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春への憧れ... 風をつかまえて、風になる、モーツァルト... [before 2005]

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さて、2月が終わります。いつもより短い一ヶ月、さらりと過ぎてしまうかと思いきや、ヘヴィーな一ヶ月。と言うより、年が明けてまだ二ヶ月なのに、2017年、あまりに濃厚。次から次と事が起こり、期待通り、酉年騒ぎまくる展開。いや、一重に時代の転換点なのでしょう... もはや老年を通り越して地縛霊となった20世紀、"近代"と、中二病、真っ只中、成熟し切れない21世紀、"現代"の綱引き... 綱を引き切って、"現代"が大人になるまで、この騒々しさは続くのでしょうね。ふぅ、力が入る場面はまだ続きます。疲れてしまいます。そんな2月、ルネサンスとバロックの音楽史における綱引きを見つめて来たのだけれど、やっぱり濃厚だった!そして、時代の転換点というのは、否が応でも騒々しくなるものなのだなと... で、そんな音楽をすっかり味わい尽くしたら、やっぱり、疲れたァ。ので、ここは春のそよ風を思わせる、軽やかな音楽で、気分転換してみようかなと...
ということで、バーバラ・ボニーのソプラノ、ジェフリー・パーソンズのピアノで、春への憧れ!モーツァルトの歌曲集(TELDEC/2292-46334-2)。世の中が騒ごうとも、季節は巡り、日々、春めくものを感じる中、モーツァルトを聴いて、肩の力を抜いてみる。

はぁ~ 春だなァ。なんて、しみじみしてしまう、モーツァルト・サウンド... この軽やかさ、やわらかさは、音楽の洗練の極みにある気がする。初期バロックのように、鋭く伝統に挑むのでもなく、19世紀の音楽のように、アカデミズムで武装されるでもない、まるで風をつかまえるようなモーツァルトの音楽、エフォートレス... だから、現代人の耳には、癒しになるのだろうなァ(って、今、まさに、癒されてる!)。ふわっとしていて、甘やかな匂いがして、耳を心地良く擽り、思わず笑みがこぼれてしまう。が、次の瞬間には、ふわっとどこかへ流れて行ってしまう儚さがあって、そうしたあたりに切なさも漂って、余韻を残す。あまりに心地良く、儚いものだから、つい軽く見てしまいがちだけれど、これを可能とするのは、モーツァルトの天賦の才があってこそ... それは、時として、ロジックを越えたものであって、だからこそ、他の作曲家には到達し得ない音楽を響かせることができるように感じる。で、「歌う」という、音楽の原点に立ち返る歌曲では、よりモーツァルトらしさが立って来るのかもしれない。まさに風をつかまえるようにメロディーが綴られ、そのメロディーを追えば、モーツァルトは風そのものになる?
なんて思えてしまう、ボニーが歌うモーツァルトの歌曲集。始まりは、モーツァルトが12歳で作曲したという「歓喜に寄す」。12歳という年齢が示されると、さすがは神童!と感服せずにいられないのだけれど、実際、聴いてみると、やはり12歳... よりシンプルな音楽が展開されていて、イタリア古典歌曲のよう。とはいえ、その素直さの中にも風は吹き始めているように感じられ... いや、このシンプルさが沁みる!で、このシンプルさにモーツァルトの凄さを見出す。ボニーは、22曲のモーツァルトの歌曲を取り上げ、最後の2曲を除いて、全てケッヘル番号順、つまり年代順に並べており、聴き進めて行くにしたがって、風がより感じられるようになって行くのが印象的。で、風をしっかり感じ始めるのが、3曲目、21歳、青年となったモーツァルトによる、フランス語の詩に作曲した「鳥たちよ、毎年」(track.3)。フランス語のイメージからか、よりメロディアスな印象を受け、そのあたりが、シューベルトを予感させて、興味深い。裏を返せば、シューベルトが如何にモーツァルトにインスパイアされていたか、古典主義の延長線上にいたかを再確認させられるものなのかもしれない。何より、シューベルトに負けず、歌心を見せるモーツァルト... オペラのアリア、コンサート・アリアとも違う、よりシンプルな歌曲なればこその歌謡性を、さり気なく膨らませて、聴く者を包みつつ、やさしくそよいで行く。よりエフォートレスなモーツァルト...
そうして、晩年へ。ケッヘル番号が500番台に入って来ると、エフォートレスなモーツァルトに翳を帯びるところもあり、そのあたりに、ロマン主義の到来を予感させるところがあって、モーツァルトがシューベルト的世界へと近付いて行くかのよう。「別れの歌」(track.13)の滲み出すようにエモーショナルなあたり、「夕べの想い」(track.15)の情景的で厭世的なあたりに触れると、ロマン主義者モーツァルトもあり得た気がしてしまう。一方で、その最期の年、1791年に書かれた作品は、屈託の無いモーツァルトが弾けて、「春への憧れ」(track.18)の、まさに春の楽しさを指折り数えて待つワクワクとする感覚、「こどもの遊び」(track.20)の、軽快なリズムに乗って弾ける楽しげな表情は、キャッチーで、輝いている!で、この輝きは、天国的にも思えて来る?それが死の年の作品だと知るからそう感じられるのかもしれないけれど、輝けば輝くほど切なさが滲むよう。
という、モーツァルトの歌曲... ボニーが歌うからこその輝きが間違いなくある。彼女の癖が無く、ニュートラルな歌いがあってこそ、風のように感じられるモーツァルトだったかもしれない。いや、何度、聴き返しても、飽きることなく、心地良い。つまり、ただならずナチュラルな次元にある歌なのだろう。モーツァルトのシンプルさを、あるがまま丁寧に捉えて、そっと聴き手に送り出すようなボニーの歌声。モーツァルトのみならず、彼女の存在がエフォートレス... そして、そんな歌声を支えるパーソンズのピアノがまたエフォートレス... ボニーが歌うメロディーに対し、徹底して寄り添いつつ、さり気なく、モーツァルトらしさをきらめかせて来る。ボニーの歌声もさることながら、パーソンズのキラキラしたピアノにも惹き込まれる。

MOZART: LIEDER BONNEY

モーツァルト : 歓喜に寄す K.63
モーツァルト : 落ち着きはらってほほえみながら K.152
モーツァルト : 鳥たちよ、毎年 K.307
モーツァルト : さびしく暗い森で K.308
モーツァルト : おお、神の子羊 K.343
モーツァルト : おいで、いとしのツィターよ K.351
モーツァルト : 孤独に寄す(私の慰めとなれ) K.391
モーツァルト : 魔術師 K.472
モーツァルト : 満足 K.473
モーツァルト : すみれ K.476
モーツァルト : 自由の歌 K.506
モーツァルト : ひめごと K.518
モーツァルト : 別れの歌 K.519
モーツァルト : ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いた時 K.520
モーツァルト : 夕べの想い K.523
モーツァルト : クロエに K.524
モーツァルト : 夢の像 K.530
モーツァルト : 春への憧れ K.596
モーツァルト : 春 K.597
モーツァルト : こどもの遊び K.598
モーツァルト : 男たちはいつまでもつまみ食いしたがる K.433
モーツァルト : 喜びの気持ちを K.579

バーバラ・ボニー(ソプラノ)
ジェフリー・パーソンズ(ピアノ)

TELDEC/2292-46334-2




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