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シベリウス、鳥たちのいる風景。 [before 2005]

風邪を引いてしまった。で、熱出した。ぁぁぁ... 1月からこんな事態になるなんて、もうガックリ。いや、ガックリもしていられない。2017年はどんどん先へと進んでしまう!という具合に、変に気持ちが焦って、横になりながらも休み切れないジレンマ... こどもの頃は、何も考えずに、休めることを喜んでいたものだけれど、今となっては、それは遠いメルヘン... というあたりはさて置きまして、酉年に"鳥"を聴くシリーズ。てか、いつの間にシリーズ化... いや、酉年だし、ちょっと、羽ばたきたいなって思っていて... 何より、世界も、日本も、過去に捉われず、新しい時代に羽ばたけたら、という願いを籠めての"鳥"。ある種、縁起モノとして聴く"鳥"の音楽みたいな... で、メシアンフランス・バロックと来て、次は、北欧へ... いや、熱で、ぼぉっとしているので、頭を少し冷やした方が良さそうかなと、北極圏、フィンランドを飛ぶ、白鳥と鶴を観察しに... いや、聴いてみることに...
ということで、シベリウスです。ネーメ・ヤルヴィが率いた、イェーテボリ交響楽団の演奏で、「トゥオネラの白鳥」を含む、レンミンカイネン組曲(Deutsche Grammophon/453 426-2)と、レイフ・セーゲルスタムが率いる、トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、「鶴のいる情景」を含む、劇音楽『クオレマ』(NAXOS/8.573299)の2タイトルを聴いて、熱を下げたい!


シベリウス、叙事詩、その深淵を捉える直球のロマン主義のカッコよさ!

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シベリウスの音楽は、北欧の雄大かつ峻厳な自然をそのままサウンドとして切り出して来るようで、その清々しさに圧倒されるのだけれど、題材としてよく取り上げるフィンランドの叙事詩、『カレワラ』の物語は、人間臭く、独特なトーンを持っていて、音楽に籠められた物語を改めて見つめると、結構、ギョっとさせられることがある。「トゥオネラの白鳥」(track.4)を含む、レンミンカイネン組曲(track.3-6)もまた、そうした『カレワラ』に基づく組曲。英雄、レンミンカイネンの向こう見ずが生む、不条理、バッド・エンドは、結構、インパクトがある(象徴主義や表現主義の作曲家にはたまらない題材だと思う... )。が、シベリウスは、ことさらそのあたりを強調することはなく、丁寧に情景を描き出し、瑞々しいサウンドで、深く底が見えないような叙事詩に透明感を与える。それを強く感じるのが、「トゥオネラの白鳥」(track.4)。キュッリッケという妻がありながら、新たな妻を求め、ポホヨラを訪れたレンミンカイネンは、ひとりの娘を見出し妻とするために、黄泉の国との境にあるトゥオネラ川の白鳥を射ることになる(娘を得るために課せられた試練... )。その白鳥が佇む風景、川の向こう岸は、あの世、そして、レンミンカイネンの挑戦は失敗し、命を落とすことになるのだけれど、それを予感させる仄暗い音楽は、美しく、瑞々しく、白鳥の超然とした優雅さを湛えて、幻想的。死の象徴としての白鳥であり、人間が触れてはならない大いなる自然の象徴なのだろう。このあたりは、シベリウス芸術の真骨頂、その幻想的な情景に、ただならず惹き込まれてしまう。
さて、レンミンカイネン組曲の前には、交響的幻想曲「ポホヨラの娘」(track.1)と、交響詩「夜の騎行と日の出」(track.2)が取り上げられるのだけれど、レンミンカイネン組曲(track.3-6)の後になる20世紀に入ってからの2つの作品は、物語の密度を増したようなところがあって、今にもワーグナーの楽劇が始まりそうなドラマティックさが魅力。一方で、20世紀初頭(「ポホヨラの娘」が1906年、「夜の騎行と日の出」が1908年の作曲... )になって、これほど純真にクラリティの高いワーグナー由来のロマンティシズムを堂々と紡ぎ出せるシベリウスの我が道をゆく芸術性に、感服させられる。いや、その直球のロマン主義のカッコよさ!
そんなシベリウスを、エンターテインに、鮮やかに繰り広げるネーメとイェーテボリ響。何だろう、ワクワクさせられる演奏!すっきりとしたサウンドを実現しながらも、自信を以って響き出すシベリウスは、華やかで、パワフルで、クラシックの気難しさのようなものを吹き飛ばし、絶妙にライトで、時にはポップな印象すら生み出して来る。いや、シベリウスの音楽の楽しさを素直に引き出す好演!「トゥオネラの白鳥」(track.4)のような作品では、しっとりと幻想的に情景を描き出すも、物語にメリハリをしっかりと付け、竹を割ったようなロマンティシズムを実現する。それはもう、胸空くようなパフォーマンス!

SIBELIUS: THE SWAN OF TUONELA・4 LEGENDS, etc.
GOTHENBURG SYMPHONY ORCHESTRA/JÄRVI


シベリウス : 交響幻想曲 『ポホヨラの娘』 Op.49
シベリウス : 交響詩 『夜の騎行と日の出』 Op.55
シベリウス : 4つの伝説曲(レンミンカイネン組曲) Op.22

ネーメ・ヤルヴィ/イェーテボリ交響楽団

Deutsche Grammophon/453 426-2




シベリウス、劇音楽、もうひとりのシベリウスを魅力的にアピールする妙!

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叙事詩の深淵な世界から、芝居のドラマティックな舞台へ... 劇伴作曲家としても活躍したシベリウス。そこには、シベリウスのもうひとつの魅力が表れる!ということで、「鶴のいる情景」を含む、劇音楽『クオレマ』(track.2-7)を聴くのだけれど、ここで聴くのは、お馴染みの4曲からなる組曲版ではなく、1903年、初演時の、6曲からなるオリジナル版... 定番の「悲しきワルツ」や「鶴のいる情景」は、ひとつのピースとしてまだ完成形に至っておらず、より劇伴としての性格が強い。で、おもしろいのは、歌が入るところ... バリトンが歌う「パーヴェリの唄」(track.3)と、ソプラノが歌う「エルザの唄」(track.4)。後者は、ハナ歌っぽく、台詞の延長みたいな感じだけれど、「パーヴェリの唄」(track.3)は、思いの外、メローで、シベリウスのメロディー・メイカーとしての才能にびっくりさせられる。こちらも、俳優の気持ちが高まって、思わず歌い出すような、短いフレーズを繰り返すくらいなのだけれど、かえってメロドラマちっくで、切なく、甘く、とても印象的な旋律に惹き込まれる。いや、『クレオマ』を、リアルな劇伴として聴く新鮮さ!ひとつのピースとしては弱いところもあるのだけれど、情景を描き出す瑞々しさは、完全なピースになり得ていないからこそ、強調されるよう... やがて「悲しきワルツ」となる1曲目、テンポ・ディ・ヴァルス・レント―ポコ・リゾルート(track.2)も、「鶴のいる情景」となる「鶴」(track.4)も、その繊細さが際立ち、まるで映画音楽のよう。何より、全体からドラマの流れが感じられ、組曲版とは一味違う情緒が生まれ、印象的。
後半は、シェイクスピアの『十二夜』からの詩による2つの歌曲(track.8, 9)を挿んで、劇音楽『クリスティアン2世』(track.10-16)が取り上げられるのだけれど、こちらは歴史劇ということで、クラシカル。クラシカルなのだけれど、ライト... 『クオレマ』(track.2-7)もそうなのだけれど、圧倒的なシベリウス・サウンドとはまた違う馴染み易さがシベリウスの劇伴にはある。で、この違いが興味深い。自らの音楽を紡ぎ出すのと、劇場で伴奏に回ることを、きっちりと分けるプロフェッショナルな姿勢。それでいて、伴奏に回ることで、もうひとりのシベリウスを魅力的にアピールできてしまう器用さ!作曲家としてのポテンシャルの高さに、改めて、感服。
という、劇伴から見つめるシベリウス像を、丁寧に、豊かに響かせた、セーゲルスタム+トゥルク・フィル。セーゲルスタムならではの絶妙な表情の引き出しが効いて、劇の伴奏というポジションを越えて、ドラマそのものを感じられるようで、惹き込まれる。そして、トゥルク・フィルの瑞々しいサウンド... 繊細で、澄んでいるのだけれど、どこか影を帯びてもいるようで、シベリウスの劇伴により雰囲気を生み出す。それから、バリトンのトリッカの艶やかな歌声... 音楽を息衝かせ、全体を引き立てる!

SIBELIUS: THE SWAN OF TUONELA・4 LEGENDS, etc.
GOTHENBURG SYMPHONY ORCHESTRA/JÄRVI


シベリウス : 序曲 イ短調 JS 144
シベリウス : 劇音楽 『クレオマ』 Op.44 JS 113 **
シベリウス : 十二夜 Op.60 〔2つの歌曲〕 *
シベリウス : 組曲 『クリスティアン2世』 Op.27 *

レイフ・セーゲルスタム/トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団
ピア・パヤラ(ソプラノ) *
ヴァルテッリ・トリッカ(バリトン) *

NAXOS/8.573299




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