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初期バロック、情念論、巨匠、モンテヴェルディの充実。 [before 2005]

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2017年は、モンテヴェルディの生誕450年のメモリアル!ということで、モンテヴェルディとその周辺、ルネサンス末から初期バロックに掛けての音楽をいろいろ聴いて来た今月。ポリフォニーからモノディへ、音楽史における最大のパラダイム・シフトが起きた時代は、音楽のみならず、その背景までが躍動していて、何だか、ただならない。16世紀後半から17世紀前半に掛けてを、改めて見つめると、追い切れないほどに、あらゆることがつながり、また、つながったところから、次々に新たな音楽が生まれて、時代そのものがパワフルに感じられる。黄金期ルネサンスの壮麗さ、盛期バロックの華麗さの狭間で、一見、地味な印象を受けなくもないモンテヴェルディが生きた時代だけれども、長い音楽史を振り返ると、最も希有な時代だったように感じた今月...
ということで、再びモンテヴェルディに戻り、リナルド・アレッサンドリーニ率いる、コンチェルト・イタリアーノによる、モンテヴェルディの名作選、"LE PASSIONI DELL'ANIMA"(OPUS 111/OPS 30-256)を聴く。そして、モンテヴェルディの時代に一区切り付ける。

ルネサンス芸術の拠点のひとつであったマントヴァ公の宮廷の楽長... ルネサンス後半、ヨーロッパに大きな影響力を及ぼしたヴェネツィア楽派のトップ、サン・マルコ大聖堂の楽長... それらを務めたモンテヴェルディは、初期バロックを代表する巨匠だと言える。そして、ファーゾロ(前回、聴いた、謎めいていた作曲家... )の後で、モンテヴェルディを聴くと、「巨匠」の重み、いや、その確立された音楽の安定感に、唸ってしまう。もちろん、ファーゾロの音楽がダメだというのではない。巨匠たちの活躍を向こうに回し、絶妙なるB級感を以って、巨匠たちには到達し得ないヴィヴィットさを響かせるのだから、そのセンス、まったく希有なもの... で、これもまた初期バロックであって、エスタブリッシュメントと言うべきモンテヴェルディの音楽と並べれば、時代の音楽の幅に圧倒され、初期バロックのおもしろさに、改めて魅了されてしまう。そして、巨匠、モンテヴェルディ... ポリフォニーからモノディへ、音楽史における最大のパラダイム・シフトを経験し、その難しい中をサヴァイヴしながら生み出された音楽は、過渡的なところがあったとしても、弱さを感じさせない。いや、エスタブリッシュメントならではの上質さたるや!ファーゾロには無い手堅さ、揺ぎ無さを感じ、さすがは巨匠!これぞ、マスター・ワークス!となる。
で、そんな思いを見事に強める"LE PASSIONI DELL'ANIMA"。魂の情念という凄いタイトルなのだけれど、モンテヴェルディと同時代を生きたデカルトの『情念論(Les passions de l'ame)』にインスパイアされているのか?『ウリッセの帰還』のシンフォニアに始まって、『オルフェオ』、『ポッペアの戴冠』のオペラからのナンバーに、『音楽の諧謔』、マドリガーレ集からの作品が並び、「アリアンナの嘆き」(track.5)といった、巨匠を代表する作品もしっかり押さえて、愛、憎しみ、欲望、喜び、悲しみ、驚き、情感に溢れる作品で織り成す。いや、それはまさに初期バロック!感情を前面に押し出したエモーショナルな音楽の数々は、モンテヴェルディの生きた時代そのものか... 一方で、アレッサンドリーニは、タイトルとは裏腹に、情念を強調するような素振りは、あまり見せない。どちらかと言うと、軽やかにひとつひとつの作品を捉えて、楚々とした表情を引き出しているのが印象的。すると、初期バロックのエモーショナルさは抑えられ、より音楽的なやわらかさが強調され、アルバム全体にナチュラルな流れを生み出す。この力みの無い展開が、このアルバムの大きな魅力になっているように感じる。
で、その流れは、新たなドラマを紡ぎ出すのか... アレッサンドリーニは、情感に溢れる歌の数々を巧みに並べ、流れに抑揚を付ける。例えば、第2作法を用いたアリオーソ「苦悩もかほどに甘く」(track.8)の、切々とした歌いの後に、第2作法以前の多声マドリガーレ、「わたしには死も恐ろしくない」(track.9)を置き、そのポリフォニーが、アリオーソに応えるかのような表情を生み出して、じわりドラマティック。筋書きは無いまでも、アレッサンドリーニの編集によるパスティッチョのような仕上がりが絶妙。序曲や間奏曲のようにシンフォニア(track.1, 4, 7, 14)を挿んで、アクセントとしているのも効いている。最後は、マントヴァ公の宮廷のために書かれたバレット『ティルシとクロリ』(track.17)で、華やかに盛り上がって閉じられる"LE PASSIONI DELL'ANIMA"。ポリフォニーからモノディへ、音楽史における最大のパラダイム・シフトを乗り切った巨匠ならではの、マドリガーレからオペラまで、ヴァラエティに富む音楽を素材に紡ぎ出される新しいドラマは、輝きに充ちている。
その輝きを生み出す、アレッサンドリーニ+コンチェルト・イタリアーノの歌と演奏が見事!モンテヴェルディのマドリガーレ集の録音で頭角を現した彼らだけに、勝手知った巨匠の音楽であって、なればこその卒の無さと、そこはかとなしに漂う自信が、モンテヴェルディの音楽をしっかりと引き立てて、すばらしい。どこを切り取ってもクリアで、迷いなく、何よりもバランス感覚に優れ、感情と音楽が美しく折り合い、ひとつひとつの作品が活き活きとした表情を放つ。またそこには、巨匠の旨味成分を煮出すような感覚もあっておもしろい。そして、アレッサンドリーニの冴え渡るセンス!"LE PASSIONI DELL'ANIMA"、魂の情念、熱いタイトルだけれど、アレッサンドリーニは巧みにその情念を整理して、音楽の存在にこそ輝きを与える。だからこそ、作曲家、モンテヴェルディの魅力がより確かなものとなり、その音楽に魅了される。

MONTEVERDI RINALDO ALESSANDRINI

モンテヴェルディ : シンフォニア 〔オペラ 『ウリッセの帰郷』 第1幕 第6場〕
モンテヴェルディ : 美しさにふさわしき称賛 〔『音楽の諧謔』 より〕
モンテヴェルディ : 黄金の髪、美しき宝 〔マドリガーレ集 第7巻 より〕
モンテヴェルディ : シンフォニア 〔オペラ 『オルフェオ』 第2幕〕
モンテヴェルディ : アリアンナの嘆き
モンテヴェルディ : 美しき絆 〔『音楽の諧謔』 より〕
モンテヴェルディ : シンフォニア 〔オペラ 『ウリッセの帰郷』 第2幕 第12場〕
モンテヴェルディ : 苦悩もかほどに甘く 〔カルロ・ミラヌッツィの独唱用の美しく平易な歌の諧謔』 第4巻〕
モンテヴェルディ : わたしには死も恐ろしくない 〔マドリガーレ集 第2巻 より〕
モンテヴェルディ : 「その愛らしい唇は高貴なルビーだ」 〔オペラ 『ポッペアの戴冠』 第2幕 第6場〕
モンテヴェルディ : 愛よ、わたしはどうすればよいのか 〔マドリガーレ集 第7巻 より〕
モンテヴェルディ : 麗しき乙女 〔『音楽の諧謔』 より〕
モンテヴェルディ : 眠っているの、ああむごい心 〔マドリガーレ集 第7巻 より〕
モンテヴェルディ : シンフォニア 〔オペラ 『ポッペアの戴冠』 第2幕 第1場〕
モンテヴェルディ : 美しい羊飼いのまなざしより 〔マドリガーレ集 第9巻 より〕
モンテヴェルディ : リディア、我が心に刺さったとげよ 〔『音楽の諧謔』 より〕
モンテヴェルディ : 『ティルシとクロリ』 〔マドリガーレ集 第7巻 より〕

リナルド・アレッサンドリーニ/コンチェルト・イタリアーノ

OPUS 111/OPS 30-256




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