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ハンス・ロット、若き作曲家の心を揺さぶる純粋... [before 2005]

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さて、 前回に引き続き、今年のメモリアルに注目してみる。で、生誕150年のハンス・ロット(1858-84)を取り上げてみようと思うのだけれど、ハンス・ロットって、誰?となってしまう... いや、否めない... 何にしろ、大成しなかったのだから... 当然、音楽史での扱いは微々たるもの。マーラーの友人で、学生時代、ルームメイトだった、くらい。仕方ない。24年という短い人生、残された作品は、そう多くない。それでも、その音楽には独特の輝きがある。その輝きに触れると、何とも言えない心地になる。老成した巨匠たちの音楽では味わえない、鮮烈さと瑞々しさ... 高々26年という未熟と、26年という短い人生の凝縮が生み出すその音楽は、より人間味に溢れるところがあって、かえって共感を誘うのか?そんな、ありのままのハンス・ロットに触れる交響曲...
北欧の鬼才、レイフ・セーゲルスタムの指揮、ノールショピング交響楽団の演奏による、ハンス・ロットの交響曲(BIS/BIS-CD-563)。音楽史の影に隠れてしまった若き作曲家の思いの丈が詰まった交響曲を聴いて、密やかに、メモリアルを祝う。

ハンス・ロット(1858-84)。
1858年、ウィーン近郊で、ベテラン喜劇俳優、カール・マティアス・ロットと、美しき若手女優、マリア・ロザリア・ルッツの間に生まれたハンス・ロット。となれば、さぞかし芸術的に恵まれた環境で育ったのだろう... 作曲家を志したのも納得。が、ことはそう簡単ではなかった。そもそも両親は結婚していない。父には別に妻がおり、ハンスは私生児だった事実。その後、父の妻は亡くなり、ハンス、4歳の時、両親は晴れて結婚するのだが... ハンスには2歳年下の弟、カールがおり、この弟の父親が、ハンスの父ではなく、美しき若手女優の大物のパトロン、ハプスブルク家の皇族だったから、複雑。いや、ハリウッド・セレヴのゴシップのような環境の中でハンスは育ったわけだ。ハンス少年の目には、この複雑さ、どう映っていたのだろう?と思うと、ちょっと切なくなってしまう。が、その複雑な家庭も長くは続かなかった。1872年、ハンス、14歳の時、風邪をこじらせ母が亡くなる。1874年、ハンスがウィーン音楽院に入学した年、今度は父が舞台での事故で障害を負い、その2年後には亡くなってしまう(父の死から3年後、弟、カールまでも結核で亡くなる... )。両親を失い、経済的に窮地に立たされるハンスだったが、成績優秀により学費は免除され、ブルックナーに学び、マーラーと机を並べ、1878年には、無事にウィーン音楽院を卒業。その卒業時の作曲コンクールに提出されたのが、ここで聴く交響曲の1楽章...
西部開拓のドラマでも始まりそうな素朴で雄弁なテーマを、トランペットが滔々と歌い幕を開ける1楽章。やがてそのテーマは、オーケストラ全体で奏でられ、感動的な盛り上がりを見せる。いや、本当に感動的で、のっけからただならず惹き込まれてしまうのだけれど、それはまるでクライマックス!で、いいのか?作曲家コンクールでは、師事していたブルックナー教授の後押しがあったものの、敢え無く落選(ブルックナー閥で忌避された?)。いや、それもわかる。20歳の若者の思いの丈が溢れ返り、「交響曲」という音楽を極めた形式には納まり切らない、濃密なドラマティシズムが漂い出す(交響詩だったなら... )。何より、1楽章で、これだけ盛り上がってしまうと、後が続かないのでは?と思わされるのだが、いやー、若いって、凄い!落選して後、作曲された、2楽章(track.2)、3楽章(track.3)と、溢れ返る楽想に驚かされる。ひとつの楽章で、ひとつの交響曲に発展させられるのでは?というほどの内容の濃さ... で、濃いものが、4つも続くと、もう、お腹一杯。このブレーキを踏めないあたりに、若さを強烈に感じてしまう。さらに、その若さが露骨に出てしまうのが終楽章(track.4)。
ブラームスの1番の交響曲の終楽章ので第1主題、あの雄弁なメロディーによくに似たテーマが登場... そうか、ハンスはあの名曲を自らの内で再現したかったのだな... というより、ブラームスに憧れていたのだな... ということが、どうしようもなく伝わって来てしまう(もちろん、この交響曲には、師、ブルックナーの影響もある... )。未成熟ゆえの、オリジナルを確立するには至らない状態を、堂々と歌い上げてしまう青さ!コンクールから2年を経て完成された交響曲は、そのブラームスに見てもらうことになるのだが、酷評されてしまう。いや、それもわかる。もし、ハンス・ロットが大成したならば、この交響曲は自ら破棄したかもしれない。大作曲家によくある話しのように... しかし、そういう"青さ"にこそ、替え難い輝きがある!なぜだろう?その輝きは、ブラームスの交響曲を聴く以上に、心を揺さぶられる。老成した巨匠が失ってしまった、若さゆえの向こう見ずな純粋性と、交響曲に体当たりで、全身全霊を以って向き合う、いたいけな姿に、どうしようもない感動を覚えてしまう。が、純粋ゆえに、ブラームスの酷評は、若い作曲家を精神崩壊させ、ハンスは26歳の時、自ら命を断つ。
という、ハンス・ロットの交響曲を取り上げた、セーゲルスタム、ノールショピング響。55分前後で演奏されるこの作品を、セーゲルスタムは63分も掛けて、じっくりと響かせる。まるで、ハンス・ロットが書き込んだ全ての音を慈しむかのように... またそうすることで、若い作曲家のパーソナルな部分が丁寧に読み込まれ、交響曲という抽象的な形式を越える、大きなストーリーが生み出され... それは、映画でも見るような感覚だろうか?あるいは、ハンスが見た、今際の際の走馬灯だろうか?複雑な家庭も、先生も、友人も、酷評ですら、全てが美しい記憶となって、キラキラと輝き出す。そんな輝きに触れてしまうと、何だか居た堪れない心地にもさせられる。という、強い共感を生み出すセーゲルスタムの音楽作りに、驚かされる。そして、ノールショピング響もセーゲルスタムによく応えて、隅々までよく鳴らし、鮮やかな演奏を繰り広げて... そうして生まれる、得も言えぬヴィヴィットな瞬間の数々... どうしようもなく、惹き込まれてしまう。

Hans Rott: Symphony in E major ― SON / Segerstam

ロット : 交響曲 第1番 ホ長調

レイフ・セーゲルスタム/ノールショピング交響楽団

BIS/BIS-CD-563




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