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コジ・ファン・トゥッテ... アンシャン・レジーム、最後の夢。 [before 2005]

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3月、弥生... 弥(いよいよ)以って生い茂る、という意味なのだそうです。そうか、3月、生い茂るか... で、世の中的にも、いろいろ問題が生い茂っています。もう、笑っちゃうくらいに... いや、笑い事ではないのだけれど、萌え出るのは、芽吹きばかりでないのが、「酉年騒ぐ」春の傾向でしょうか。それにしても、闇は深いですね。深いけど、明るみになっていることが、凄い... いや、闇が掘り起こされるのもまた、春、なのかもしれない(まさに、センテンス・スプリングの出番だは... )。というあたりは、さて置きまして、音楽です。前回、モーツァルトの春めく歌曲を聴いて、ふわっと癒されてしまったので、3月はモーツァルトで行こうかなと... けど、今回、聴いてみるのは、胸騒ぎのオペラ... いや、一騒動起きてしまう物語でして、「酉年騒ぐ」春にはベストかも...
ということで、ルネ・ヤーコプスの指揮、コンチェルト・ケルンの演奏、ヴェロニク・ジャンス(ソプラノ)、ベルナルダ・フィンク(ソプラノ)らの歌で、モーツァルトの問題作?オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』(harmonia mundi FRANCE/HMC 901663)を聴く。

台本作家、ロレンツォ・ダ・ポンテ(1749-1838)とのコラヴォレーションによる、モーツァルトのオペラ・ブッファ、ダ・ポンテ三部作... その最初を飾ったのが、みんな大好き、モーツァルト、不朽の名作、『フィガロの結婚』。なのだけれど、1786年、5月、ウィーン、ブルク劇場での初演は、そこそこ成功するも、使用人たちの大活躍と伯爵がやり籠められ謝罪に至るという楽しい下剋上が問題視され、すぐに、マルティン・イ・ソレールの『ウナ・コザ・ラーラ』に差し返されてしまう(モーツァルトは、次作、『ドン・ジョヴァンニ』で、このことを当て擦っている!)。が、その年の年末、プラハでは大成功(によって、当地で委嘱され、翌、1787年に初演さたのが、ダ・ポンテ三部作、2番目の作品、『ドン・ジョヴァンニ』... )!やがて、その人気が、ウィーンでの再演へとつながり、3年後、1789年にウィーンで再演された『フィガロの結婚』には、ヨーゼフ帝も臨席。上演がお気に召したようで、次なる作品が委嘱される。そうして誕生するのが、ダ・ポンテ三部作の最後を飾る、『コジ・ファン・トゥッテ』。
『フィガロの結婚』の1幕、7場、お調子者の小姓、ケルビーノのせいで、フィガロの婚約者、スザンナが不貞を疑われてしまう場面で歌われる、コジ・ファン・トゥッテ... 女はみんなこうしたもの... の台詞から派生した?『コジ・ファン・トゥッテ』は、女性の貞節を試すという、結構、ゲスな物語。で、そんな物語を考えたのが、ヨーゼフ帝だったというから、ちょっと驚かされる。啓蒙専制君主の優等生も、その思考は単純にスケベ・オヤジだったのかも?で、皇帝が考えた物語を、きちんと台本に起こしたダ・ポンテ、それを作曲したモーツァルト... 準備は着々と進むのだったが、皇帝の末の妹、マリー・アントワネットの嫁ぎ先で、フランス革命が勃発、その心配もたたったか、病に伏せってしまうヨーゼフ帝... 皇帝を元気付けようと、奮起する制作陣... 1790年、1月に『コジ・ファン・トゥッテ』は初演を迎える。が、皇帝はそれを見ることなく世を去り、上演も打ち切られてしまう。という背景を知ってしまうと、ゲスな物語も、ちょっと印象が変わるのか... 楽屋落ちで盛り上がる、終焉を迎えようとしている啓蒙主義の時代のオヤジたちの束の間の楽しい談合が目に浮かぶようで、愛おしさを感じなくもない。
いや、二組のカップルの男性の方が異国人に変装して、それぞれの恋人に言い寄るという悪ふざけは、やっぱりゲス... が、この入れ替わりを巧みに利用するモーツァルトの音楽は、ちょっと凄い。交差する人間模様を、妙なるアンサンブルに昇華して、小気味良く物語を展開するあたり、『コジ・ファン・トゥッテ』の真骨頂。一方で、カップルの女性の方、フィオルディリージとドラッベラの姉妹の対比もおもしろい。真面目なフィオルディリージが歌うアリアは、オペラ・セリアを思わせる端正さを示す一方、ちょっと浮気なドラベッラが歌うアリアは、オペラ・ブッファらしいキャッチーな仕上がり... ひとつのオペラの中で、テイストの違う音楽を並べて物語を動かす器用さは、他のダ・ポンテ三部作では見受けられないもの。本来、ライトなオペラ・ブッファでも、より構築的な音楽を志向するチャレンジングなモーツァルトの姿勢は、やっぱりタダモノではない。改めてこのオペラに向き合うと、単に楽しい(いや、悪乗りか?)だけでない、モーツァルトの真剣さがビンビン感じられて、圧倒される。
という『コジ・ファン・トゥッテ』を、活き活きと繰り出すヤーコプス!いや、歌手出身のマエストロならではの、歌うことに偽りが無い、息衝くドラマにただただ驚かされたのは、この録音に初めて触れた時... それはもう衝撃的で、こんなモーツァルトがあるのかと目から鱗だったのだけれど、今、改めて聴くと、また違った手応えを感じる。ヤーコプスならではの息衝く感覚は、今や、それほど珍しいものではなく、そういう点では、初めて触れた時の鮮烈さは、幾分、薄れてしまった感も無きにしも非ずなのだけれど、鮮烈さが薄れたことで、そもそも音楽に存在する確かさが、しっかりと聴こえて来るようで、そこに驚かされる。いや、今だからこそ、モーツァルトのチャレンジングな音楽が、きちんと聴こえて来る気がする。つまり、ヤーコプスは、思い付きでモーツァルトを鳴らしていない... コンチェルト・ケルンの演奏も含め、今だからこそ感じられる確かな演奏に唸ってしまう。そこに、実に手堅い布陣を見せる歌手たちのすばらしいパフォーマンスが乗って、聴き入るばかり... 聴き入って、ゲスな物語を乗り越えてしまうモーツァルトの戦略の鋭さに、感服させられるばかり。

Mozart
Cosi fan tutte
René Jacobs


モーツァルト : オペラ 『コジ・ファン・トゥッテ』 K.588

フィオルディリージ : ヴェロニク・ジャンス(ソプラノ)
ドラベッラ : ベルナルダ・フィンク(ソプラノ)
フェランド : ヴェルナー・ギューラ(テノール)
グリエルモ : マルセル・ボーネ(バリトン)
ドン・アルフォンゾ : ピエトロ・スパニョーリ(バリトン)
デスピーナ : グラシエラ・オッドーネ(ソプラノ)
ケルン室内合唱団

ルネ・ヤーコプス/コンチェルト・ケルン

harmonia mundi FRANCE/HMC 901663




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