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酉年、鳥たちの目覚め。 [before 2005]

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正月休みも終わりですね。何だか呆気無いものです。さて、今頃になって、年賀状に書いた酉年を、"西"年と書いて出してしまったかもと心配になる母... 普段、「酉」なんて字、書かないものだから、うっかり、一本、書き忘れてしまう、なんてこと、十分、在り得る話し。そもそも、"西"に、棒線、一本足して、「酉(トリ)」とは、意味的に飛躍があるし、形的には安直で、そのギャップが、奇妙で、おもしろい。という、"酉"と"西"、似てはいるものの、漢字の成り立ちは、まったく異なるとのこと。"酉"は酒壺のイメージから、"西"は籠のイメージから派生したらしい... のだけれど、"西"の籠は、元々は鳥の巣だったらしく、遡ると鳥に行き着く?で、「酉」の方角が西なのだよね。ウーン、重ね重ね、おもしろい!となれば、2017年の最初の一枚は、鳥しかない!
ということで、鳥のさえずりに耳を傾け、そこに思い掛けない音楽を見出した希有な作曲家、メシアン... ケント・ナガノの指揮、フランス国立管弦楽団の演奏、イヴォンヌ・ロリオのピアノで、メシアンの「鳥たちの目覚め」(ERATO/0630-12702-2)を聴く。

夜、まだ暗い内から、朝日が昇り、昼を迎えるまでを、鳥のさえずりで綴った、「鳥たちの目覚め」(track.1-4)。ピアノとオーケストラによるその音楽は、さながら、メシアンによる野鳥観察ノート... 森深く分け入り、鳥たちのさえずりにのみ意識を傾ける。次から次と聴こえて来る、鳥たちの短い歌いに、森は音楽に充ち溢れた不思議な場所になるのかもしれない。「鳥たちの目覚め」を聴いていると、そんなメシアンの感動を追体験できる気がする。ピアノとオーケストラという、コンチェルトが始まりそうな形を取りながらも、まったくそうはならないメシアン。様々な楽器が、鳥の一羽一羽となって、丁寧に採譜した鳥たちの歌を、それぞれに歌う。となると、もはやオーケストラの体を成していない。けれど、そこに森を見出した途端、鳥たちのオーケストラが浮かび上がり、ハッとさせられる。作為の無い鳥の歌いのイノセンスな輝き... それらが、あちこちから響き出し、普段の音楽を聴くのとは違う、ワクワクとした感覚を覚える。始まりの「真夜中」の、夜のしじまに響き渡る、印象的なピアノによるさえずりに始まり、「朝の4時」(track.2)の、昼間の鳥たちの目覚め。目覚めて歌い、それにつられて、また目覚め、やがて鳥たちの朝のおしゃべりで森は騒がしくなり... ふわっと一羽が大空に羽ばたいて、鳥たちのおしゃべりから離れる「朝の歌」(track.3)は、鳥たちの日常の始まりだろうか?最後のピアノのためのカデンツァ・フィナーレ(track.4)は、森のプリマの登場なのだろう。ピアノの透明感のある響きが、新しい美しい歌を紡ぎ出す。1953年に作曲された「鳥たちの目覚め」の音楽は、戦後「前衛」の時代を象徴する抽象性に彩られている。鳥たちのさえずりを忠実に採譜したフレーズの数々は、その無作為な音の連なりに、音列音楽に共通する無機質さを感じなくもない。しかし、その時代、時代を席巻した総音列音楽のような冷たさを感じないのは、それが鳥たちの歌だからなのだろう。自然に根差したピュアな音の連なりは、どれも微笑ましく、ほのぼのとして、脱力していて、それでいて輝いている!今、改めて「鳥たちの目覚め」を聴くと、音楽の在り方について、いろいろ考えさせられるところもある。
さて、「鳥たちの目覚め」から遡ること8年、第2次大戦中に作曲され、1945年にパリで初演された、神の顕現の3つの小典礼(track.5-7)が続くのだけれど、そこには、すでに鳥のさえずりが聴こえていて、おもしろい。また、「鳥たちの目覚め」からの流れで聴くと、余計にその存在が際立つようで... その鳥のさえずりの下、美しい女声コーラスがイエスへの祈りを穏やかに歌い出す。1曲目、「内なる会話のアンティフォナ」(track.5)の、やわらかな響きに包まれ、天国を漂うような不思議さは、第2次大戦の惨禍の反動だろうか?浮世離れしたサウンドに魅了されずにいられない。が、続く、2曲目、「御言のセクエンツァ、神のカンティクム」(track.6)の、キャッチーなリズムに彩られた音楽は、ちょっと奇妙でユーモラスな表情を見せ始め、その後ろで、オンド・マルトノが、ムゥゥーン!と唸り始めると、メシアンならではの色彩が踊り出し、不可思議さが広がる。そこからの3曲目、「愛による偏在のプサルテモディア」(track.7)では、いきなりのシュプレッヒゲザング!美しい色彩がグロテスクに動き出し、聴く者の心を掻き乱すようなところもあって、マジカル。で、1945年の初演では、賛否両論を巻き起こし、「メシアン事件」なんても言われたのだとか... 今となっては、そこまで先鋭的には感じないし、旧来の音楽の形を残し、かえってユルい雰囲気があって、そのユルさに魅力を感じてしまうのだけれど... それどころか、印象主義の蓄積が夢幻の響きを生み出し、得も言えぬ美しさに充ち満ちている!これは本当におもしろい作品!
という、魅惑的なメシアンの2つの作品を引き立てる、ケント・ナガノ。近現代のスペシャリストであり、作曲家、メシアンからの信任も厚かったマエストロだけに、作曲家、特有の音楽を、すっきりと鳴らして来るのだけれど、今、改めてその演奏に触れると、単に明晰なだけではない、独特なトーンを感じる。アメリカ、西海岸育ちのマエストロの、ウェスト・コーストなサウンド?風通しが良く、さらりとしていて、オプティミスティックで、だからこそ明朗で、ファンタジックにも感じられ... 「鳥たちの目覚め」(track.1-4)からして、どこかディズニー・ワールドのアトラクションのような雰囲気で、鳥のさえずりが織り成す抽象性にも楽しさが表れていて、魅惑的。そこに、メシアン夫人、ロリオのピアノが加わり、クリスタル!長年、メシアン作品を弾いて来たロリオだけに、揺ぎ無く、無駄の無いタッチは、洗練を極めていて、吸い込まれそう。また、フランス国立管の演奏も透明感を湛え、メシアンの色彩が鮮やかに捉えられて、見事。一方、神の顕現の3つの小典礼(track.5-7)での、ラジオ・フランス合唱団(女声)の歌声は、何ともたおやかで、絶妙な味わいを醸し、素敵。

MESSIAEN: TROIS PETITES LITURGIES/KENT NAGANO, ONF

メシアン : 鳥たちの目覚め
メシアン : 神の顕現の3つの小典礼 *****

イヴォンヌ・ロリオ(ピアノ)
ジャンヌ・ロリオ(オンド・マルトノ) *
リュック・エリィ(ヴァイオリン) *
ミシェル・センドレズ(チェレスタ) *
マリー・グリフェ(ソプラノ) *
ラジオ・フランス合唱団 *
ケント・ナガノ/フランス国立管弦楽団

ERATO/0630-12702-2




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