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ゴッド・ブレス... ホワイトハウス・カンタータ! [before 2005]

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さてさて、政治が一気に盛り上がりました。日本で、というか、東京で... やっぱり、酉年騒ぐんだわ、まったく... それにしても、イギリスしかり、フランスしかり、興味深い事態が続きます。一方で、アメリカに視点を移すと、また違った騒ぎに中てられるやら、呆れるやら... 過激なつぶやき大統領が、今度は某テレビ局をボッコボコにしてる映像をアップして、ユーチューバーでも目指すつもりか?いや、大統領の仕事以外で、こうも悪目立ちできるって、不思議。世界は、アメリカは、問題山積であって、現実的に、そんな暇は皆無のはずだけれど... しかし、歴史をつぶさに見つめると、アメリカ大統領、必ずしも、みな立派な人ではないということを知る。裏を返せば、世界は、あまりにアメリカに理想を求め過ぎるのかもしれない(そう仕向けて来た、アメリカの印象操作、見事!)。という、戒めを籠めて、アメリカ独立記念日、ホワイトハウスを舞台とした大騒ぎのカンタータで祝う!
ということで、ケント・ナガノの指揮、ロンドン交響楽団の演奏、ロンドン・ヴォイセズのコーラス、ジューン・アンダーソン(ソプラノ)、バーバラ・ヘンドリックス(ソプラノ)、トーマス・ハンプソン(バリトン)ら、アメリカが誇る豪華歌手陣による、アメリカ合衆国の歴史を辿る異色作、バーンスタインのホワイトハウス・カンタータ(Deutsche Grammophon/463 448-2)を聴く。

20世紀を代表する指揮者のひとり、バーンスタイン(1918-90)。その作曲家としての側面も忘れるわけにはいかない。で、作曲家としてのバーンスタインを特徴付けるのが、ミュージカル!1944年に初演された『オン・ザ・タウン』を皮切りに、トニー賞受賞作、『ワンダフル・タウン』(1953)、そして、後に映画化され、アカデミー賞を受賞することになる『ウェスト・サイド・ストーリー』(1957)と、ミュージカル作曲家としても大きな足跡を残した。そんなバーンスタインが、アメリカを代表するスター指揮者として多忙を極めていた頃、1972年にプロジェクトが動き出したミュージカル、『ペンシルヴェニア通り1600番地』。巧いこと1976年のアメリカ合衆国建国200周年を捉えることになるその物語は、ペンシルヴェニア通り1600番地に建つ、ホワイトハウスを舞台に繰り広げられる歴史劇。『マイ・フェア・レディー』(1956)の台本作家、ラーナーによる台本は、白人の歴代大統領夫妻と、その使用人の黒人カップルを対比させ、人種問題を炙り出しながら、それを劇中劇とし、各時代をオムニバスのように並べ、リハーサル・シーンでつなぐという凝ったもの... が、ラーナーの力みが徒となり、1976年、1月にフィラデルフィアで迎えたプレヴュー公演は不評。いろいろ手直しを試みた後、ワシントンでのプレヴュー公演を経て、5月、ニューヨーク、ブロードウェイでの初演を迎えるのだったが、わずか7回で打ち切られ、大失敗に終わる。とはいえ、バーンスタインによる音楽は好評で、バーンスタイン自身にも自負があったか、様々に転用している。
という『ペンシルヴェニア通り1600番地』の音楽を再発見する試みが、ここで聴くホワイトハウス・カンタータ。バーンスタインが世を去った後、リハーサル・シーンをカット、歴史劇の部分を整理して、コンサート用にオーケストレーションし直して... いやー、バーンスタインのおもしろさが、凝縮される!お得意のジャズやブルースを引き込み、アメリカならではのライトさ、ポップさで彩り、極めて活きのいいミュージカルを繰り出しながら、クラシックの様々な場面で経験して来たものを見事に活かし切るバーンスタイン。これほど魅力的な音楽がありながらの大失敗というのは、余程の台本だったのだろう。しかし、ホワイトハウス・カンタータとなって刈り込まれた物語、実は、おもしろい!というより、今さらながらに勉強になってしまうアメリカ合衆国史... 始まりは、初代大統領、ワシントンのエピソード(track.1, 2)。如何にして、アメリカの首都が決定されたかを、おもしろおかしく歌い上げる。そうして建設されるホワイトハウス... このアメリカ政治の中枢は、間もなく、米英戦争(1812-14)によりイギリス軍に占拠され、焼き討ち(1814)に遭う!ということに衝撃を覚えるのだけれど、そこでイギリス軍が歌うのが、当時、ロンドンで流行した大酒飲みの歌、「天国のアナクレオンへ」(track.8)。ん?どっかで聴いたぞ、このメロディー... そう、現在のアメリカ国歌に発展するというメロディーだから、おもしろい。そんなトリヴィアもありつつ、ウィットに富み、ブラック・ユーモアも効かせて歴史劇が繰り広げられるホワイトハウス・カンタータ、楽しい!
で、この勉強になりつつ楽しい希有な作品を聴かせてくれるのが、ホワイトハウス・カンタータを初演(1997年、ロンドンにて... )した、ケント・ナガノ、ロンドン響... アメリカのマエストロならではの砕けた感覚と、クレバーなケント・ナガノならではの明晰なアプローチは、何でもありの、ちょっと闇鍋的なバーンスタインの音楽を、細部まで息衝かせ、輝きで充たす。そんなケント・ナガノに応える、器用にして癖の無いロンドン響の演奏が、バーンスタインの音楽の真価を見事に引き出して、魅了されるばかり... そんな演奏に乗って、アメリカが誇る豪華歌手陣の意気込みを感じさせる鮮やかな歌いっぷりが最高!ミュージカルとしての軽妙さ、オペラティックな聴かせ所を絶妙に表現して、惹き込まれる。ロンドン・ヴォイセズのコーラスもまた、活き活きとドラマを紡ぎ出し、作品を盛り上げる。そうした、すばらしいパフォーマンスもあって、ますますバーンスタインの音楽が冴える!いや、これは隠れた名作と言えるのかもしれない... 最後、フィナーレ、第26代大統領、セオドア・ルーズヴェルトが、「誇りをもって」(track.18)と歌い、建国200周年に相応しい感動的なコーラスで締め括られるのだけれど、自分の国の名を聞くたびに、国旗がはためくとき、恥じて顔を隠すことなく... と、歌う、大統領の姿は、実に、現在のアメリカ、ホワイトハウスに響く。1976年よりも、2017年に、深く、響く。

BERNSTEIN | A WHITE HOUSE CANTATA
LONDON SYMPHONY ORCHESTRA | KENT NAGANO

バーンスタイン : ホワイトハウス・カンタータ

大統領 : トーマス・ハンプソン(バリトン)
大統領夫人 : ジューン・アンダーソン(ソプラノ)
シーナ : バーバラ・ヘンドリックス(ソプラノ)
ラッド : ケネス・ターヴァー(テノール)
ラッド(こども時代) : ヴィクター・アックアー(ボーイ・ソプラノ)
ヘンリー : キール・ワトソン(バス)
コーバーン提督 : ニール・ジェンキンス(テノール)
ロンドン・ヴォイセズ(コーラス)

ケント・ナガノ/ロンドン交響楽団

Deutsche Grammophon/463 448-2




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