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第2作法、モンテヴェルディ、革新の洗練... [before 2005]

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1530年にローマで出版された『様々な音楽家のマドリガーレ集』が、最初のマドリガーレの曲集とされている。で、これを契機に、一気にマドリガーレ集が出版されるようになる。それはもう、マドリガーレ・ブームと言っていいものなのかもしれない。そのブームの中心にいたのが、イタリアで活躍していたフランドル楽派の巨匠たち。得意のポリフォニーをイタリア語の詩に施し、イタリア各地の宮廷、そこに集うセレヴたちを魅了した。やがてそこに、イタリア人の作曲家たちも加わる。イタリア語のネイティヴ話者たちによるマドリガーレは、詩に綴られた感情を丁寧に拾い、ポリフォニーに捉われない音楽を展開、表情に富むマドリガーレへと至る。そこに、ルネサンス・ポリフォニーを脱するモノディが発明されると、それをも取り込み、初期バロックの時代のマドリガーレは、一筋縄には行かない多様さを見せることに... そうして、行き着いた先、「第2作法」によるマドリガーレを追う。
マドリガーレの大家、モンテヴェルディが、ヴェネツィア、サン・マルコ大聖堂の楽長に就任(1613)し、その仕事を順調に進めていた頃、1619年、ヴェネツィアにて出版された、新しい時代のマドリガーレ... クラウディオ・カヴィーナ率いる、ラ・ヴェネクシアーナの歌と演奏で、「コンチェルト」と銘打たれたマドリガーレ集、第7巻(GLOSSA/GCD 920904)を聴く。

16世紀末、フィレンツェでモノディが発明された頃、モンテヴェルディもまた、ルネサンス・ポリフォニーを脱するようなマドリガーレを発表していた。それに触れた、ボローニャの音楽理論家、アルトゥージは、伝統を逸脱する新しい音楽の在り方に苦言を呈する、『ラルトゥージ、あるいは、今日の音楽の不完全さについて』という理論書を1600年に発表。新しい音楽の代表としてモンテヴェルディを槍玉に挙げるのだったが、1600年というと、フィレンツェでオペラ『エウリディーチェ』が上演された年、時代は新しい音楽の方へと動き出す。そうした流れを駆って、1605年に発表されたモンテヴェルディのマドリガーレ集、第5巻の序文には、それまでのルネサンス・ポリフォニーを「第1作法」と呼び、アルトゥージに攻撃された新しい時代の音楽を「第2作法」という言葉を用い、自信を持って紹介する。そうして紹介されたマドリガーレ集、第5巻の特筆すべき革新は、通奏低音を用いて歌われるマドリガーレが含まれること... まさに、翌、1606年から制作が始まる、モンテヴェルディの最初のオペラ、『オルフェオ』の下準備がそこでなされていたわけだ。その後、ヴェネツィア、サン・マルコ大聖堂の楽長に就任(1613)したモンテヴェルディ。作曲家としてよりも楽長としての仕事に追われる中、マドリガーレ集、第6巻を出版(1614)。やがて、仕事が落ち着くと、「第2作法」をより明確にした、「コンチェルト(通奏低音を伴った声楽作品... 協奏曲の概念が形成されるのはまだ先... )」というタイトルを持つマドリガーレ集、第7巻を出版(1619)する。
ということで、このマドリガーレ集、第7巻、全30曲、2枚組を聴くのだけれど... 最初のシンフォニアから、新しい時代、全開!それはもう、オペラの序曲のようで、荘重な器楽アンサンブルによる演奏が、「マドリガーレ」という言葉からイメージさせるスケール感を越えて、充実した音楽を響かせる。そのシンフォニアから幻想的に浮かび上がるテノールの歌声... 第1曲、シンフォニアと、通奏低音を伴ってテノール・ソロが歌う、第2曲、「チェトラの調べに合わせて」が、マッシュアップされたような、第7巻の扉なのだけれど、器楽と声楽の対峙が、まさに初期バロックにおける「コンチェルト」でもあって、なかなか興味深い。また、テノールが歌う詩(マリーノによる... )が、自らのスタイル、歌を高める!と宣言していて、「コンチェルト」としての新しい時代のマドリガーレへの意気込みが滲み出ている。いや、チェトラ=竪琴の調べに合わせて歌うとなると、ずばりオルフェウスを思い起こさせるわけで、もはや『オルフェオ』のワン・シーン。何とも言えない雰囲気に包まれ、魅了されずにいられない。
とはいえ、全てのナンバーがオペラのアリアのようかというと、そうでもなくて、多くが重唱で歌われ、例えば、2曲目に取り上げられるソプラノの二重唱、ロマネスカ「ああ、恋人はどこに」(disc.1 track.2)は、コーリ・スペッツァーティを思わせるところもあり、それが音楽としてのおもしろさ、サウンドの豊潤さを引き立て、印象的。通奏低音を伴って、雄弁に歌われつつも、その歌に過去がわずかに香り、雅やかな空気で包む。このあたりが、オペラにおけるレチタール・カンタンドの鋭い感情表現とは一線を画し、マドリガーレとしての魅力をふわっと響かせて、魅惑的。いや、重唱という形で、詩に傾倒し過ぎる(?)革新に染まり切ることを避け、それによって、より音楽的な表情を引き出すモンテヴェルディのしたたかさというか、巧さに、感心。「コンチェルト」として通奏低音を全てに用い、新しい時代を謳いながらも、独自のバランスを生み出す、第7巻。そのバランスに、盛期バロックへと向かう音楽に道筋を付けるようでもあり、近視眼的にならず、より先を見据えるようで、興味深い。
というマドリガーレを、カヴィーナ+ラ・ヴェネクシアーナで聴くのだけれど... まず、歌手たちの澄んだ歌声に惹き込まれる!個性が強く打ち出されるようなことはなく、どこか楚々としていて、ひとつひとつのナンバーを丁寧に歌い綴る実直さが印象的。そうして編まれる端正なアンサンブルが、モンテヴェルディの音楽の美しさを引き立てる。得てして劇的になりがちな初期バロックだけれど、ラ・ヴェネクシアーナの歌手たちは、陰影を濃くせず、やわらかさと輝きを以って音楽を捉え、第7巻の魅力をナチュラルに引き出している。だからこそより美しく繰り出される第7巻であって、全てのナンバーが瑞々しく響き、2枚組も、スーっと一気に聴けてしまう。そんな歌手たちに寄り添う通奏低音がまた魅力的。チェンバロを弾くボニッツォーニを始め、声の後ろで、キラキラと煌めくようなサウンドを織り成し、どこかファンタジック。一方で、器楽アンサンブルの落ち着いた演奏は、マドリガーレに厚みを持たせ、新しい時代の音楽の雄弁さを聴かせ、見事。

CLAUDIO MONTEVERDI SETTIMO LIBRO DI MADRIGALI
LA VENEXIANA


モンテヴェルディ : 「コンチェルト」 マドリガーレ集 第7巻

クラウディオ・カヴィーナ/ラ・ヴェネクシアーナ

GLOSSA/GCD 920904




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