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ノートルダム楽派の音楽。 [before 2005]

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先日、世界の主要な国、30ヶ国のソフト・パワーについてのランキングが発表されました(ちなみに、日本は、ひとつ順位を上げて、6位。大健闘なんじゃない?)。で、栄えある1位は、フランス!いやはや、腐っても鯛というのか、ここのところ暗いニュースばかりが多かったフランスが、1位... てか、落ち着いて考えれば、「フランス」という響きが持つブランド力は半端無い。なんてったって、おフランスざんす。今でこそくすみがちな、おフランスも、有形無形に関わらず歴史的遺産は圧倒的!21世紀、グローバルな時代を勝ち抜くにあたり、「フランス」は、明らかに優位。が、それを活かせていない。というより、「フランス」の優位を、フランス人自身が忘れてしまっている?そこに問題があるのかも... ならば、シャルル・ド・ゴール空港で、YOUは何しにフランスへ?って、聞いてみればいいのよ。自国再発見!フランスだから、ユーじゃなくて、ヴー(vous)は何しに、だな... ヘヘヘ...
という軽口は、さて置き、フランスを聴いております、今月後半。で、中世末、マショーから、フランス中世文化の最盛期、ゴシック期へと遡る!ドミニク・ヴェラール率いるアンサンブル・ジル・バンショワが歌う、ノートルダム楽派、"Le chant des cathédrales"(cantus/C 9703)。で、この時代もまた、ソフト・パワー、1位だったはず... 中世の都、パリを彩った音楽を聴く。

音楽史から見つめた中世は、記録の乏しさ、記譜の未発達などがあり、「暗黒時代」のような印象を生み出してしまう。いや、それだけ古い時代であって、ロマン主義のように捉えることはできなくて当然... の一方で、意外と音楽理論を綴った書物が存在し、何より、記譜の技術を向上させようという試行錯誤があって、そうした動きを丁寧に見つめれば、積極的に音楽を記録しようとした中世の姿が浮かび上がり、後の世に音楽を残したいという衝動を生む豊かな音楽文化が存在していたことが想像できるように思う。そうした中世における音楽文化のピークが、12世紀後半に始まるゴシック期。グレゴリオ聖歌に新たな声部を加えることで始まった多声音楽の試みは、サン・ティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼のブームにより、巡礼者によって運ばれ、やがて集約され、12世紀前半、巡礼路の終点にサン・ティアゴ・デ・コンポステーラ楽派を、フランスの中央部を通る巡礼路の拠点、リモージュにサン・マルシャル楽派を形成。かつて修道院に籠って歌われていたグレゴリオ聖歌は、より開かれた大聖堂で、より音楽的に拡張され、豊かな多声音楽を編んで行く。この南の成果が、間もなく北にも伝わり、パリ、ノートルダム大聖堂に因む、ノートルダム楽派の音楽家たちによって、ゴシック期、大きな花を咲かせる。
とはいえ、ルネサンス・ポリフォニーの壮麗さを前にすれば、素朴なノートルダム楽派であって、グレゴリオ聖歌を美しく装飾するようなあたりに留まって、シンプル。が、シンプルなればこそ、より澄んで響き渡る感覚があり、グレゴリオ聖歌というベースがしっかりと活きて、その神秘性は強調され、瑞々しく、鮮やか!そんな響きに触れると、マショーの複雑で刺激的な多声音楽が、極めてマニエリスティックに感じられてしまうほど... いや、中世における音楽文化のピークは、確かなもの。何より、ゴシックの大聖堂に響いただろう広がりが感じられ、さらには、広がりを満たして行くような感覚もあって、単に音楽を聴くだけではない不思議さがある。これは、天体の動きにも、身体の生理にも音楽を見出していた、中世の人々の独特な音楽の捉え方によるものなのかもしれない。ノートルダム楽派の音楽は、その後の音楽、バロック以降の我々の時代へと至る聴くために聴衆の前に置かれた音楽とは一線を画し、耳で聴きながらも、音楽に身を浸すような心地良さがある。長大な音楽史における黎明期とも言えるゴシック期、その音楽のシンプルさは、現代からすれば未熟かもしれないが、その後の音楽が失ってしまった、単に聴くに留まらない存在感に、より豊かなものを見出し、いろいろ考えさせられてしまう。
そんなノートルダム楽派の音楽を2枚組で取り上げる、ヴェラール+アンサンブル・ジル・バンショワ。1枚目は、作曲者不詳の作品を中心に、2枚目は、ノートルダム楽派の音楽を確立したレオナンと、そのレオナンの音楽を受け継ぎ発展させたペロタンを中心に取り上げる。音楽史の黎明期の素朴さが際立った1枚目から、ノートルダム楽派の進化を追うような2枚目... 中世が千年も続いたように、ゴシック期も長かったことを思わせる音楽的な幅を丁寧に歌い上げて、印象的。特に、より自由なメリスマを効かせて、色彩感を生み出すペロタンの登場は鮮烈にも感じられて、静かなノートルダム楽派の音楽にドラマティックな展開を作り出し、おもしろい。いや、何と言うスペイシーさ!中世の素朴さを素直に歌い出しつつ、澄んだハーモニーを織り成して、時空を超越するような佇まいを見せるアンサンブル・ジル・バンショワ。そうしたあたりが、とてもクールなのだけれど、人の声が持つ温もりも大事に歌われていて、絶妙。クールさに浄化され、温もりに癒される。中世よりも暗黒を感じてしまう今日この頃だけに、心を落ち着かせるには最高な2枚組。

Le chant des cathédrales

ペロタン : Alleluia, Nativitas
ペロタン : Beata viscera
作曲者不詳 : Ave maris stella
作曲者不詳 : Salva nos, stella maris
作曲者不詳 : Gaudeat devotio/Nostrum
作曲者不詳 : O summi regis
作曲者不詳 : Salve mater/Tatem
作曲者不詳 : Haec dies quam fecit Dominus
作曲者不詳 : Veri solis presentia
作曲者不詳 : Dum medium silentium
作曲者不詳 : Sol sub nube latuit
作曲者不詳 : Ave Maria/Latus
作曲者不詳 : Stella serena
作曲者不詳 : Benedicamus Domino

作曲者不詳 : Mundis vergens in defectum
作曲者不詳 : Angelorum laude digna
レオナン/ペロタン : Viderunt omnes
作曲者不詳 : Veni creator spiritus
ペロタン : Dum sigilum summi patris
作曲者不詳 : Eterni numinis
ペロタン : Sancte Germane
ペロタン : Viderunt omnes

ドミニク・ヴェラール/アンサンブル・ジル・バンショワ

cantus/C 9703




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