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生誕450年、モンテヴェルディ、ヴェネツィアでの深化。 [before 2005]

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さて、2月となりました。間もなく節分、となると立春... 春へと、一歩一歩、近付いていますね。ま、先日のような、桜が咲いてしまうのでは?という、フライング気味な陽気には、面喰うのだけれど、春の兆しには、ほっとさせられます。という中、聴いております、生誕450年、モンテヴェルディ!ルネサンスからバロックへ、音楽史が大きく動き出す頃の音楽というのは、何とも言えず、初々しい... それは、まるで、春の訪れのよう。実際には、そう穏やかでもないのが、ルネサンスからバロックへの変革ではあるのだけれど、当時の前衛の、時代を切り拓こうという勢い、大胆さから生まれる、初々しさは、長い音楽史を振り返っても、希有なものだったと感じる。そんな音楽、マントヴァ時代のモンテヴェルディが、ゴタゴタしながらも生み出した傑作、『オルフェオ』聖母マリアの夕べの祈りを聴いたので、その先へ... ヴェネツィア時代のモンテヴェルディを追ってみることに...
フィリップ・ピケット率いる、ニュー・ロンドン・コンソートの演奏、キャサリン・ボット(ソプラノ)、ジョン・マーク・エインズリー(テノール)ら、ピリオドで活躍する歌手たちの歌で、モンテヴェルディのヴェネツィア時代に出版されたマドリガーレ集から、『タンクレディとクロリンダの戦い』、『情け知らずの女たちのバッロ』、『ティルシとクロリ』(L'OISEAU-LYRE/440 637-2)を聴く。

1612年、マントヴァ公、ヴィンチェンツォ1世(在位 : 1587-1612)が、この世を去ると、その長男、フランチェスコ4世(在位 : 1612)が、新たな公となる。かつて、『アリアンナ』を作曲するなど、その婚礼(1608)に大きな貢献をしたモンテヴェルディ、新たな公との関係はそう悪いものでなかったようなのだけれど、突如、解雇されてしまう。まあ、すでにマントヴァの宮廷に不信感を抱き、新たなポストを探していたくらいだから、次なるステップに踏み出す良い機会になったのかもしれない。そこに舞い込む、ビッグなオファー!1613年、モンテヴェルディは、ヴェネツィア、サン・マルコ大聖堂の楽長に招聘される。ルネサンス後半以来、ヨーロッパに大きな影響力を持っていたヴェネツィア楽派の拠点、サン・マルコ大聖堂の楽長... それは、マントヴァの楽長より、ずっとグレードの高いポスト。なのだけれど、16世紀、ヴェネツィア楽派の興隆にともない、ヴェネツィアの音楽シーンが活況を呈すると、音楽家たちの活躍の場は増え、やがてサン・マルコ大聖堂での仕事は軽んじられて行った。モンテヴェルディのヴェネツィアでの仕事は、もっぱら、その立て直しに費やされ、聖歌隊のレベル・アップが第一... オペラといった前衛からは離れ、旧来のア・カペラによる教会音楽を取り仕切ることに力を注ぐことになる。
とはいえ、新たな音楽を作曲しなかったわけではない。ヴェネツィア時代に生み出されたモンテヴェルディの作品は、新しい時代の在り方が深化し、マントヴァ時代より充実したものを聴かせる。その代表が、『タンクレディとクロリンダの戦い』(track.1-4)。マドリガーレの大家、モンテヴェルディの集大成とも言える、1638年に出版されたマドリガーレ集、第8巻に収録される作品なのだけれど、マドリガーレ?いや、これは、ほとんどオペラ... バロックならではの情景描写が際立っていて、戦いながら恋に落ちるというアンビバレントを見事に描き出し、息を呑む音楽を聴かせる。が、よくよく見つめると、オペラとは一味違う?というのは、語りが中心で、タンクレディとクロリンダの戦いと愛の情景を、実況中継するような展開で... これは、初期バロックの浪曲か?なんて捉えると、おもしろい。という『タンクレディ... 』は、1624年、ヴェネツィア共和国統領を多く輩出した有力貴族、モチェニーゴ家の邸宅で初演されている。マントヴァの宮廷とは、また違うパトロネージが、モンテヴェルディの音楽を支えていたわけだ。そして、ヴェネツィアの凄いところは、そうした存在が多数あったこと。やがて到来するオペラ・ブームも、有力貴族たちがパトロネージを競い合った背景がある。『タンクレディ... 』には、その道筋が窺える。
さて、『タンクレディ... 』の後に取り上げられるのが、やはりマドリガーレ集、第8巻に収録されている、『情け知らずの女たちのバッロ』(track.5-13)。モンテヴェルディを解雇したマントヴァ公、フランチェスコ4世の婚礼(1608)で初演された作品で、ここで聴くのは、その妹、エレオノーラが、1622年、神聖ローマ皇帝、フェルディナント2世(在位 : 1619-37)の皇后となり、ウィーンの宮廷で再演されるにあたり、改訂されたもの... それから、1619年に出版されたマドリガーレ集、第7巻に収録されている、『ティルシとクロリ』(track.14, 15)。フランチェスコ4世が公位を継承するも、すぐに亡くなってしまうと、その弟で、モンテヴェルディとも親しかった枢機卿、フェルディナンド(在位 : 1612-26)が還俗してマントヴァ公に... で、かつての楽長を呼び戻したいと依頼し、1615年に作曲されたバッロ(バレエの源流にあるダンス... )。ともに、『タンクレディ... 』に先立ち、マントヴァで上演された作品ということで、古風に感じる。が、ヴェネツィアとは違う、マントヴァの宮廷の雅やかさ、アルカイックさが強調され、『タンクレディ... 』とは好対照。またそこに、モンテヴェルディの歩みが聴こえて来る。
という3作品を取り上げる、ピケット+ニュー・ロンドン・コンソート。イギリスの古楽アンサンブルならではの丁寧なアプローチが、初期バロックの古雅な雰囲気をより引き立てていて、特に、『情け知らず... 』(track.5-13)、『ティルシとクロリ』(track.14, 15)の、マントヴァのための作品で、それは活き、瑞々しく、宮廷ならではの品の良さに、惹き込まれる。一方の『タンクレディ... 』(track.1-4)では、下手に感情に押し流されるのではなく、端正にドラマが紡がれて行くのが印象的で、何より、語り役を歌うエインズリーの輝かしいテノールがすばらしく、魅了されずにいられない。もちろん、他の歌手たちもすばらしく、それぞれに澄んだ歌声を聴かせて、初期バロックの初々しさがキラキラと輝き出すよう。そんな、古典美が強調されたモンテヴェルディ... いや、まさに春の訪れの初々しさ、そのもの... なんて素敵な音楽だろう。

MONTEVERDI: COMBATTIMENTO/BALLO DELLE INGRATE
Pickett/New London Consort

モンテヴェルディ : 『タンクレディとクロリンダの戦い』 ***
モンテヴェルディ : 『情け知らずの女たちのバッロ』 ***
モンテヴェルディ : 『ティルシとクロリ』 **

キャサリン・ボット(ソプラノ) *
テッサ・ボナー(ソプラノ) *
ジョン・マーク・エインズリー(テノール) *
アンドルー・キング(テノール) *
マイケル・ジョージ(バス) *
フィリップ・ピケット/ニュー・ロンドン・コンソート

L'OISEAU-LYRE/440 637-2




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