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「北」の鮮烈、「北」の素朴を歌う、モンク、"Facing North"。 [before 2005]

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庭の紫陽花がすっかり色付き、6月だなと... そして、梅雨となりました。
そう言えば、「6月病」なる言葉を、先日、初めて耳にし、へぇ~ っとなる。いや、5月病より、ありそうな気がする。ジューン・ブライドの月ではあるけれど、やっぱりメランコリックに感じられる6月。世界の不穏さ、日本の不透明さも相俟って、ますます鬱々となるばかり?いや、しとしとと降る雨でどこか仄暗い季節は、気分を落ち着けるのにいいのかも... 世界の、日本の騒々しさとは裏腹に、静かな季節とも言える梅雨。湿度こそ鬱陶しいものの、水気が多い分、夜など、少しひんやりとした空気に触れると、ちょっと瞑想的な気分になる。そういう6月、嫌いじゃない... けど、梅雨も7月に入れば、そんな悠長なことを言っていられなくなるのだろうな... となる前に、この季節にしっくり来る、瞑想的な音楽、異才、メレディス・モンクを聴いてみようかなと...
作曲家にしてパフォーマーでもあるメレディスと、彼女のアンサンブルにも参加しているロバート・エーンによる歌と演奏で、カナディアン・ロッキーの大自然と、先住民の文化にインスパイアされた"Facing North"(ECM NEW SERIES/437 439-2)を聴く。

まず、メレディス・モンクとは?というところから始めるべきなのかもしれない... 1946年、ニューヨークに生まれたメレディス。1960年代、オフ・ブロードウェイでパフォーマー(こども向けミュージカルのダンサー... )として活動を始め、多くの舞台人を送り出したサラ・ローレンス大学で学んだ後、1968年、ジャンルの垣根を越えたパフォーマンスを試みる劇団、ザ・ハウスを創設。その活動から、メレディス・モンク・アンド・ヴォーカル・アンサンブルを結成(1978)。そこで生み出された音楽は、やがてECMによりレコーディング(ファースト・アルバム、『ドルメン・ミュージック』が、1981年にリリース... )され、現代音楽の分野でも存在感を示すようになる。で、メレディスによる音楽なのだけれど、舞台から派生した音楽は、音楽院出の、エリートたちによる、いわゆる難解な"ゲンダイオンガク"とは一線を画し、とてもシンプルで、ミニマル・ミュージックを思わせる。が、それは、メレディスらのパフォーマンスによって完成される即興性の強い音楽でもあって、機械的なミニマル・ミュージックの対極にあり、プリミティヴですらある。そんなメレディスが、カナダのバンフ国立公園内にある、バンフ・センター、リートン・アーティスツ・コロニーのレジデンス・コンポーザーとして、「北」に滞在(1989)した体験を素に、生み出されるのが、"Facing North(北向き)"(track.1-9)。カナディアン・ロッキーの自然と、アメリカ北西部の先住民、チヌーク族にインスパイアされ、メレディスが紡ぎ出した音楽を、ロバート・エーン(メレディス・モンク・アンド・ヴォーカル・アンサンブルに参加しつつ、作曲家として、パフォーマーとしても活動... )との共同作業により膨らませて、組曲にまとめ、やがて2人のパフォーマンスによる舞台(1990)に発展する。そうして完成された"Facing North"は、いわゆる作曲家によって作曲される作品とは一線を画す。即興、そして、パフォーマンスと結び付いた音楽は、スコアにきっちり書き込まれた音楽には無い伸びやかさ、自由さが表れていて、ちょっとマジカルですらある。
で、のっけから凄い!「北国の光」というタイトルが付けられた1曲目、調弦などに用いる、基準の音を鳴らす笛、ピッチパイプを楽器として響かせるという意趣返し!このひねりが、オフ・ブロードウェイからやって来たマエストラの異色さをそのままに響かせていて、唸ってしまう。でもって、アコーディオンのような、笙のような、ピッチパイプならではの真っ直ぐな音色が重ねられると、まるでスペクトル楽派の音楽を聴くような音響が広がり、ピッチパイプであることを忘れさせるほどに、鮮烈。それでいて、まさに「北国の光」!まるで北極圏に太陽が昇るようで、圧巻のサウンド・スケープを描き出す。続く、「チヌーク」(track.2)は、メレディスとエーンによる、ホーミーを思わせるヴォイス・パフォーマンスで織り成す、どこか呪術的なナンバー... その姿は、音楽の原初の姿を見せられるようで、独特な迫力がある。その後で歌われる「長い影」(track.3)は、シンプルなメロディーを重ねて音楽を構築し、西洋音楽の黎明を聴かせるようで、また印象深い。かと思うと、「ぽかぽかと温かく」(track.4)は、メレディスの真骨頂とも言うべき、わらべ歌のような、懐かしくも、無邪気なメロディーが流れ出し、狐に抓まれたような心地に... 「北極の酒場」(track.7)では、ピアノの伴奏で酔っぱらったように歌う2人。ハハッ、このユルさがたまらない!シンプルな音楽を即興的に紡ぎ出す... 生の芸術につながるような、ピュアな居住いの心地良さ!とかく騒々しい中で暮らさなくてはならない現代人の耳にとっては、音楽を越えた癒しを与えてくれる。
さて、"Facing North"の後で、1971年の作品、オペラ・エピック『聖人』(track.10-13)からの4つのナンバーが取り上げられるのだけれど、また雰囲気を変えて、おもしろい。オペラはジャンヌ・ダルクを描くもので、神の声を聴いたオルレアンの乙女の奇跡を、神秘的かつドラマティックに響かせ、"Facing North"とは違う聴き応えがある。特に、最初のエピック(track.10)のオルガンが壮麗に響き渡るあたりは、大聖堂のステンドグラスから光が差すようで、"Facing North"の素朴な「北」とは打って変わって、西洋!そのオルガンを背景にメレディスが歌うメロディーは、ちょっとグラマラスで、おもしろい。そこに、ヴォイス・パフォーマンスによる奇妙な表情が加わって、何かヴィジョンが浮かび上がるよう。最後は、1979年の作品、『近代の廃墟』からボート・ソング(track.14)を再びエーンと歌うのだけれど、これがまた、遠い記憶を呼び覚ますようなメロディーで、深く心に沁みる。『聖人』のカラフルさの後では、余計に... で、そのたゆたうようなメロディーに身を委ねていると、再び「北」へと送り返され、また最初から聴きたくなってしまう。メレディスに魔法でも掛けられたのだろうか?いや、エーンも含め、縦横無尽とも言えるその歌い、ヴォイス・パフォーマンスは、魔法掛かっている!また音楽がシンプルであればあるほど、魔法の力は強まるようでもあり、ただならない。

MEREDITH MONK FACING NORTH

メレディス・モンク : "Facing North" *
メレディス・モンク : オペラ・エピック 『聖人』 から
メレディス・モンク : ボート・ソング 〔『近代の廃墟』 から〕 *

メレディス・モンク(声/ピアノ/オルガン/ピッチパイプ)
ロバート・エーン(声/ピッチパイプ) *

ECM NEW SERIES/437 439-2




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