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チェロの渋さ、仄暗い組曲、若きケラス、による、真新しいブリテン! [before 2005]

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ベンジャミン・ブリテン、生誕100年のメモリアル...
10月後半は、ヴェルディ、ワーグナーばかりではない、2013年のメモリアルを巡る。ということで、没後50年のプーランク(1899-1963)、ヒンデミット(1895-1963)に続いて、ブリテン(1913-76)を聴くのだけれど。没後50年と、生誕100年という重なる時間軸の興味深さ。ちょうど、ブリテンが50歳の時、プーランクとヒンデミットは、この世を去ったわけだ。そんな風に20世紀の音楽を見つめてみると、音楽史における20世紀の多彩さに、感慨深いものを感じてしまう。同時代を走り抜けながら、プーランク、ヒンデミット、ブリテンと、それぞれに、まったく違うテイストを持っている!これが19世紀だったなら、18世紀だったならどうだろう?奇妙なことに、移動手段が馬車と船だった頃の方が、インターナショナル・スタイルが強かったことになる。線路は伸び、飛行機が飛ぶようになって、作曲家たちは移動を好まなくなったのか?そんなわけはない。なんておもしろい、パラドックス!
ということで、東から西への移動と、それによる新たな出会いにより生まれた作品... かつてharmonia mundiが力を入れていた若手紹介シリーズ、"LES NOUVEAUX INTERPRETES"から、1998年のリリース。今やharmonia mundiの看板、ジャン・ギアン・ケラスのチェロで、ブリテンの無伴奏チェロ組曲(harmonia mundi FRANCE/HMN 911670)を聴く。

プロコフィエフ、ショスタコーヴィチに霊感を与えた、ソヴィエトが誇るチェロのマエストロ、ロストロポーヴィチ(1927-2007)。ショスタコーヴィチの1番のチェロ協奏曲(まさに、ショスタコーヴィチがロストロポーヴィチという才能に触れて生まれた傑作!)の西側初演(1960)のため、ロンドンを訪れたロストロポーヴィチは、イギリスを代表する巨匠、ブリテンとも親交を結ぶことに... そして、ブリテンにもまた大いに霊感を与え、チェロ交響曲やチェロ・ソナタなど、チェリストにとって重要な20世紀のレパートリーを生み出す。そんな、ロストロポーヴィチとブリテンの出会いが生んだ作品、3つの無伴奏チェロのための組曲...
まず、耳が奪われる、始まりの1番(track.1-9)、1楽章、カント・プリモ!思い掛けなく瑞々しい歌がこぼれ出し、嗚呼、英国はやっぱり歌の国だなと、深く感じ入る。ダウランドからビートルズまで、英国流のメローさというのか、ヨーロッパ大陸とは違う、ケルトの昔からだろう、連綿と紡がれて来た独特のセンスを感じずにはいられない。また、この1番は、ビートルズがブレイクした後の1964年の作品でもあって、ブリテンにもビートルズの音楽がその耳に届いていたのかもしれない... 直接的でないにしろ、クラシック離れしたヴィヴィットな感覚は、ブリテンが自身を取り巻いていた時代の気分に敏感であったことを思わせて、印象的。しかし、渋い世界である。チェロという、どちらかと言えば地味な楽器による、"無伴奏"というスタイルは、イメージとして、やはりストイックである。が、そのストイックさに耳が慣れてしまうと、今度は恐ろしく深い世界が見えて来る。そして、その深さに広がりを見出した時、次から次へと現れる、ブリテンが描き込んだ豊かな表情に驚かされることになる。
まず、無伴奏チェロ組曲といえば、やはりバッハを忘れるわけにはいかない。当然ながら、ブリテンもそれを意識しただろう... 3番の4楽章、バルカローラ(track.18)は、バッハの無伴奏組曲の断片(えーっと、何番のどの部分だったかは思い出せない... けど、聴けば、「あぁ」となる... はず... )を引用しつつ、また瑞々しい音楽を編む。しかし、組曲、全3曲、擬古典主義のように、バロック風で展開することはけしてしない。それよりも、より様々なヴィジョンをチェロという楽器に落とし込んで。例えば、弦を爪弾いて、ギターのような表情を見せて、スペインを思わせる1番、5楽章、セレナータ(track.5)。琵琶を思わせるような2番、4楽章(track.13)。戦後、「前衛」の時代の、特殊奏法を思わせる響きもあちらこちらに顔を覗かせて、興味深い。一方で、さり気なくフォークロワを臭わせるフレーズもそこかしこに現れ、特に、3番、終楽章(track.23)のロシア民謡の引用は、ロストロホーヴィチに因む作品であることを思い起こさせる。そういう点で、この組曲、全3曲に共通するのが、ショスタコーヴィチの影。痛切に歌い上げるあたり、キッチュな行進曲の出現、執拗に激しいリズム刻んで生まれる熱狂... 作品を包む仄暗さと、奇怪さは、少し引いて見つめてみると、ショスタコーヴィチそのものだなとも感じる。
という作品を、若きケラスが奏でたわけだ... この「若さ」が、最高に活きている!久々に聴くと、余計に感じてしまう。今のケラスはもちろんすばらしい。が、若いからこそのニュートラルさ、鋭敏さが捉えるブリテンは、ただならず瑞々しい!今、作品が生まれたかのような、真新しさすら感じてしまう。そして、アンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーとして活躍していた頃の、近現代音楽のスペシャリストとしての、生意気なくらいに冴え渡るテクニック!これこそ「若さ」なのだろう、どうだと言わんばかりに、余裕綽々で繰り広げて、チェロという楽器の表現の幅を思い知らされるかのよう。またそれが、この組曲、全3曲に籠められた秘密の魔法を、見事に全て解いてゆくかのよう。チェロの音色はやっぱり渋い。ショスタコーヴィチの影響か仄暗い。けれど、それを突き抜けるケラスの若さ!そこから聴こえて来るブリテンは、刺激的...

BRITTEN / SUITES POUR VIOLONCELLE / QUEYRAS

ブリテン : 無伴奏チェロ組曲 第1番 Op.72
ブリテン : 無伴奏チェロ組曲 第2番 Op.80
ブリテン : 無伴奏チェロ組曲 第3番 Op.87

ジャン・ギアン・ケラス(チェロ)

harmonia mundi FRANCE/HMN 911670




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