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ハイドンを越えてゆくモーツァルト、ハイドン・セット。 [before 2005]

悪戦苦闘の1770年代から、輝かしき1780年代へ... モーツァルトの歩みを追っている、今月。前回、聴いた、1782年の作品、『後宮からの誘拐』により、ウィーンでオペラ・デビューを果たしたモーツァルト。まさにここから、モーツァルトの輝かしいウィーン時代が幕を開ける!それは、華やかな音楽シーンで活躍したというだけでなく、華やかな音楽シーンを彩る、才能ある人々と交流し、その音楽が一段と充実して行く頃で... そんなモーツァルトを象徴する音楽と言えるだろうか、弦楽四重奏曲のパイオニア、ハイドンにインスパイアされた、6つの弦楽四重奏曲集、ハイドン・セット。『後宮からの誘拐』が大成功した年に1曲目(14番)が作曲され、『フィガロの結婚』の作曲が始まる年、1785年に6曲目(19番)が完成、ハイドンに献呈され、その年に出版されたハイドン・セットは、ウィーン古典派の巨匠と若きホープの交感が生んだ、古典主義の結晶といえるのかも...
ということで、ハイドン・セット、6曲の内、1783年から1785年に掛けて作曲された、後半の4曲、モーツァルトの弦楽四重奏曲、16番と17番、「狩」(ASTRÉE/E 8844)と、18番と19番、「不協和音」(ASTRÉE/E 8845)を、モザイク四重奏団の演奏で聴く。


ハイドンに忠実な16番から、モーツァルトらしさがふわふわっと響き出す17番、「狩」...

E8844
モーツァルトの弦楽四重奏曲は、全部で23曲。その最初の作品は、1770年、14歳の時、ミラノから、マルティーニ神父が待つ、ボローニャへと旅する途中、ローディの街で作曲された。この作品は、ミラノの古典主義の先駆者、サンマルティーニの影響が見受けられる。その2年後、1772年、『ルチオ・シッラ』の上演のため、再びミラノへと旅した時に作曲が始まる、6つの弦楽四重奏曲、イタリアのスタイル、3楽章構成で書かれた2番から7番までが、ミラノ四重奏曲。1773年、7番をザルツブルクで完成させて間もなく、ウィーンを訪れて、ウィーン古典派の流儀、4楽章構成で書かれた8番から13番までの6曲が、ウィーン四重奏曲。それから悪戦苦闘の1770年代があって、再びモーツァルトが弦楽四重奏曲に戻って来るのは、ウィーンに拠点を移した翌年、1782年に作曲が始まる、ハイドン・セット。弦楽四重奏曲のパイオニア、ハイドンにインスパイアされた6つの弦楽四重奏曲は、モーツァルトの輝かしき1780年代、ウィーンでの実り多き日々をそのまま音楽にしているかのよう。
で、ハイドン・セット、4曲目、17番、「狩」(track.1-4)から聴くのだけれど... それは、モーツァルトの弦楽四重奏曲の中で、最も有名な作品... いや、有名であることに納得の音楽。1楽章の得も言えず花やぐ流麗な出だしから惹き込まれる!この花々しさは、まさに春... 「春」のタイトルを持つのは14番だけれど、この17番こそ「春」なのでは?と思ってしまうほど、その花々しさ、圧倒的。一方で、そのブルーミンな雰囲気、メロディアスなあたり、イタリアを思わせる?ハイドンにインスパイアされたハイドン・セットにして、ハイドンの手堅さとは一味違うのかも... いや、この自由な感覚がモーツァルト!弦楽四重奏というのは、作曲家の対位法の能力を測定する装置みたいなところがあるけれど、そういうアカデミックさに捉われない、まるで蝶々がふわふわと舞うようにメロディーを繰り出して、モーツァルトをより強く感じられるあたりが、この作品を最も有名にしている?
という17番、「狩」の後で、その前年の作品、16番(track.5-8)へと戻るのだけれど、ここではハイドンをしっかりと感じることができる。で、きっちりと構築されて行く音楽の、清々しさたるや!そう、ウィーン古典派の精神はこれだ... という、不思議な安心感を抱いてしまう1楽章。最初に提示されるテーマは、半音階を用いて、ちょっとアブストラクトな雰囲気もあるのだけれど、それをしっかりと対位法を用い展開し、作曲家、モーツァルトの技量をきっちり示す。いや、16番のきっちりとした音楽に触れてしまうと、17番、「狩」の方がアブストラクト?何だろう、印象主義を思わせるような色彩と自由さに思えて来て、おもしろい。で、そちらにモーツァルトをより強く感じられるという興味深さ... モーツァルトは、古典主義の時代のドビュッシー?そんなイメージの広がりを聴かせるモザイク四重奏団の演奏の瑞々しさ、豊潤さに魅了される。

MOZART Quatuors "La Chasse" K 458 & 428 Quatuor Mosaïques

モーツァルト : 弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調 K.458 「狩」
モーツァルト : 弦楽四重奏曲 第16番 変ホ長調 K.428

モザイク四重奏団
エーリッヒ・ヘーバルト(ヴァイオリン)
アンドレア・ビショフ(ヴァイオリン)
アニタ・ミッテラー(ヴィオラ)
クリストフ・コワン(チェロ)

ASTRÉE/E 8844




ベートーヴェンを引き寄せる?スケール感、18番から、19番、「不協和音」のギミック!

E8845
1784年、ウィーンのとある集いで、弦楽四重奏が演奏される。その第1ヴァイオリンをハイドンが、第2ヴァイオリンをディッタースドルフが、チェロをヴァンハルが、そして、ヴィオラをモーツァルトが奏でたのだとか... という記録を残しているのは、1783年から87年に掛けて、ウィーンのブルク劇場で歌っていたアイルランド出身のテノール、ケリー(ちなみに、この人、『フィガロの結婚』の初演で、バジリオを歌っている!)。しかし、豪華過ぎる!今となっては、眩暈を起こしそうなウィーン古典派四重奏団... で、誰の弦楽四重奏曲が演奏されたのだろう?気になる... いや、そういう中に身を置いていたわけだ、モーツァルト。こういう交流が、その音楽をより成熟させて行くのだなと... そうした輝かしき1780年代に書かれたハイドン・セットを追っていると、モーツァルトの成長を感じることができる。ハイドンに忠実な16番、モーツァルトらしさがふわふわっと響き出す17番、そして、ここで聴く、18番... 1785年に書かれたハイドン・セットの5曲目は、ハイドンの手堅さとモーツァルトの色彩感が融け合い、それまでとは一味違う、よりスケールの大きな音楽が展開されるのか、不思議な聴き応えがある。
何だろう?弦楽四重奏なのだけれど、4つ以上の広がりを感じてしまう。それは、ちょっと交響曲っぽい?弦楽四重奏の響きの豊かさを越えて、交響曲に近付くようなスケール感がある。全てが明晰でありながら、深みが感じられ、単に対位法を器用に繰り出すのではない、より音楽的な広がりを生むために対位法が最大限に駆使される。4つの楽器が綾なして、4つ以上のサウンドを生み出してしまうモーツァルト... ハイドンを越えたか?ベートーヴェンを引き寄せたか?続く、19番、「不協和音」(track.5-8)は、そのタイトル通り、不協和音が生み出す不穏さに包まれて始まるのだけれど、それはベートーヴェンの先、ロマン主義、いや、もっと先、19世紀末すら予見するようで、ただならない。モーツァルトの無邪気さというか、チャレンジングなあたりは、時折、時代を置いて行ってしまうところがある。そんな大胆な序奏から一転、軽やかに古典主義が繰り広げられるのも、この作品の魅力。なんとまあ、あっけらかんと!とはいえ、時折、毒づくようなところがあって、「不協和音」のギミックさは、全体にも広がる。という、ハイドン・セットの最後は、またそれまでにない個性を響かせ、刺激的。
さて、思いの外、ヴァラエティに富むハイドン・セットを、ピリオドの弦楽四重奏団、モザイク四重奏団の演奏で聴いたのだけれど... 彼らの見事な演奏があって、ハイドン・セットの盛りだくさんな魅力が、よりはっきりと表れるよう。ピリオドならではの明晰さが、鮮やかにモーツァルトの音楽を捉える一方で、ピリオドにして、より豊潤なサウンドを奏でるモザイク四重奏団の演奏が、より発色の良いモーツァルトを響かせて、イメージはさらに膨らむよう。それは、美しくありながら、とても刺激的!

MOZART Quatuors "Les Dissonances" K 465 & 464 Quatuor Mosaïques

モーツァルト : 弦楽四重奏曲 第18番 イ長調 K.464
モーツァルト : 弦楽四重奏曲 第19番 ハ長調 K.465 「不協和音」

モザイク四重奏団
エーリッヒ・ヘーバルト(ヴァイオリン)
アンドレア・ビショフ(ヴァイオリン)
アニタ・ミッテラー(ヴィオラ)
クリストフ・コワン(チェロ)

ASTRÉE/E 8845

でもって、ハイドン・セット、最初の2曲は、こちら...

モーツァルト、悪戦苦闘の1770年代から、輝かしき1780年代へ...
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