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メシアン、アメリカ西部を行く。峡谷から星たちへ... [before 2005]

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7月4日が、アメリカの独立記念日。7月14日が、フランスの革命記念日。
この近さが、おもしろいなと感じる。7月というのは、独立とか、革命とか、そういうものが起きやすい月?って、2017年、日本の7月は、あの都議選で幕を開けているのも象徴的?というあたりはさて置き、アメリカとフランス、実際に近かったりする。アメリカ独立戦争を支援したフランス。その独立100周年に、フランス革命のシンボル、自由の女神がアメリカに贈られて、今、ニューヨークに立っているわけで... 大西洋を挟んで、アメリカとフランスの関係性は、なかなか興味深い。ま、現在は、パリ協定だの何だのと、トンデモ大統領のせいで、ギクシャクしているわけだけれど、それでも、今年の革命記念日は、米仏両大統領、エッフェル塔でディナーだというから、すばらしいのではないでしょうか。って、それも大変みたいだけれど... さて、自由の女神がアメリカに贈られてから100年後、独立200周年のために、今度は音楽が贈られようとしておりました。
20世紀、フランスを代表する作曲家のひとり、メシアンが、アメリカ西部を旅して得たインスピレーションを音楽にまとめた異色の大作... チョン・ミュンフンが率いたフランス放送フィルハーモニー管弦楽団の演奏、ロジェ・ミュラロのピアノ、ジャン・ジャック・ジュスタフレのホルンで、メシアンの『峡谷から星たちへ... 』(Deutsche Grammophon/417 617-2)を聴く。

切っ掛けは、ニューヨークの楽壇で活躍したパトロン、アリス・タリー(1902-93)による委嘱。アリスは、1976年のアメリカ独立200周年を念頭に、そのための作品を、フランスの大家、メシアン(1908-92)に委嘱した。それは、音楽による"自由の女神"のようなイメージだったのかもしれない。が、メシアンは、そうしたことにはお構いなしで、飄々と自身のイメージを音楽にまとめ上げる。作曲を開始した翌年、1972年、アメリカ西部、ユタ州を旅したメシアンは、シーダー・ブレイクス、ブライス・キャニオン、ザイオン国立公園などを訪れ、壮大な自然とその色彩に感銘を受け、独立200周年のスケールを越えて、太古の姿を刻む峻厳な峡谷と、その上に広がる圧倒的な星空、そして、メシアンのお約束、鳥たちのさえずりをひとつに結び、壮麗な音楽を紡ぎ出す。それはまさにタイトルの通り、『峡谷から星たちへ... 』。ピアノを中心に、多彩な楽器で織り成される音楽は、まるでサウント・スケープ。メシアンがアメリカの大自然を目の前にして味わった驚きを追体験するかのよう。そんな『峡谷から星たちへ... 』は、独立200周年の2年前、1974年、ニューヨーク、アリス・タリー・ホールで初演される。
ということで、アリスの思惑の斜め上あたり、我が道を行ってしまったメシアン。ま、この人に、我が道を行く以外など、考えられないわけだけれど、『峡谷から星たちへ... 』には、メシアンにして、メシアンのイメージを越えて行くようなトーンも見受けられる。例えば、第1部、1曲目、「砂漠」(disc.1, track.1)の冒頭、トランペットの吹奏には、アイヴズの「尖塔から山々から」を思わせる、乾いた空気感を見出し、アメリカ大陸へとやって来たことを印象付けられるよう。普段のメシアンの無邪気にも感じられるカラフルさは、アメリカ西部のマッシヴさに触れ、より深い鮮やかさを放つのか... この作品のために用意されるオーケストラは、多彩な楽器が並べられる一方で、弦楽パートの人数は少なく、また、全ての楽器が一斉に鳴るようなこともなく、紡がれるサウンドは、常に室内楽的。室内楽的ではあるのだけれど、なればこそ、ひとつひとつの楽器の音色はより澄んで、思いの外、雄弁に響き、アメリカ大陸のスケール感を、絶妙に描き出す。またそこには、コープランドに通じるドライさが生まれ、ドライであるからこその清々しさ、ヨーロッパにはない瑞々しさが広がり、メシアンにして、アメリカのメシアンの新鮮な感覚に満ちている。裏を返せば、メシアンの強烈な個性をも凌駕する風景がアメリカ大陸にはあったのだろう。
アメリカ西部の峻厳な風景の一方で、その上に広がる星空を描き出す音楽は、ファンタジック!寝転びながら星の光を追っていると、星のハナウタが聴こえて来る?第2部、ホルンの独奏による「恒星の呼び声」(disc.1, track.6)の不思議さ... 第3部の始まり、「蘇りしものとアルデバランの星の歌」(disc.2, track.1)は、トゥランガリーラ交響曲の「愛の眠りの園」を思わせて美しく、やさしく、星々の瞬きを数えながら聴く子守唄のようで、魅了される。一方、鳥たちのユーモラスなさえずりも印象的... 「モリツグミ」(disc.2, track.3)などは、往年のカートゥーン・アニメを思わせる表情を見せて、ポップに感じられる瞬間も... やっぱり、アメリカのメシアンは一味違う。最後、「ザイオン・パークと天上の都」(disc.2, track.1)は、往年のミステリー映画でも始まりそうな雰囲気の中、鳥のさえずりに紛れて、ヤンキードゥードゥル(日本では、アルプス一万尺の節で有名なアメリカの愛国歌... )らしきものが聴こえた?かと思うと、宇宙船が飛び去って行くようなフィナーレ!後半、そこはかとなしに漂うB級感に、メシアンが体験したアメリカ社会を見出せるのか、そんな脱力感もツボだったりする。
という『峡谷から星たちへ... 』、2枚組から、多彩な魅力を卒なく引き出して来る、チョン・ミュンフン、フランス放送フィル。まず特筆すべきは、フランス音楽のスペシャリスト、メシアン作品にも精通したチョン・ミュンフンならではの、余裕のあるアプローチ!強烈な個性を前にしても、身構えることなく、難なくその個性を捕まえて、よりナチュラルに響かせてしまう妙。それは、良い意味で脱力していて、脱力から生まれる「間」が、この作品、特有のトーンを、絶妙に引き立てる。アメリカの自然の鮮やかさ、アメリカの文化のB級感、メシアンが肌で感じただろう感覚を、ナチュラルに、それでいてヴィヴィットに聴く者に追体験させるかのよう。そして、フランス放送フィルの、フランスならではのサウンドの美しさ... ひとつひとつの楽器が、澄んだ音色を奏で、メシアンの奔放なスコアを、瑞々しく響かせる。で、特に冴えた音を聴かせてくれるのが、ミュラロのピアノ!粒立ちの良い、まばゆい響きは、キラキラとしていて、作品全体を、その輝きで装飾して行く。

MESSIAEN: DES CANYONS AUX ÉTOILES...
MURARO・ORCHESTRE PHILHARMONIQUE DE RADIO FRANCE/CHUNG


メシアン : 『峡谷から星たちへ... 』

ロジェ・ミュラロ(ピアノ)
ジャン・ジャック・ジュスタフレ(ホルン)
チョン・ミュンフン/フランス放送フィルハーモニー管弦楽団

Deutsche Grammophon/417 617-2




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