劇的なレチタティーヴォ(disc.1, track.2)は、まるでグルックの『トーリードのイフィジェニ』の冒頭のよう。ナンバー・オペラの枠組みを越えてしまいそうで、ドラマティック!それは、その後で歌われる、ヒロイン、コスタンツァのアリア(disc.1, track.3)の悲嘆の暮れようを美しく引き立てもし、見事な流れを生み出す。『リッカルド・プリモ』は、まだまだナンバー・オペラの形を残しているのだけれど、始まりばかりでなく、より大きな音楽的な流れを感じられるのが印象的。特に、2幕、冒頭に歌われる美しいコスタンツァのアリオーソ(disc.2, track.1)が、悲しみのテーマとして、その後、度々、用いられるあたりは、ライトモチーフを思わせて、恋人たちの困難な状況を有機的に描き出そうとするのか... 単にイタリア・オペラを量産するばかりでないヘンデルの試行錯誤がそのあたりに窺えて、とても興味深い。でもって、ひとつひとつのアリアの充実度が半端無い!それは、時代を代表するようなスターたちを取り揃えたヘンデルだからこそのアリアと言えるのかもしれない。特に、スター・カストラート、セネジーノが歌ったリッカルドのアリアは、どれも華々しく、鮮やかなコロラトゥーラが繰り出され、エンターテイメントとしてもすっかり楽しませてくれる。また、勇壮な3幕の戦闘シーン(disc.3, track.17)や、壮麗な最終場への行進曲(disc.3, track.23)は、『王宮の花火の音楽』や『水上の音楽』を思わせて、大いに魅了されてしまう。
という、『リッカルド・プリモ』を、グッドウィンの指揮、バーゼル室内管の演奏で聴くのだけれど... いやー、グッドウィンならではの活き活きとした運びに、バーゼル室内管ならではのパワフルで中身の詰まったサウンドが、思いの外、ジューシーなヘンデルを紡ぎ出していて、盛期バロックの充実をたっぷりと味あわせてくれる!そこに、堂々たる歌手陣の歌声が乗って、芳しいこと!特に、ザッゾ(カウンターテナー)の艶やかにして花のあるリッカルド、リアル(ソプラノ)の可憐なコスタンツァには聴き入るばかりで... その2人が歌う、2幕、幕切れの二重唱(disc.2, track.30)の美しさは、息を呑むほど... そして、この2人の邪魔をする悪役、イザーチョを歌うウィルソン・ジョンソン(バリトン)の悪さの瑞々しさが印象的で、ドラマをより引き立てる。そうして、全てが相俟って、ヘンデルの音楽の魅力が魔法のように響き出す!

HANDEL RICCARDO PRIMO OPERA IN TRE ATTI
ZAZZO ・ RIAL ・ MCCREEVY ・ WILSON-JOHNSON ・ STREETMAN
KAMMERORCHESTER BASEL ・ PAUL GOODWIN

ヘンデル : オペラ 『リッカルド・プリモ』 HWV 23

リッカルド1世 : ローレンス・ザッゾ(カウンターテナー)
コスタンツァ : ヌリア・リアル(ソプラノ)
ベラルド : カーティス・ストリヘトマン(バス)
イザーチョ : デイヴィッド・ウィルソン・ジョンソン(バリトン)
プルケーリア : ジェラルディン・マクグリーヴィー(ソプラノ)
オロンテ : ティム・ミード(カウンターテナー)

ポール・グッドウィン/バーゼル室内管弦楽団

harmonia mundi/HMU 807553




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