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ハンデル氏とロンドンを歩く(改訂版)。 [selection]

今月、下旬、シュテーガーによる"Mr. Corelli in London"、『ベガーズ・オペラ』の続編、『ポリー』を聴いて、俄然、18世紀、ロンドンの音楽シーンが気になる!クラシックにおける「音楽の都」と言えば、ウィーン。なのだけれど、音楽史から「音楽の都」を探ってみると、けしてひとつではなかったりする。例えば、パリ... バレエに熱中した太陽王の登場で、ヴェルサイユ宮を舞台に一気に花開いたフランス・バロック。太陽王の死により、フランスの音楽の中心はパリへと移り、宮廷から独立した音楽シーンが形成される。そして、宮廷には無いオープンな環境が功を奏し、間もなくヨーロッパ中の音楽家たちを惹き付け、「音楽の都」に成長する。さて、その成長のベースにあったのが人口である。18世紀、パリの人口は50万を越え、音楽のみならず、あらゆる面で"都"であったことが窺える。そして、そのパリを上回り、18世紀のヨーロッパで、最も人口が多かったのがロンドン!となると、パリに負けない、しっかりとした音楽シーンが存在していた?いやまさに急成長を遂げていた!
ということで、18世紀、国際音楽都市、ロンドンを巡るアルバムを聴きつないで、18世紀、もうひとつの音楽の都の様子を探る。そんなセレクションの試み... まずは、ヘンデルが活躍した18世紀前半!そうそう、ヘンデル、英語では、"ハ"ンデルなのだよね...

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ベガーズ・オペラ。 [before 2005]

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ピューリタン革命に始まるキリスト教原理主義の共和政(1649-60)が音楽を弾圧したことで、オペラ受容が遅れたイギリスだったが、英語によるセミ・オペラを地均しに、本場、イタリア・オペラがロンドンでも上演されるようになると、18世紀、一気にオペラ文化が開花する。そこにやって来た、若きヘンデル。出資の問題で劇場の経営が悪化。劇場が閉鎖される事態があったものの、1719年、ボノンチーニ、ヘンデルらを作曲家に、イタリア・オペラを本格的に上演する団体、王立音楽アカデミー(国王を筆頭に、有力な貴族、音楽好きの富豪たちが出資する株式会社... )が設立され、1720年に最初のシーズンが開幕。以後、セネジーノ、クッツォーニ、ボルドーニら、イタリアのスターたちを擁して、ロンドンの音楽シーンにイタリア・オペラ旋風を巻き起こす。が、やがて、ロンドンっ子たちは、イタリア・オペラに飽き始める。そこに登場したのが、英語による歌芝居、バラッド・オペラ!
ということで、1728年、ロンドンに一大ブームを巻き起こしたバラッド・オペラ『ベガーズ・オペラ』に注目... ジェレミー・バーロウ率いるブロードサイド・バンドの演奏、パトリシア・クエッラ(ソプラノ)、ポール・エリオット(テノール)の歌で、バラッド・オペラの実像を見つめる"THE BEGGAR'S OPERA Original songs & airs"(harmonia mundi FRANCE/HMA 1951071)を聴く。

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ヘンデル、リッカルド・プリモ。 [2008]

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1685年、バッハと同じ年に生まれたヘンデル。3歳になったモーツァルトがチェンバロを弾き始める1759年、74歳で大往生を遂げる。という風に、音楽史からヘンデルの74年の人生を捉えると、もの凄く長く感じられる。で、長い分、山あり谷ありでして... 痛快に感じられるほど、自ら道を切り拓いて行ったハンブルク時代(1703-06)、イタリア時代(1706-10)。その勢いそのままに乗り込んだ大都会、ロンドン!だったが、やがて強力なライヴァルたちが現れて、熾烈な競争から心身ともに疲労困憊、倒れてしまうロンドン時代... しかし、再び立ち上がるヘンデル!新たな道を切り拓き、ヨーロッパを代表する巨匠として輝く晩年。自らが作曲したオペラのようにドラマティックなその人生... いろいろありながらも、盛期バロックから古典主義が準備される頃まで、第一線を生き抜いたその音楽人生は、ただならない。改めてその姿を見つめると、バッハとは違う重みを感じる。
さて、前回、ヘンデルにとっても輝かしかった、1727年、ジョージ2世の戴冠式の音楽を聴いたので、その一ヶ月後に初演された、オペラを取り上げてみる... ポール・グッドウィンの指揮、バーゼル室内管弦楽団の演奏、ローレンス・ザッゾ(カウンターテナー)のタイトル・ロールで、オペラ『リッカルド・プリモ』(deutsche harmonia mundi/88697-17421-2)を聴く。

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ヘンデル、戴冠式アンセム。 [before 2005]

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1711年、24歳の時、初めてロンドンを訪れたヘンデルは、オペラ『リナルド』で、センセーショナルなデビューを飾り、早速、ロンドンっ子たちを魅了。一端、ドイツに戻るも、翌年には再びロンドンへ!以後、ロンドンの音楽シーンの中心で活躍することになる。という、ヘンデルのロンドン時代は、とにかくシャカリキになってイタリア・オペラを生み出したというイメージ(でもって、疲れてしまって、オラトリオに移行... )があるのだけれど、そんな厳しいロンドンの音楽シーンの一方で、変わらず上得意だったのがイギリス王室!アン女王の誕生日のためのオード(1713)、キャロライン王太子妃のためのキャロライン・テ・デウム(1714)、ジョージ1世のための『水上の音楽』(1717)などなど、ヘンデルの音楽に魅了された歴代のイギリス国王、ロイヤル・ファミリーによる委嘱が、祝祭でも存分に力を発揮したヘンデルの才能を今に伝える。そして、イギリス王室、最大の祝祭が、戴冠式!
ということで、1727年、ジョージ2世の戴冠式を忠実に再現(よって、ヘンデルばかりではない... )する、興味深い2枚組... ロバート・キングの指揮、キングス・コンソートの歌と演奏で、"The Coronation of King George II"(hyperion/CDA 67286)を聴く。

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ヘンデル、水上の音楽。 [2017]

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8月、夏休みということもあって、こどもたちの姿をあちこちで目にする。だからだろうか、何となく街の表情も、いつもより楽しげに映るような... そして、夕闇が迫る頃、どこからともなく太鼓の音が聴こえて来て、浴衣姿の人を見掛ければ、ああ、盆踊りがあるんだなと... 遠くで、ドォンっ!と音が響けば、夜空に花火をつい探してしまう... こういう夏の楽しみの気配に、何だかワクワクさせられる。改めて、見渡せば、夏には、いつもとは違う、非日常が、そこかしこに仕掛けられているようで、おもしろい。そんな非日常に出くわすと、異界に迷い込んだようで、ちょっと眩惑される。さて、音楽であります。盆踊りに、花火と、夏は、やっぱり祭りかなと... ならば、祝祭の音楽に注目してみよう!ということで、今からちょうど300年前の夏へと遡ってみることに...
1717年、ロンドン、テムズ川でのページェント!アルフレード・ベルナルディーニが率いる、ピリオド・オーケストラ、ゼフィロの演奏で、今年、初演、300年を迎えるバロックの定番、ヘンデルの『水上の音楽』(ARCANA/A 432)。改めて、この人気作を見つめる。

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サン・サーンス、オルガン交響曲。 [2012]

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さて、アルス・ノヴァのマショーに始まり、時代を遡ってゴシック期のノートルダム楽派、そして、トルバドゥール/トルヴェールの音楽を聴いて来た7月下旬、いやー、フランスの中世は、おもしろい!シンプルな中世の音楽だけれど、その背景を見つめると、一筋縄には行かなくて... で、その一筋縄には行かない複雑さが、豊かな文化を生み出し、フランスは中世文化のリーダーとなった。もちろん、音楽においても... しかし、中世末、百年戦争(1337-1453)が、全てを変えてしまう。音楽家たちは、戦火を逃れ、各地に散って行き、以後、フランス音楽は、ローカルな立場に甘んじることに... そうして、4世紀を経た頃、フランス音楽はローカルな位置から脱しようと動き出す。その切っ掛けとなったのが、普仏戦争(1870-71)での敗戦。敗戦が、フランス音楽の覚醒を促す。
ということで、中世から一気に時代を下り、19世紀へ!グザヴィエ・ロト率いる、ピリオド・オーケストラ、レ・シエクルの演奏で、フランス音楽の覚醒を象徴する、サン・サーンスの3番の交響曲、「オルガン付き」(MUSICALES ACTES SUD/ASM 04)を聴く。

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リチャード1世、獅子心王、トルバドゥールとトルヴェールの音楽。 [before 2005]

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ラヴェルの音楽には、その母親越しに、バスクやスペインの色彩が反映されていて、ブーレーズの総音列音楽は、新ウィーン楽派、ヴェーベルンの音楽から出発している。再び音楽史のメインストリームへと返り咲いた20世紀のフランス音楽というのは、思いの外、汎ヨーロッパ的なのかもしれない。そして、かつてフランス音楽がメインストリームを占めていた頃、ゴシック期も、汎ヨーロッパ的に音楽が醸成されていた。いや、中世のフランス文化というのは、まさに「フランス」の文化が形成されようという時期で、なかなか興味深い時代。そもそも、フランス語がまだ存在しておらず、北ではオイル語(古代ローマ以前のガリアの影響を残す言葉で、後のフランス語に発展... )が、南ではオック語(古代の地中海文化圏の名残りをより多く残し、現在のカタルーニャ語に近い... )が話され、中世のフランスは、この言語境界を境に、政治的にも、文化的にもせめぎ合っていた。そして、この南北の融合(政治的には、北による南の制圧... )により、豊かな「フランス」が誕生することになる。
そんな、中世フランスの姿を捉える興味深い1枚... 古楽アンサンブル、アラ・フランチェスカの歌と演奏で、中世の宮廷を彩った吟遊詩人たち、南のトルバドゥール、北のトルヴェールによる音楽を取り上げる、"RICHARD CŒUR DE LIEN"(OPUS 111/OP 30-170)。前回、聴いた、教会音楽にも見受けられた、中世フランスにおける南から北への音楽の伝播を追う。

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ノートルダム楽派の音楽。 [before 2005]

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先日、世界の主要な国、30ヶ国のソフト・パワーについてのランキングが発表されました(ちなみに、日本は、ひとつ順位を上げて、6位。大健闘なんじゃない?)。で、栄えある1位は、フランス!いやはや、腐っても鯛というのか、ここのところ暗いニュースばかりが多かったフランスが、1位... てか、落ち着いて考えれば、「フランス」という響きが持つブランド力は半端無い。なんてったって、おフランスざんす。今でこそくすみがちな、おフランスも、有形無形に関わらず歴史的遺産は圧倒的!21世紀、グローバルな時代を勝ち抜くにあたり、「フランス」は、明らかに優位。が、それを活かせていない。というより、「フランス」の優位を、フランス人自身が忘れてしまっている?そこに問題があるのかも... ならば、シャルル・ド・ゴール空港で、YOUは何しにフランスへ?って、聞いてみればいいのよ。自国再発見!フランスだから、ユーじゃなくて、ヴー(vous)は何しに、だな... ヘヘヘ...
という軽口は、さて置き、フランスを聴いております、今月後半。で、中世末、マショーから、フランス中世文化の最盛期、ゴシック期へと遡る!ドミニク・ヴェラール率いるアンサンブル・ジル・バンショワが歌う、ノートルダム楽派、"Le chant des cathédrales"(cantus/C 9703)。で、この時代もまた、ソフト・パワー、1位だったはず... 中世の都、パリを彩った音楽を聴く。

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マショー、モテット全集。 [before 2005]

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メシアン、ラヴェル、グリゼーと、20世紀のフランス音楽を聴いて来たのだけれど、それは、まさしく三者三様!こうして並べてみると、ひとつの国で、ひとつの世紀の中で生まれた音楽とは、ちょっと信じ難いほど... 改めてフランスという国の、奥深さ、幅に、思い知らされる。一方で、三者三様の際だった個性にも、そこはかとなしにつながりも感じられるのがおもしろいところ... ラヴェルの色彩感はメシアンで炸裂し、ラヴェルらによる印象主義の響きへの関心は、グリゼーらスペクトル楽派により論理的に展開され、新たな地平が拓かれる。フランス音楽のDNAは、個性の影で、連綿と受け継がれているという興味深さ... で、その連綿と受け継がれているものを、時代を遡って見つめて見ようかなと... 20世紀から一気に時代を遡り、中世末、14世紀へ!
振り返ってみると、近現代が続いたので、ちょっと気分を変えて、フランスの古楽アンサンブル、ムジカ・ノヴァの歌と演奏で、ルネサンスを準備するアルス・ノヴァの巨匠、ギョーム・ド・マショーのモテトゥス全集(Zig-Zag Territoires/ZZT 021002)を聴く。

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グリゼー、音を解き解し、編み直して、音響空間。 [before 2005]

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クラシックは、どうしてもドイツ―オーストリアをメインストリームとして語られがちだけれど、音楽史は、当然、ドイツ語圏ばかりで織り成されるものではない。そうした中で、興味深い存在感を放つのが、フランス... 中世、ゴシック期には、多声音楽を育み、ヨーロッパの音楽を主導するも、百年戦争(1337-1453)の勃発で、音楽どころではなくなってしまい、以後、ローカルな立場に甘んじたフランスの音楽。が、音楽史におけるローカル性は、フランスの音楽の独自性を磨くこととなり、それはまずバロック期に花を咲かせ、19世紀末にはフランスらしさ、個性を覚醒。20世紀に入ってからは、近代音楽で活気を取り戻し、現代音楽で再び主導する立場側に返り咲いたか?ということで、ラヴェルに続いて、フランスの現代音楽に目を向けてみようかなと...
ガース・ノックスのヴィオラ、ASKOアンサンブル、そして、ステファン・アズベリーの指揮、ケルンWDR交響楽団の演奏で、スペクトル楽派を代表する作曲家、ジェラール・グリゼーの、その集大成とも言える連作、『音響空間』(KAIROS/0012422 KAI)を聴く。

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