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ポスト・モーツァルトの時代、ベートーヴェン、帝都に行く! [before 2005]

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5月となりました。春も本番です。いや、すでに暑いくらいの初夏の陽気... ならば、そんな気分の音楽?この春、モーツァルトの時代の音楽をざっと見渡して来たのですが、気になるのは、その後、ポスト・モーツァルトの時代。モーツァルトから19世紀へ、音楽史はどんな変貌を遂げて行くのだろう。で、春を思わせたウィーン古典派の音楽が、夏に向かって勢い付いてくような、ベートーヴェンの成長を追ってみようかなと... そのベートーヴェンは、14歳のモーツァルトが、ミラノにて、『ポントの王、ミトリダーテ』で大成功した時、ボンで生まれている。という風に切り取ると、世代的にかなり近い気がするものの、その音楽に触れれば、かなり距離を感じてしまう。18世紀の人、モーツァルト、19世紀の人、ベートーヴェン... だけれど、あえてそこにつながりを探ったならば、ポスト・モーツァルトの時代が、より活き活きと見えて来るような気がして... そして、ベートーヴェンは、如何にしてベートーヴェンへと成長を遂げたのかが見えて来るような気がして... そこで、ベートーヴェンの5つのピアノ協奏曲を、同時代の音楽とともに俯瞰し、18世紀から19世紀へ、うつろう時代を改めて捉えてみる。
ということで、ロバート・レヴィンのフォルテピアノ、ジョン・エリオット・ガーディナー率いるオルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティークの演奏による、ベートーヴェンのピアノ協奏曲のツィクルスから、1番と2番のピアノ協奏曲(ARCHIV/453 438-2)を聴く。

ベートーヴェンというと、まさにアイコンとなっている、あの有名な肖像画のせいか、気難しい印象がある。何より、革命的な音楽の激しさがあって、型枠にはまらない伝説的な姿が強調されるわけだけれど、その人生を丁寧に振り返ってみると、また違った姿も浮かび上がって来る。例えば、飲んだくれの父に代わり一家を支え、必死だったボン時代、10代の頃... そういう健気さがあって、多くの温かい支援に支えられ、向かったウィーン... もちろん、才能があってこその支援なのだけれど、それだけではない、愛される好青年像も、そこから垣間見られる気がする。そのウィーン(モーツァルトが逝った翌年、1792年、以後、ベートーヴェンはウィーンを拠点とする... )では、巨匠、ハイドンに師事。が、それはいささか時代遅れなレッスンだったようで、若きベートーヴェンは巨匠に敬意を払いつつ、より実践的な音楽を学ぼうと、聖シュテファン大聖堂の楽長、アルブレヒツベルガーに師事している(1794年、ハイドンが2度目のロンドン・ツアーに出た後で... )。そういう配慮のできる好青年なればこそ、リヒノフスキー侯爵(若きベートーヴェンの下宿先で、そのサロンがウィーンの音楽家たちに重要な舞台を用意した... )や、スヴィーテン男爵(かつてモーツァルトにバッハを紹介した、ウィーン古典派のオピニオン・リーダー... )に支持され、若手ピアニストとして、ウィーンの音楽シーンを支えた人々、貴族階級に受け入れられて行く。
そんな1790年代の作品、1番(track.5-7)と2番(track.1-3)のピアノ協奏曲を聴くのだけれど、これが面倒臭い。というのが、付されている番号と、作曲された年代があべこべでして... ボン時代、10代の頃に書き始められていた2番と、ウィーンに拠点を移した翌年、1793年に書き始められた1番、ともに、1795年に完成するも、後から作曲された方が先に出版されたことで、「1番」という番号が付されてしまい... ということで、レヴィンは、年代順に2番(track.1-3)からツィクルスをスタート。その2番は、ベートーヴェンが初めてウィーンを訪れ、モーツァルトを訪ねることになる前年、1786年に作曲が始められている。だからか、モーツァルト全盛期の記憶が、そのまま籠められているようで、若きベートーヴェンにとって、モーツァルトの存在が、どれほど輝かしかったが窺える。一方で、チラチラと後のベートーヴェンを思わせる表情も窺えて、興味を引くところも... そして、ポスト・モーツァルトの時代に作曲された終楽章(track.3)では、よりベートーヴェンを感じさせる牧歌的なロンドに彩られて、新しい時代が表れる。で、興味深いのは、その後で、1793年に作曲されていた、もうひとつの終楽章、ロンド(track.4)が取り上げられるところ... それは、決定版によく似ているものの、はっきりとモーツァルト風であって、2年という2つのロンドの間のベートーヴェンの成長、個性の伸長というものを詳らかとし、おもしろい。
という、2番を聴いてからの1番(track.5-7)は、冒頭から、ベートーヴェンらしさが聴こえ、おおっ!となる。それは、ポスト・モーツァルトの時代の方向性をしっかりと示し、力強く、雄弁!そして、花やぎに満ち、たおやかなるモーツァルトの時代は去ったのだなと... 1番が初演された1795年は、フランス革命戦争がハプスブルク帝国に影を落とし始めた頃で、翌、1796年には、ロンドンから帰国したハイドンが、戦時のミサを作曲し、帝都、ウィーンの人々を鼓舞している。で、そんな戦争がもたらす緊張感、フランス革命という社会変革への不安、新しい時代への躍動が、音楽そのものを揺さぶり、力強さ、雄弁さを生み出したのだろう。またそれが、19世紀の音楽の端緒となって、新しい時代の幕が上がるのだろう。が、2楽章、ラルゴ(track.6)では、モーツァルトを思わせるセンチメンタルさに彩られ、古き良き時代、アンシャン・レジームを懐かしむのか、切なくなってしまう。で、このナイーヴさもまた、ベートーヴェンの魅力。とはいえ、ベートーヴェンは過去に留まらない。続く、終楽章、ロンド(track.7)では、後のベートーヴェンを思わせる大胆なリズムを繰り出して、テンションが高い!そのリズムも、アンシャン・レジームとは一線を画し、野趣に溢れ、ロマン主義の到来を予感させる。いや、1790年代のベートーヴェンは、急成長を遂げている!過去から未来へ、改めて若きベートーヴェンの飛躍に惹き込まれる。
というベートーヴェンの歩みを、丁寧に捉えるレヴィン。1790年代のアントン・ヴァルターに基づくフォルテピアノを用い、そのピアノの内省的な性格、その中にも聴こえて来る鮮やかさ、瑞々しさを、実直に活かして、下手に飾ることなく、ひとつひとつの作品を、手堅く、淡々と響かせる。その無駄の無いタッチなればこそ、よりベートーヴェンの成長が際立ち、新たな発見もあるのか... 作品そのものを聴くだけではない、ベートーヴェンの歩みに寄り添う演奏が印象的で、若きベートーヴェンの興味深いパノラマを見せてくれる。そんなレヴィンを、がっしりと支えるガーディナー+オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティークの演奏がすばらしく... ガーディナーならではの明快なアプローチが、ベートーヴェンの綴った音符のひとつひとつを息衝かせ、ナチュラルに躍動させる。すると、若きベートーヴェンの、その「若さ」が鮮やかに引き立つようで、魅了される。そんなレヴィン、ガーディナー+オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティークに触れていると、帝都、ウィーンで、張り切っているベートーヴェンの姿が見えて来るようで、楽しくなる。

BEETHOVEN: PIANO CONCERTOS NOS.1 & 2・RONDO
LEVIN/ORCHESTRE RÉVOLUTIONNAIRE ET ROMANTIQUE/GARDINER


ベートーヴェン : ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 Op.19
ベートーヴェン : ピアノとオーケストラのためのロンド 変ロ長調 WoO 6
ベートーヴェン : ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 Op.15

ロバート・レヴィン(ピアノ : 1790年代製、アントン・ヴァルターに基づく)
ジョン・エリオット・ガーディナー/オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティーク

ARCHIV/453 438-2




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