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現在、過去、未来。 [before 2005]

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未来派... 1909年、イタリアの詩人、マリネッティにより出された『未来派宣言』に始まる、20世紀、近代産業が大きく進展しようとした時代の機械化に強くインスパイアされた芸術運動。機械が生み出すスピード、ダイナミズムを、如何にして芸術作品に反映させるか?それは、絵画、彫刻、音楽のみならず、あらゆる芸術に影響を与え、さらには、デザイン、建築、政治運動にまで及び、人々の生活そのものを機械化しようとするような、恐るべき近代主義礼賛へと発展。やがて、ファシズムへの共鳴、大量破壊をもたらす近代戦争の肯定と、異様な"未来"を夢見るまでになるのだが... さて、ポスト・モダンすら過去となりつつある21世紀、未来派たちの未来にあたる現代から、かつての「未来」を振り返ったなら、どう映るだろうか?近代の未来...
イタリアのピアニスト、ダニエレ・ロンバルディの演奏で、カゼッラ、マリピエロら、イタリア近代音楽を代表する作曲家たちに、戦後「前衛」の時代に個性的な音楽世界を生み出すシェルシ、さらにはストラヴィンスキーまでを取り上げて、未来派の発信源、イタリアの20世紀前半の音楽を俯瞰するアルバム、"futuris music"(col legno/WWE 20076)を聴く。

イタリア未来派の音楽というと、ルッソロの騒音音楽(騒音を発生させる楽器、イントナルモリによる騒音音楽... 音楽なんかい!)が思い浮かぶのだけれど、騒音だなんてとんでもない、カサヴォーラ(1891-1955)の気だるいタンゴで始まる"futuris music"。未来派の音楽と謳いつつ、タンゴ?と、ちょっと脱力。けど、20世紀前半において、タンゴは、十分、「未来」だったのかもしれない。そもそも、未来派にとっての音楽とは何だったのだろう?という思いにも駆られる。アンタイルの『バレエ・メカニーク』や、ナンカロウの自動演奏ピアノのための作品なんかを勝手にイメージしていたのだけれど、"futuris music"から聴こえて来る音楽は、どれもいい具合に肩の力が抜けて、絶妙にライト... 近代化の波が押し寄せる都市の喧騒と、市民を沸かせた新しい音楽の波(例えば、タンゴであり、フォックス・トロットであり、ラグタイム... )を巧みに重ねて、思いの外、お洒落にまとめられたのが、"futuris music"。それは、「未来」というより、未来派の時代のスナップ?未来=近代化が押し寄せて来るワクワクとした気分がこぼれ出す風景... 彼らの未来、近代のなれの果てを知る我々、現代からその屈託の無い風景を見つめれば、微笑ましいやら、切ないやら、何とも言えないノスタルジックな心地に...
そうした中で、耳を引くのが、パロディ?カゼッラ(1883-1947)の2つの対比、グラツィオーソ(track.17)から聴こえて来るのは、調子を崩したショパン(薬のCMでお馴染みの... )。嗚呼、これは薬を飲まさないとダメだ... それから、シェルシ(1905-88)のロタティーヴァ(track.19)では、執拗にリストのメフィスト・ワルツ(3番と4番)のフレーズが繰り返されて、壊れちゃったか?いや、独自の音楽世界(砂嵐のような... ザァー、みたいな... )に引き籠る前の若きシェルシの音楽が新鮮だったり。ナポレターノ(1872-1943)の引用音楽(track.28-31)では、随分と端正なバッハ風の音楽が繰り広げられて、「未来」?ほんまいかいなァ?と、なるものの、バッハ風の精緻な構造を持つ音楽が繰り出されるとかえってメカニカルに響くからおもしろい!で、メカニカルな奇天烈なサウンドを期待するなら、ケジモ(1908-92)のプロペラ(track.25)。冒頭、「運命」だよな、これ... とか思いながら、聴き進めて行くと、飛行機が墜落するような音形が聴こえて来て... 続く、対空砲(track.26)は、その飛行機を撃ち落としている?鍵盤ではなくて、ピアノのボディーをパタパタと叩いて、効果音?ウーン、大胆!しかし、空と地上の戦闘を音楽にしてしまうとは... 近代戦争にシンパシーを感じてしまった未来派の一端を垣間見せる。
という、トンデモやら、ヘンテコもありつつの、やっぱりイタリアの音楽。未来派という看板をちょっと脇に置けば、グっと惹き込まれるサウンドがあちらこちらから聴こえて来る。特に、マリピエロ(1882-1973)の共鳴(track.32)の瑞々しさは、もう... ドビュッシーやラヴェルを思わせる透明感!擬古典主義というイメージのあったマリピエロだから、その上質な印象主義が思い掛けなく新鮮。それにしても、聴けば聴くほど「未来」がぼやけてしまう"futuris music"。いや、「未来」に対するこのユルさが、イタリアならではかなと... ピアノという、クラシックを象徴する伝統的な楽器で、「未来」というのも、何か皮肉に感じるし... そういうもの全てをひっくるめての"futuris music"は、かえってイタリアの音楽の懐の大きさを示しているのかもしれない。
で、この希有なアルバムを編んだロンバルディのピアノが絶妙で... ノスタルジックな「未来」を飄々と奏でるかと思えば、マリピエロのような作品では、クラリティの高い響きが奏で美しく、実に器用。軽快さと、遊び心と、瑞々しさ。ロンバルディの巧みなタッチがあって、「未来」が味わい深いものとなる。それにしても、イタリア近代音楽について、あまりに知らないことが多い!そして、興味を掻き立てられる。「未来」を信じていたかつての音楽、ノスタルジーに取り込まれてしまった近代音楽というものが、21世紀となった今、新たな魅力を放ち始めているのかもしれない。ウーン、未来派... おもしろい!

futurismusic ・ piano anthology 1

カサヴォーラ : タンゴ
カサヴォーラ : アレグロ
カサヴォーラ : 猿たちの踊り
カサヴォーラ : 囚人の前奏曲
サヴィニオ : 半死の歌
サヴィニオ : セレナータ
ミクス : F. T. マリネッティ氏の音楽によるプロフィール
ミクス : 2つの前奏曲
ミクス : 8月のたそがれ
ミクス : ストラヴィンスキーへのオマージュ
カゼッラ : 2つの対比
シェルシ : ロタティーヴァ
モルターリ : 未来主義者のフォックス・トロット
モルターリ : ドラマ ― シンフォニア
ギウンティーニ : マシーン
ギウンティーニ : 海
ギウンティーニ : インドのゴム男
ケジモ : プロペラ
ケジモ : 対空砲
ケジモ : Ala Spaziale
ナポレターノ : 引用音楽
マリピエロ : 共鳴
アルベール・ビロ : ダダ 3
ストラヴィンスキー : ピアノ・ラグ・ミュージック

ダニエレ・ロンバルディ(ピアノ)

col legno/WWE 20076




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