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アルヴォ・ペルト、"ALINA"。 [before 2005]

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さて、ECMを聴いております。何となく、今の季節にしっくり来るような気がして...
ということで、6月は、ECM NEW SERIESをフィーチャー!改めて、この希有なレーベルについて見つめてみる。そんなECM、1969年、ベルリンで作曲とコントラバスを学び、ミュンヒェンでジャズのベーシストとなったマンフレート・アイヒャー(b.1943)によって創設される。Edition of Contemporary Musicを略してのECM。で、そのコンテンポラリー・ミュージックというのは、現代音楽ではなく、現代の音楽としてのフリー・ジャズを指し、ジャズ・レーベルとしてスタート。その後、1984年に、現代音楽にも枠を広げ、新たなライン、ECM NEW SERIESが立ち上がる。今では、古楽も、クラシックも取り上げつつ、ECMならではのセンスを貫いて、これまでにない瑞々しい音楽像を提示。プロデューサー、アイヒャーの、既存の価値観に捉われない確かなヴィジョンと、その先に聴こえて来る、権威や伝統のしがらみを脱し、そっと佇む音楽のピュアな表情... クラシックの世界から、ECM NEW SERIESに触れると、とても澄んだ印象を受ける。澄んでいるからこそ、音楽をより感覚的に聴くことができる気がする。またそれが心地良くて... この不思議な感触が、ECMの大いなる魅力かなと...
でもって、ECM NEW SERIESの幕開けを飾り、ブレイクを果たしたアルヴォ・ペルト... ウラディーミル・スピヴァコフのヴァイオリン、セルゲイ・ベズロードヌイのピアノ、ディートマール・シュヴァルクのチェロ、アレクサンダー・モルダーのピアノによる、ECM NEW SERIESらしいサウンドに彩られた、アルヴォ・ペルトの"ALINA"(ECM NEW SERIES/449 958-2)を聴く。

1984年、ECM NEW SERIESの最初の1枚としてリリースされたのが、アルヴォ・ペルトのタブラ・ラサ。1980年代といえば、現代音楽が未だ戦後「前衛」の延長線上でモヤモヤとしていた頃... そうした中にあって、ロジックに捉われた難解な"ゲンダイオンガク"とは一線を画す、シンプルな音楽、誰の耳にも心地良いサウンドを繰り出したペルト... その存在は異端であり、現代音楽のエリートたちからしたら、子供騙しに感じられたはず。が、そういう当時の主流の見方に捉われず、ECM NEW SERIESの最初の1枚に、ペルトを、タブラ・ラサを選んだ、アイヒャーの審美眼。この作曲家の佇まい、この作品が放つ雰囲気が、ECM NEW SERIESの方向性を決めているように感じる。もちろん、ペルトのような、シンプルで、澄んだサウンドを響かせる音楽ばかりが並ぶわけではないのだけれど、というより、バリバリの現代音楽から、大胆な古楽の取り組み、クラシックの名曲まで、極めてヴァラエティに富むラインナップを誇るECM NEW SERIES。下手なメジャー・レーベルより、よっぽど幅広くクラシックを手掛けている。が、ひとつひとつの音楽に向けられるニュートラルな視点は、作品の瑞々しさこそを大切にし、新たな表情をすくい上げ、魔法を掛けるように、シリーズ全体に統一感を持たせてしまう妙。アイヒャーという希代のプロデューサーの感性、何より音楽への静かで熱い視線に、感服させられる。でもって、それをより強く感じる1枚、ECM NEW SERIESらしさを極めるような1枚、ペルトの"ALINA"を聴くのだけれど...
ペルトがまだソヴィエトにいた頃、ティンティナブリ様式を生み出した頃の作品、1976年に書かれたピアノ曲、「アリーナのために」(track.2, 4)と、西側へと亡命する前年、1978年に書かれた、独奏楽器とピアノのための「鏡の中の鏡」の、ヴァイオリン版(track.1, 5)と、チェロ版(track.3)を取り上げる、"ALINA"。「鏡の中の鏡」というタイトルがあってか、映し鏡のように2つの作品を並べる、かなりチャレンジングな構成。ヴァイオリン版、「鏡の中の鏡」、「アリーナのために」、チェロ版、「鏡の中の鏡」という流れを、シンメトリックに、もう一度、展開。いや、シンプルを極めるペルトの作品を、繰り返し奏でるというのは、なかなか他ではできないことだと思う。つまり、ECM NEW SERIESならではの1枚... 作品を聴かせるのではなく、ひとつのアルバムとして、世界観を響かせる。初期のティンティナブリ様式の、よりシンプルで、澄み切っていて、沈思な佇まいに繰り返し触れると、浮世の喧騒を離れ、深淵へと下りて行くようで、瞑想的。また、弦楽器のやわらかな音色が温もりを感じさせる「鏡の中の鏡」の、天国的で、厭世的なトーンに対し、研ぎ澄まされたピアノが訥々と響く「アリーナのために」の、北欧の厳しい冬を見せるような、あるいはソヴィエトの荒涼が浮かぶようなトーンがコントラストを生み、それによる、温、寒、温、寒、温という構成が、より瞑想を促すようで、作品を越えて、響きそのものに癒される。
シンプルで、繰り返し、でありながら、深い癒しが響き出す"ALINA"。スピヴァコフのヴァイオリン、シュヴァルクのチェロ、モルダーとベズロードヌイのピアノは、密やかで、静かで、ひたすらにペルトの音楽世界へと融けて行く。それは、音楽家としての音楽性を消すかのようでもあり、独特。ペルトが綴ったシンプルな音を淡々と追いながらも、無機質に響かせることなく、「鏡の中の鏡」では、親密さを際立たせながら、囁きに似た表情を紡ぎ出す。一方の「アリーナのために」では、怜悧なサウンドの中に、物悲しさを滲ませ、聴く者の心を、そこはかとなしに刺激して来る。抑制的に弾き切った先に生まれる、淡い存在感... それを抑揚の少ない中で維持するのは、超絶技巧を決めるより難しい気がする。が、それを楚々とやってのける4人。プロデューサー、アイヒャーのヴィジョンを、見事に具現化する4人。なればこそ、彼らの奏でる音楽は、大気になり、どこまでも広がり、そして、聴く者を包む。その大気の中で呼吸をし、ティンティナブリ様式が生む瑞々しさを胸一杯に吸い込めば、穏やかな心地に...それは、今、最も必要とされる音楽のように感じる。

ARVO PÄRT ALINA

ペルト : 鏡の中の鏡 **
ペルト : アリーナのために *
ペルト : 鏡の中の鏡 **
ペルト : アリーナのために *
ペルト : 鏡の中の鏡 **

ウラディーミル・スピヴァコフ(ヴァイオリン) *
セルゲイ・ベズロードヌイ(ピアノ) *
ディートマール・シュヴァルク(チェロ) *
アレクサンダー・モルダー(ピアノ) *

ECM NEW SERIES/449 958-2




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