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苦悩するナショナリスト、サン・サーンス、アルス・ガリカの行方... [2012]

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さて、アルス・ノヴァのマショーに始まり、時代を遡ってゴシック期のノートルダム楽派、そして、トルバドゥール/トルヴェールの音楽を聴いて来た7月下旬、いやー、フランスの中世は、おもしろい!シンプルな中世の音楽だけれど、その背景を見つめると、一筋縄には行かなくて... で、その一筋縄には行かない複雑さが、豊かな文化を生み出し、フランスは中世文化のリーダーとなった。もちろん、音楽においても... しかし、中世末、百年戦争(1337-1453)が、全てを変えてしまう。音楽家たちは、戦火を逃れ、各地に散って行き、以後、フランス音楽は、ローカルな立場に甘んじることに... そうして、4世紀を経た頃、フランス音楽はローカルな位置から脱しようと動き出す。その切っ掛けとなったのが、普仏戦争(1870-71)での敗戦。敗戦が、フランス音楽の覚醒を促す。
ということで、中世から一気に時代を下り、19世紀へ!グザヴィエ・ロト率いる、ピリオド・オーケストラ、レ・シエクルの演奏で、フランス音楽の覚醒を象徴する、サン・サーンスの3番の交響曲、「オルガン付き」(MUSICALES ACTES SUD/ASM 04)を聴く。

1871年、屈辱的な普仏戦争の敗戦の後、フランスではナショナリズムが盛り上がる。ナショナリズムとは言っても、国家権力が主導するキナ臭いものとは違い(戦後のフランス政府は、政体すらろくに定められない体たらく... だもんだから、パリ・コミューンが暴走、戦争の後には内戦状態に... )、それはまさに「フランスを再び偉大に!」という国民の願いの表れでもあって、多くのフランスの作曲家たちも共鳴。極めて国際的(裏を返せば、外国勢の影響を多大に受けていた... )だったパリの音楽シーンの中心にフランス音楽を取り戻そう、ロマン主義を牽引しているドイツに負けない音楽を生み出そうという機運が高まる。そしてそれは、アルス・ガリカ=ガリア様式(より根源的なフランスへと還るということ?)を標榜し、サン・サーンスらが発起人となって国民音楽協会が設立される。そこには、フランク、ビゼー、マスネ、フォーレら、名立たるフランスの作曲家たちが参加、オペラにバレエと劇場におけるエンターテイメントに傾いていたフランス音楽を、オーケストラ作品や室内楽作品でも充実させ、より高い芸術性を志すものの、そうした新しい動きに周囲は付いて来れず、批判にすら晒され、国民音楽協会の活動は苦戦を強いられる。それでも、見向きもされなかったフランスの作曲家によるオーケストラ作品、室内楽作品が、協会主催のコンサートで紹介されたことは、その後の印象主義といった新しいムーヴメントの呼び水となり、フランスの音楽史に確かな足跡を残して行くことになる。一方で、協会の方向性を巡って、ズレが生じ出す。アルス・ガリカ、フランス音楽にこだわるサン・サーンスに対し、より高い芸術性を志す上で国の枠にこだわらないフランクが対立。外国作品を紹介するか否かで両者は争い、フランクが勝利。1886年、サン・サーンスは協会から離れる。
その年に作曲されたのが、ここで聴く、3番の交響曲、「オルガン付き」(track.1-4)。まず、そのオルガンが付くあたり、この交響曲を特徴付けるわけだけれど、特異な2楽章構成(実際には4つのパートからなる... )、ひとつの主題を作品全体で用い、楽章を越えて統一感を生み出そうとする循環形式など、フランスにおける交響曲の独自性を打ち出そうという、サン・サーンスの努力がしっかりと窺える。それは、ドイツ音楽を信奉するフランクへの意地でもあったか?とはいうものの、ドイツに負けない充実した音楽を生み出そうと、ドイツに近付くようにも感じられ、フランス音楽のジレンマがより強く感じられる。というあたり、当時、サン・サーンスを攻撃した人たちから強く批判されていたこと... で、そうしたあたりを素直にサウンドにする、ロト+レ・シエクルの演奏。ピリオド・オーケストラならではの朴訥としたサウンドが、フランス音楽の煌びやかさを抑えて、思いの外、峻厳な音楽を響かせると、ブルックナーを思わせる清冽さが引き出され、聴き知った音楽も思い掛けなく新鮮!またその清冽さが、作品にルネサンスの昔を思い出させる効果を生み出し、循環形式やオルガンの存在が古雅にも感じられ、興味深い。またそうしたあたりに、ブラームスの新古典派としての交響曲に通じる感覚を見出せるのだけれど、サン・サーンスの姿勢はよりピュアに古典を捉えて、絶対音楽としての純度を高めるよう。そうすることで、ロマン主義の濃度を上げて行くドイツに対抗しようとしたか?サン・サーンスを攻撃した人たちは、その音楽を「代数」と呼んだらしいのだけれど、「代数」の魅力を、ロト+レ・シエクルは、スキっと響かせて来る。その鋭い視点に感心させられる。
で、3番の交響曲の後に取り上げられるのが、1876年に作曲された4番のピアノ協奏曲(track.5-8)。3番の交響曲からちょうど10年遡った作品は、フランスらしい華麗さを纏いながらも、3番の交響曲で結実する循環形式が準備されていて、充実した音楽とフランスならではのキャッチーさが絶妙な魅力を生み出す。3番の交響曲には、オルガニストとしてのサン・サーンスが結実し、4番のピアノ協奏曲には、当然ながらピアニストとしてのサン・サーンスが際立つ。その性格的な違いが興味深い。そして、エッセールが弾く1874年製のエラールのピアノが、何とも味わい深く、ピリオドならではのアンティーク感を響かせていて、惹き込まれる。この落ち着いたトーンから繰り出されるフランス音楽の華麗さは、絶妙。エッセールの手堅いタッチもあって、サン・サーンスの魅力が見事なバランスで引き出され、聴き入るばかり。で、ロト+レ・シエクル... ウーン、彼らはただならない。一音一音に自信が漲り、そうして作品と真っ直ぐ向き合い、作品に含まれる粗にこそ時代を見出し、ありのままを表現して、聴く者を作品が作曲された時代へと浚ってしまう。凄い。

Saint Saëns: Synphonie n°3 avec orgue, concerto pour piano n°4

サン・サーンス : 交響曲 第3番 ハ短調 Op.78 「オルガン付き」 *
サン・サーンス : ピアノ協奏曲 第4番 ハ短調 Op.44 *

ダニエル・ロト(オルガン) *
ジャン・フランソウ・エッセール(ピアノ : 1874年製、エラール) *
フランソワ・グザヴィエ・ロト/レ・シエクル

MUSICALES ACTES SUD/ASM 04




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