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50年後のポリー。 [2010]

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18世紀の初め、ロンドンを席巻したイタリア・オペラから人気を奪い、ヘンデルを窮地に追いやったという、ジョン・ゲイ作、バラッド・オペラ『ベガーズ・オペラ』(1728)。徹底してアンチ・イタリア・オペラな、風刺もキツイ、トンデモ喜劇は伝説となり、そのインパクトは、ヘンデルがロンドンで活躍した時代に留まらず、その後の多くの演劇人、作曲家にもインスピレーションを与え、ジョン・ゲイから200年後には、新たな伝説となる、ブレヒトとヴァイルによる『三文オペラ』(1928)を生む。で、そんな『ベガーズ・オペラ』には続編があった... 『ベガーズ・オペラ』の翌年、ジョン・ゲイは、マクヒースの婚約者、ポリーを主役に『ポリー』を書く。が、あんまりにも政治風刺を効かせ過ぎたらしく、お蔵入り... が、その50年後、アーノルドが作曲し、とうとう初演されたとのこと。で、その『ポリー』が、世界初録音!ということで、興味津々で手に取ったケヴィン・マロン率いるアレイディア・アンサンブルによるバラッド・オペラ『ポリー』(NAXOS/8.660241)を聴く。

ジェレミー・バーロウ率いるブロードサイド・バンドによる『ベガーズ・オペラ』からのソングとエア集(harmonia mundi/HMA 1951071)を初めて聴いた時は、正直、ギョっとした。オペラとは程遠い、まさに歌... あまりに素朴なその姿に、ヘンデルを窮地に追いやったという史実を受け入れられないような、そんな感覚にすらなった。けれど、アンチ・イタリア・オペラという性格は、まさしく!なのだ。徹底してイタリア・オペラの真逆を突き進み、ハナウタのようなソングとエア(バーロウ+ブロードサイド・バンド盤では、素朴に美しく歌ってくれているのだけれど... )の、音楽としてのギリギリ感は、何とも言い難い... のだが、その50年後、サミュエル・アーノルド(1740-1802)による『ポリー』は、ずばりオペラなスタイル。音楽として安心して聴ける。でもって、なかなか興味深い。
ヘンデルの時代から半世紀、ロンドンではバッハ家の末っ子、ヨハン・クリスティアンが活躍。古典派の波がロンドンにも到達して、モーツァルト少年もロンドンを訪ね... そうした、前古典派のモードの中で、アーノルドの『ポリー』は、モードも踏まえつつ、『ベガーズ・オペラ』以来のバラッド・オペラの雰囲気を漂わせ、イギリス調のメロディをところどころ用いて、キャッチー。また、ヘンデルの影もチラチラとしつつ... フランスのロココ趣味もあるようで、小気味良いダンス・シーンは、ラモーのバレエのイギリス版のようでもあり... さらには、ブフォン論争を巻き起こす、ルソーの『村の占い師』のような、人懐っこさを生むシンプルさも。フランスのヴォー・ド・ヴィルと、イギリスのバラッド・オペラの性格の近さもあるのだろうけど、どこかで影響を受けているのか?18世紀後半の、西欧におけるインターナショナルな音楽の諸相を、ごった煮的にまとめたおもしろさが魅力的。
で、そんな『ポリー』を21世紀に蘇らせた、マロン+アレイディア・アンサンブル。いつもながらの、的確で、流麗な演奏は申し分ないのだけれど、ストーリーのやさぐれっぷりというか、やんちゃっぷりが、音楽から滲み出ていたなら... もっと、危険を冒してでも、チャキチャキの、キレのあるサウンドを繰り出しても良かったのでは?なんて、贅沢な欲求にも駆られる。のだが、歌手陣のナチュラルな歌声に彩られて、世界初録音としての『ポリー』の魅力は、十分に伝えてくれている。何より、18世紀後半、ロンドンのオペラ・シーンの一端を垣間見せてくれて、貴重な1枚。西欧を代表する音楽都市のひとつだったロンドンに、改めて関心が沸いてしまう。

S. ARNOLD: Polly

アーノルド : バラッド・オペラ 『ポリー』

ラウラ・アルビーノ(ソプラノ)
エヴ・レイチェル・マクロード(ソプラノ)
ジリアン・グロスマン(ソプラノ)
マリオン・ニューマン(メゾ・ソプラノ)
ロラリー・カークパトロック(メゾ・ソプラノ)
バド・ローチ(テノール)
ローレンス・ウィルフォード(テノール)
アンドリュー・マホン(バリトン)
マシュー・グロスフェルド(バス)
ジェイソン・ネデッキー(バリトン)

ケヴィン・マロン/アラディア・アンサンブル

NAXOS/8.660241




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