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マドリガーレ諸相、フランドルから、イタリアを巡って... [before 2005]

モンテヴェルディは、マドリガーレの大家である。とか、普段、何気なく「マドリガーレ」という言葉を使いつつも、改めて考えると、マドリガーレって何だろう?となる。どうも掴み所がないように思えて... そもそもマドリガーレはいつ始まるのか?まず、14世紀、イタリア、トレチェントの音楽に、イタリア語の詩を歌う、多声の歌曲としてマドリガーレは登場する。が、15世紀には廃れてしまい、モンテヴェルディらによるマドリガーレは、ルネサンス後半、16世紀に始まるとのこと... フランドル楽派全盛の時代、活躍の場が限られていたイタリアの作曲家たちは、イタリア語の詩にシンプルな音楽を付けて歌ったフロットラを生み出す。すると、イタリアで活躍していたフランドルの作曲家たちも、それに刺激を受けて、ポリフォニックな歌曲を生み出す。それが、マドリガーレの始まり... で、そこからの展開が一筋縄でなかった。ア・カペラで歌われていたものが、やがて伴奏が付き、それが拡大して、マドリガル・コメディといった音楽劇に発展。モンテヴェルディに至っては、ほとんどオペラのような作品までマドリガーレ集に収録。マドリガーレの掴み所の無さは、時代とともに柔軟に変容して行ったからなのかもしれない。
ということで、初期バロックの時代に入ってからのマドリガーレ。で、ポリフォニックな伝統を守ったマドリガーレ。リナルド・アレッサンドリーニ率いる、コンチェルト・イタリアーノが歌う、フレスコバルディのマドリガーレ(OPUS 111/OPS 30-133)と、ウィリアム・クリスティ率いる、レザール・フロリサンが歌う、ディンディアのマドリガーレ(ERATO/3984-23418-2)を聴く。


フレスコバルディ、フランドルから、マドリガーレ。古風な響きが生む透明感...

OPS30133
鍵盤楽器の大家がマドリガーレ?という感じになるのだけれど、実は声楽作品を多く残しているフレスコバルディ... オペラこそ無いものの、宗教的なものから世俗的なものまで、多彩な声楽作品を書いていて、そうした中に、マドリガーレもあって... でもって、フレスコバルディは、ルネサンス末、先鋭的なマドリガーレの中心地、フェッラーラで生まれ、音楽を学んでいる。かのジェズアルドも訪れ、インスパイアされたフェッラーラの宮廷。その楽長、ルッツァスキ(ca.1545-1607)は、マドリガーレの大家として名声を博し、フレスコバルディ少年も師事し、大きな影響を受けている。となると、フレスコバルディは、フェッラーラのマドリガーレの継承者になり得たのだろう... が、1597年、フェッラーラ公国が教皇領に吸収されてしまったことで、フェッラーラの宮廷は終焉(正しくは、モデナに移る... が、かつての栄光を取り戻すことはできなかった... )を迎える。フレスコバルディも宮廷からの支援を失ってしまうのだったが、14歳にしてフェッラーラ楽壇を主導するアカデミア・デラ・モルテのメンバーに選ばれた逸材は放っておかれるわけもなく、フェッラーラ公の縁戚、ベンティヴォーリョ家(かつてボローニャ市国を支配した僭主の一族。1506年、教皇、ユリウス2世により、その地位を追われた後は、フェッラーラの廷臣となっていた... )が支援。後に枢機卿となるグイド・ベンティヴォーリョの伝手で、ローマに進出。1607年、グイドが、教皇庁の大使として、スペイン領ネーデルラントの首都、ブリュッセルに赴任すると、付き従い、フランドル楽派の故地で大いに刺激を受けることに... そこで作曲され、1608年に出版されたのが、ここで聴く、マドリガーレ集。
フランドル楽派の故地で作曲されたというイメージがあるからだろうか?イタリアのマドリガーレとは一味違って、響きに透明感が感じられ、新鮮?新しい時代に踏み出そうとしていた師、ルッツァスキや、我が道を極め、驚くべきマニエリスムに至ったジェズアルドに比べると、フレスコバルディのマドリガーレは、とても素直な響きが生まれていて、バロックを予感させたイタリアのマドリガーレの肉感的で危うげな表情と打って変わって清々しい。つまり、古風?古風なのだけれど、新鮮!ルネサンス・ポリフォニーを踏襲しながら、見通しの良いアンサンブルを織り成すバランス感覚は、鍵盤楽器の大家として見事に対位法を操った、後のフレスコバルディを予感させる端正さを見出す。もちろん、このマドリガーレが、フランドル向けに作曲されたこともあるのだろうけれど、フランドルが性に合っていることに、フレスコバルディの真髄を見出せた気がする。いや、興味深い...
という、フレスコバルディのマドリガーレを、瑞々しく歌い紡ぐ、アレッサンドリーニ+コンチェルト・イタリアーノ。イタリアらしい、より息衝く音楽を展開できる、というよりそれが魅力の彼らが、見事にスイッチを切り替えて、すっきりとした、真っ直ぐな歌声を繰り出し、美しい音楽のオブジェクトを積み上げて行く。マドリガーレならではの詩の表情を前面に出すのではなく、音楽としての響きの美しさにこだわり、そうして引き立つ、フレスコバルディの音楽性。声を以ってしても、その音楽は見事!

FRESCOBALDI: MADRIGALI ・ CONCERTO ITALIANO

フレスコバルディ : 我がために幸い多き暁が 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : もしもこの苦しみが 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : ああ美しき人よ 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : いかなる天体から 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : なぜたびたび見ると 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : 愛よ、世界がおまえを呼んでいる 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : おまえもわたしを避けるのか 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : もしもわたしの内気な凍りついた舌に 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : いとも愛らしきフィッリ 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : なぜ逃げるのか 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : リディアもやってきて 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : あなたを見つめていると 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : ああ、わたしは力尽きて死んで行く 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : 我が心よ 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : あなたがわたしを捨てたときに 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : ああ、それではここに 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : もしあなたが遠く離れてしまったら 〔マドリガーレ集 第1巻〕
フレスコバルディ : どうして失うことができよう 〔マドリガーレ集 第1巻〕

リナルド・アレッサンドリーニ/コンチェルト・イタリアーノ

OPUS 111/OPS 30-133




ディンディア、イタリアを巡って、マドリガーレ。新旧を結んで、洗練させて...

3984234182
シジスモンド・ディンディア(ca.1582-1629)。
フレスコバルディが生まれる1年前、1582年頃、シチリアのパレルモで生まれたディンディア。高貴な家に生まれたらしいのだけれど、その家族について、どこで音楽を学んだかなどは、よくわからないらしい... そんなディンディアの足跡を辿れるようになるのが、1600年頃のフィレンツェ。それは、ちょうどオペラがお披露目された頃だけに、ディンディアもオペラに触れる機会があったかもしれない。それから、モンテヴェルディが『オルフェオ』の準備に入る1606年、マントヴァを訪れ、またフィレンツェに戻り、モノディの先駆者、カッチーニに自身の作品を取り上げてもらい、好評を得て、ローマ、ナポリへと南下、そこではジェズアルドと面会した可能性もあるよう... そこから再び北上し、パルマの宮廷で仕事をした後、1611年、サヴォイア公のトリノの宮廷の楽長に就任。ここで多くの作品を残し、充実した音楽活動を展開。が、1623年、ある廷臣たちの悪意ある中傷により、トリノを離れることを余儀なくされ、モデナの宮廷(フレスコバルディが学び、活躍したフェッラーラの宮廷が移った先... )に仕えた後、1624年、サヴォイア公の息子、マウリツィオ・ディ・サヴォイア枢機卿に仕え、ローマに移る。聖都、ローマでは、宗教オペラを手掛け、さらにバルベリーニ家の教皇、ウルバヌス8世のためのミサを作曲し大成功させるなど、活躍。その後、1626年に、再びモデナの宮廷に戻り、1629年、モデナにて、この世を去る。
という、ディンディアのマドリガーレを聴くのだけれど、フレスコバルディのマドリガーレの後だと、そのイタリアらしさが、ぱぁっと花開いて、カラフル!1曲目、「情けをと私は泣きながら叫ぶのだが」の表情の豊かさに、まず耳が持って行かれる。で、ホモフォニックに始まり、詩の内容がくっきりと浮かび上がった後、ポリフォニックに展開して、音楽としての魅力をふわっと膨らませる妙... ディンディアのマドリガーレには、新旧のスタイルが器用に用いられ、ポリフォニーとホモフォニーをナチュラルに行き来し、詩の描き出す表情を音楽に丁寧に結び付ける。ルネサンスからバロックへの過渡的な形を見せながらも、それがディンディアのスタイルとして洗練された響きに昇華されているあたりは、イタリア各地の先進的な音楽に触れた経験が活きているのだろう。そして、その洗練は、17世紀前半におけるインターナショナル・スタイルとも言えそうな、ニュートラルな魅力を放っていて、素敵。一方、伴奏付きの声楽作品集、『レ・ムジケ』からのナンバーが6曲(track.14, 17-19, 21, 22)が取り上げられるのだけれど、こちらでは、鮮やかにモノディを繰り出し、新しい時代を雄弁に響かせて魅惑的。
そんな、イタリアの音楽を、クリスティ+レザール・フロリサンで聴くのだけれど、フランス・バロックのスペシャリスト、クリスティならではの明朗で色彩に富む感覚が、ディンディアのインターナショナル・スタイルに作用して、全体がパァっと明るくなるよう。ラメントも、感情が露骨に表現されることはなく、悲しみはあくまで音楽的で、絶妙。それを可能とするのが、歌手陣のやわらかな歌声。表情は豊かでも、エモーショナルな方向に走らない節度が、上品な音楽を繰り出し、ディンディアを引き立てる。

D'INDIA Madrigali
Les Arts Florissants WILLIAM CHRISTIE

ディンディア : 「情けを」と私は泣きながら呼ぶのだが 〔5声マドリガーレ集 第3巻〕
ディンディア : 私はあなた方に言った、ため息をつきながら 〔5声マドリガーレ集 第5巻 器楽による演奏〕
ディンディア : 気高く、幸福な目よ 〔5声マドリガーレ集 第8巻〕 (第1部)
ディンディア : 私はお前のもとから去る (第2部)
ディンディア : この美しい胸の 〔5声マドリガーレ集 第5感、器楽による演奏〕
ディンディア : つれないアマリルリ 〔5声マドリガーレ集 第1巻〕
ディンディア : つれないなシルヴィオ 〔5声マドリガーレ集 第8巻〕 (第1部)
ディンディア : けれども、生来の思いやりや美徳が (第2部)
ディンディア : ああ、ドリンダ (第3部)
ディンディア : この胸に傷を与えるですって? (第4部)
ディンディア : シルヴィオ、とても疲れました (第5部)
ディンディア : 「ああ」とフィレーノは美しいクローリに言った 〔5声マドリガーレ集 第3巻〕
ディンディア : 木陰の多い優しい森よ 〔5声マドリガーレ集 第3巻 器楽による演奏〕
ディンディア : さあ、私を殺してくれ、悲嘆にくれた苦悩よ(ジャゾーネの嘆き) 〔レ・ムジケ 第5巻〕
ディンディア : 愛の不思議なハーモニー 〔5声マドリガーレ集 第4巻〕 (第1部)
ディンディア : このことでだけ私たちは違っている (第2部)
ディンディア : ああ、私は何を見ているのか(オルフェオの嘆き) 〔レ・ムジケ 第4巻〕
ディンディア : つれない僕のフィルリは 〔レ・ムジケ 第2巻〕
ディンディア : これがフィルリ、僕の恋人だ 〔レ・ムジケ 第2巻〕
ディンディア : ああ、誰が私を憔忰させるのか 〔5声マドリガーレ集 第3巻 器楽による演奏〕
ディンディア : つれないアマリルリ 〔レ・ムジケ 第1巻〕
ディンディア : 私の嘆きに野獣も涙を流し 〔レ・ムジケ 第1巻〕
ディンディア : とても甘美に歌うあの小鳥は 〔5声マドリガーレ集 第3巻 器楽による演奏〕

ウィリアム・クリスティ/レザール・フロリサン
アンサンブル・ドゥ・ヴィオール・オルランド・ギボンズ

ERATO/3984-23418-2




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